書評『関西生コン産業60年の歩み』 大野和興(農業ジャーナリスト)

未来への見事な提言


 歴史を書くということは未来に責任を持つ事だ。問われるのは、そこで描かれる歴史はいったい誰に何を伝えるのかという観点と立場性、そしてその観点・立場性を支える実証性である。本書はこの二つを踏まえ、未来への見事な伝言となっている。本書を通読してまず感じたのは、このことだ。

 「産業史」と銘打たれている本書が描くのは、関西生コン産業で働く労働者が作る労働組合と中小零細経営者で構成される協同組合が共同しての闘争史である。
 闘う相手はセメント大手とゼネコンという独占資本だが、独占資本の後ろには当然総資本と国家がいる。だから、生コン労働者の闘いは常に反権力闘争の色彩を帯び、猛烈な弾圧にさらされることになる。そこでの歴史の主人公は中小企業と労働者である。本書第1部の序章でつぎのように端的に述べている。
 「それは『練り屋』『練り混ぜ屋』『運び屋』という生コン業者に対する蔑称が残る生コン業界の中で、大企業に対抗して闘った、近畿二府四県の関西生コン関連中小企業と労働者、言い換えれば中小企業労働組合と労働組合の、涙も汗も血も流した人間たちの苦闘の六〇年の歴史である」。

 本書は大きく三部で構成されている。
 第一部は敗戦と戦後復興期から始まる時系列的な叙述。敗戦、復興、経済成長と続く日本の流れと、それを背後で支えて対米従属・朝鮮戦争から新自由主義グローバリゼーションにいたる世界史的な歴史の流れを踏まえながら労働者と中小企業の闘いの歩みとその時代的な意味が解き明かされる。
 第二部は、この歴史のもう一つの主役である中小企業協同組合の歩みとその存在意義が語られる。
 第三部では、関西生コン労働組合(正確には全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)と生コン産業を支える中小企業の協同組合の闘いが持つ意味が学者・研究者の実証的で客観的な分析で明らかにされる。

 本書を「労働組合史」とか「協同組合史」としないで、なぜ「産業史」と銘打ったのか。ここに本書が提起する課題を解くカギがある。関西生コンの労働者の運動の特質は個々の企業の枠にとらわれない徹底した産業別統一闘争を闘う事にある。
 闘う相手は独占であることを明確にし、生コン産業で働く労働者と中小事業体が目の前の利害を越えて手を組むことで、産業全体を貫く経済民主主義を獲得する。その民主主義を構成する柱は分配の平等性である。労働組合と協同組合は民主主義と平等性というところで利害と理念が一致し、ここから共同闘争が始まる。
 関西生コン労組は二〇一〇年、一三九日に及ぶストライキを打ち抜き、大手ゼネコンを屈服させて大きな成果を上げた。それを背後で支えたのは、この労働組合と協同組合の共同の力だった。

 本書は、日本の労働運動と協同組合運動の二つの領域で歴史に残る金字塔をつくりあげて来ている。その秘密を知るための基本的文献として位置付けられるだろう。

(農業ジャーナリスト・「日刊ベリタ」編集長)

(コモンズ第66号6面)

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行動予定

6月
23
18:30 6・23大阪へ!ヘイト集団を使っ... @ 大阪市中央公会堂大ホール(中之島公会堂)
6・23大阪へ!ヘイト集団を使っ... @ 大阪市中央公会堂大ホール(中之島公会堂)
6月 23 @ 18:30 – 20:30
6・23大阪へ!ヘイト集団を使った弾圧に抗議する集会 @ 大阪市中央公会堂大ホール(中之島公会堂) | 大阪市 | 大阪府 | 日本
■ 日  時:2018年6月23日(土)18:30~ ■ 場  所:大阪市中央公会堂大ホール(中之島公会堂)  大阪市北区中之島1丁目1番27号  地下鉄 御堂筋線「淀屋橋」約5分、堺筋線「北浜」約3分  京阪電鉄 本線「淀屋橋」約5分、中之島線「なにわ橋」約1分  http://osaka-chuokokaido.jp/map/ ■ 主  催:あらゆるヘイトを跳ね除ける実行委員会  http://workersvoice.net/  今年に入り、大阪の生コン業界では異変がおきています。  生コン業者団体(大阪広域生コンクリート協同組合)と結託したネオナチ思想の排外主義グループが、「連帯ユニオン関生支部」に対して事実無根の金銭疑惑等を叫ぶ連日の街宣行動を展開しています。1月22日には、大阪市内の組合事務所(ユニオン会館)に30人近い組合破壊者が業者団体役員らとともに押しかけて乱入を図り、組合員に暴行を加え負傷させる事件もおきました。  しかも、こうした差別排外主義者を利用し、彼らの動きと軌を一にして、資本・権力が労働組合潰しをおこなう弾圧行為まで発展してきています。私達はこれら一連の攻撃は、憲法改悪を強行しようとする安倍政権による嘘と誤魔化しの政権運営がそのようにさせているとし、森友・加計問題の責任追及。働き方改革粉砕。沖縄反基地運動に対するヘイト攻撃阻止、南北・朝米首脳会談を支持し、朝鮮半島の平和統一の運動を進めるために、これらの攻撃に対して大きな声をあげる総決起集会へのみなさまのご参加・ご賛同・そして、各団体の「連帯ユニオン」への連帯活動のための抗議声明をお願いしたいと考えています。尚、各団体の抗議声明については、5月末集約で要請させて頂きます。 ◆業界正常化・連帯広報委員会 ◆連帯ちゃんねる(YouTube) ◆連帯ユニオン関西生コン支部 ◆連帯ブログ

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