脱原発=自然再生エネルギーのソーシャルデザイン(2)
‐ スマートコミュニティの水系モデル/大内秀明(東北大学名誉教授)

第2回 戦後日本の国土開発とエネルギー革命
    :太平洋ベルト地帯構想の拠点開発「臨海モデル」


北海道 芦別ダム

北海道 芦別ダム

 日本の地域開発は、戦後1950年(昭25)に決定された「国土総合開発法」(略称、国土法)によって進められました。具体的には、この法律に基づく全国総合開発計画(全総計画)によって進められたのですが、しかし出発に当たっては、全国レベルの計画は決定されませんでした。1962年(昭37)まで、20年近くも全総計画のないまま、地域開発が進められたのです。
 まず北海道開発に始まり、特定地域の開発計画、続いて例えば「東北開発促進法」などに基づく地方レベルの開発計画が次々に策定され、それらが先行することになった。そこにまた、当時の資源エネルギー問題の所在と政策的対応の特徴が現れていたと思います。特定地域として選ばれたのは、東北では「阿仁田沢」(秋田)、「北上」(岩手・宮城)、「最上」(山形)、「只見」(福島)ですが、いうまでもなく東北を代表する河川の「水系」であり、自然エネルギーを中心とした資源開発だった。また多目的ダムの建設など自然「災害防除」や、都市部への連結などが考慮された地域開発でした。

 このように地域に特有な自然エネルギー資源の開発と利用だからこそ、それはまた地方レベルの開発計画が先行することにもなったのです。
岩手県 丹沢ダム

岩手県 丹沢ダム

 北海道開発に続いて、1957年(昭32)には東北開発の計画が、いわゆる「東北開発三法」により具体化しました。東北開発促進法、東北開発株式会社法、北海道東北開発公庫法の三法です。東北に賦存する豊かな資源エネルギーを開発利用し、そのための開発投資主体として特殊会社の東北開発株式会社を活用し、資源開発の地域金融機関として北海道東北開発公庫が拡充、設置されたのです。
 東北には、農村の食料資源をはじめ、上記の代表的河川の水力エネルギー資源、国有林など豊かな森林資源、石灰岩などセメント建設材料資源、さらに常磐炭鉱など各種の鉱物資源にも恵まれた、まさに「自然エネルギー/天然資源の宝庫」なのです。それらを総合的に開発利用して、地方分権型の地域開発、そして地域民主主義の理念を実現するのが東北開発の「初心」だった筈です。ただし今日、22世紀に向けて問われているのは、当時の巨大な多目的ダムではない。中小水力、風力、さらに太陽光、バイオマス、温泉熱のなどの利活用ですが、それは後述します。

四日市 石油コンビナート

四日市 石油コンビナート

 日本経済は、朝鮮動乱の特需で再建の切っ掛けをつかみ、さらに神武景気から岩戸景気へと戦後成長のステップを踏み固めました。その上で、1962年(昭37)10月に懸案だった全総計画が閣議決定され、国土法による国家レベルの上からの総合開発計画が始動することになります。池田内閣の下、戦後の経済計画を代表する国民所得倍増計画とセットになり、高度成長経済への移行とそれに伴う地域間格差の是正を目指しました。
 基幹産業としては重化学工業、そして所得倍増計画の要の一つである「太平洋ベルト地帯構想」を推進する拠点開発方式が採用され、京浜、中京、阪神の工業地帯を結ぶ三大都市圏、その延長上に工業整備特別地域、さらに新産業都市を整備する方式がとられました。戦後の高度成長経済は、ほぼこの枠組みで進められ、GDP成長率が年率10%にも達する奇跡的成長が実現されました。

三井三池闘争

三井三池闘争

 しかし、ここで注意すべき点は、この枠組みが朝鮮動乱から、さらにベトナム戦争など、戦後の冷戦体制に組み込まれていたことです。とくに、60年(昭35)日米安保の改定によって、「経済安保」の枠組みがつくられた点に注目すべきです。これが戦後のエネルギー革命による石炭から中東の石油への転換とも結びつくことになったのです。
 当時、エネルギー革命を象徴した三井三池の反合理化闘争、そして60年安保反対の闘争が、当時の政治・社会の重大事件だった。日米安保が、日米経済協力のもとに構築され、戦後のアメリカの中東支配が進み、世界のメジャー石油資本による経済支配に日本経済も組み込まれることになったのです。その結果として、東北を中心とした豊富な自然エネルギー資源にもとづく平和経済の夢も、ここで潰え去ってしまった。東北開発三法もまた、冷戦体制のエネルギー革命による高度成長の陰に隠れ、その存在も消失することになったのです。

 本来、アメリカの石油開発は、20世紀アメリカ金融資本による重化学工業化をリードし、第2次大戦の勝利と共に、さらに中東支配に発展しました。冷戦体制の下での石油需要の拡大に、原油採掘技術の飛躍的発達が、安価な石油の大量供給を可能にしたのです。このアラブで開発された安価な石油資源が、日本列島の太平洋ベルト地帯に拠点開発された臨海型コンビナートに大量輸入される。「重厚長大」と呼ばれた基礎資源素材型の臨海型重化学コンビナートで低次加工され、1$=360円の超円安の為替レートで対米輸出される、こうして石炭から石油への化石燃料エネルギー革命が、輸出主導型の成長パターンとして、日本経済の超高度成長を主導することになったのです。【次号につづく

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