連載(寄稿)(その58)
協同組合運動とは何かアジア・オセアニアの協同組合運動の歴史〇31

近畿生コン関連協同組合連合会専務理事 増田 幸伸

産業体制の変化(2)

 90年代の日本の戦後大企業体制は、それまでの強力な国際競争力を有した新鋭重化学工業・機械工業が競争力を失い、国内完結型分業体制も東アジアにシフトしたため変化せざるを得なくなった。

 日本経済は、バブル崩壊を契機に91年、不況に入った。同時に、戦後大企業体制変容が進行し、設備・雇用を構造的に過剰化させたため、大不況となっていった。輸出拡大を目的に大型設備投資をしてきた大量生産型機械工業は、輸出の伸びが停滞しただけで設備・雇用過剰に陥り、また東アジアへの直接投資拡大が国内の設備・雇用の過剰化を進め、設備投資減退と雇用削減が国内消費の冷え込みによる景気後退を生んだ。さらに97年の消費税5%への引き上げや97・98年アジア経済危機と国内金融危機が不況を深刻化させた(実質GDPの対前年伸び率は、81~90年平均4・1%が、91~02年平均1・3%へと低下した)。
中国輸出の伸び


 ところで、日本の対中国輸入は増加して、02年には対米国輸入額を上回って、中国が最大輸入国となった。中国からの輸入増大は、中国に進出した日系外資企業による対日輸出、日本企業による委託加工の増加によるもので、日本の対中国輸入増加は戦後大企業体制の変容の一環として見なければならない。
 こうした産業体制の変容と長期不況、そして中国の発展が中小企業に大打撃を与えた。

中小企業問題の変化

 戦後大企業体制の変容によって、3種類の中小企業問題が激化した。

 第1に、独占資本(寡占大企業)の中小企業に対する収奪強化である。90年代、独占資本は東アジア分業体制を構築したことにより、中小企業に対する寡占的取引力を一層強めた。代表例は機械系業種や繊維系業種で多数を占める下請中小企業である。
 独占資本は発注先を東アジアへ切り替えることで低価格の部品調達を行うと同時に、国内下請中小企業を東アジア企業との競争に巻き込み、下請単価の削減を飲ませた。国内下請中小企業は受注量と単価の同時削減を受け入れざるを得なかった。
 また、下請中小企業だけではなく、中国からの低価格品の流入による値下げ圧力は他の中小企業にも広がった。さらに、販売価格だけではなく、仕入れ価格の上昇(原料高。特に、寡占大企業による製品価格の維持・引上げ)にも見舞われた。
 収奪強化は製造業だけではない。大型店による納入業者への買い叩き、不当返品、協賛金強要の横行、ゼネコンによる優越的地位の濫用など枚挙の暇がない。

 第2に、金融機関の中小企業への締め付けである。97年以降、銀行の中小企業への貸し渋り、貸し剥がしが多発した。しかも、健全な中小企業にまで広がっていった。
 もともと自己資本比率の低い中小企業は、担保を提供した上で、一定の借入残を保持することが自己資本調達にあたり(擬似資本)、貸出が止まると直ちに資金繰り困難に陥る。90年代、すでに売上低下で資金繰りが苦しくなっていた多くの中小企業は大打撃を受けた。70年後半から都銀の中小企業への貸し出し比率が上昇し、中小企業の金融問題は緩和されたかに見えた。しかし、バブル崩壊後の膨大な不良債権の解決をめぐって、金融当局は97年に銀行の自己資本比率の引き上げを促した。銀行は貸出額を減らすことで自己資本比率を引上げた。結果、金融機関は優越的地位を濫用して、貸し渋り、貸し剥がしを強行した。
 中小企業の低い自己資本比率と金融機関の中小企業に対する優越的取引関係が続く限り、中小企業の金融問題は本質的には解決されない。

 第3に、中小企業の市場の縮小である。大企業の中国などへの進出による現地発注の増加、中小企業性製品の輸入の激増、大企業自身の余剰人員のための外注の内製化、大企業の小規模市場への参入、大型店の安値販売など、次々と中小企業の市場が
縮小を余儀なくされた。
 90年代の産業構造の変化による新たな成長分野の市場規模は小さかった。中小企業は新市場創出が求められていた。しかし、有効な適応手段を見出せず、従業員削減か廃業へ向かわざるを得なかった。中小企業の衰退が進んだ。

次回へ続く→

(コモンズ第66号7面)

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