民主主義とは何か?(下)/本山美彦(京都大学名誉教授)

前90号(上)からの続きです。

ユダヤ人の中東パレスチナ侵入が世界大乱の始まり

アーサー・バルフォア

アーサー・バルフォア

 3つ目の裏切り。レジュメにございます第一次世界大戦中の1917年バルフォア宣言。これが正直一番許せないのであります。
 初代のイスラエルの大統領になった男、この男が火薬の発明に成功するんですね。煙の出ない無煙を発明したら巨万の富を得ます。これがバルフォアという男爵(英国外相)に取り入りまして、ユダヤ人の居住地域をパレスチナに作って差し上げる。その時に全世界から募金を募りました。あの有名な人たちも、名前はちょっと止めておきますけども。1人だけ言わせて下さい。アインシュタインです。原爆を自分で作って、原爆の発明者が何が平和運動だと、私なんか腹が立って仕方がないんですけどね。
ハイム・ヴァイツマン

ハイム・ヴァイツマン


 バルフォア宣言というような形で、この人は天下の極悪非道の男なので、名前は出させていただきます。 ハイム・アズリエリ・ヴァイツマンという男であります。初代イスラエルの大統領になっております。こういった3枚舌外交というのでしょうか、そういったものが出てきまして中東はガタガタになってきた、という時です。

 この21世紀、2000年代に入って色んな歯の浮くような名前の革命が出てきました。2003年バラ革命、2005年オレンジ革命、2005年チューリップ革命、2011年ジャスミン革命、2011年エジプト革命、そしてリビア革命。この共通項は何だと思いますか。ロシアが深く食い込んでいた地域なのであります。アメリカと親しかった国の革命はございません。敵はロシアだと。ロシアの膨張を抑えるためにはロシアの手先になりそうな国は潰してかかる。潰す理由は民主主義革命だと。
サルバトール・アジェンデ

サルバトール・アジェンデ


 1970年チリにアジェンデという政権が出来ました。サルバトール・アジェンデ。歴史上初めて自由選挙のもとで社会党共産党合同の左翼政権が出来たのであります。その時にヘネコッット・アナコンダという二大銅山会社を接収しました。凄いことです。
 世界の人々が応援いたしました。カナダ人は技術者まで派遣いたしました。アンクタッド国連貿易開発会議は一国一票。分担金関係なくみんなが一票。で、日本は残念ながらAAアジアアフリカグループには入れていただいていません。そのアンクタッドが総会をサンチャゴで開いた。
 アジェンテ支持しろと。そしてその余波をかって国連資源大会で総会で、その国の資源はその国のものだということを言った。そこにカダフィが飛びついた。

米国CIAが潰したチリ初の社会主義アジェンデ政権

911テロ このアジェンデ政権が1973年9・11にアメリカCIAが主導する軍事クーデターで倒される。私たちは2001年の9・11を知っています。でもこれは明らかに73年の9・11の記憶のもとで行われたテロです。まぁテロかどうか分かりませんけれども。911というのが当時の、少なくとも反米的な動きをしている人たちの共通のキーワードであった。残念ながら日本人は忘れやすいから2001年の911しか知らない。アジェンデが虐殺された日が911であります。
 その時に動員されたのがアメリカの大学の学者たちでありました。そしてピノチェットという超右翼の軍人を大統領にもっていきました。その時に世界的に展開されたのがいま問題になっている我々を苦しめている新自由主義であります。なぜ新自由主義というか。昔は資本主義は自由主義だった。小さな国家、夜警国家で良いと。ところが貧富の差が出始めた。労働者が団結をしだした。労働組合を結集しだした。その時に国家の手で間違っている市場、これを直さないといけないと。

 経済学というのは、恐ろしい学問です。イデオロギーです、はっきり申しまして。で、数学的に照明することは不可能です。人の心をどう掴むかということに尽きるんです。
 でも昔は河上肇のように文人であらゆる文学、詩に対して造形が深くて凄い人たちがみんな経済学に飛びついていたんだと。こういう時代があったんだと。そもそも経済学というのはそういうものであったというように、私は強調したいのであります。

民主主義の要件を破壊する格差・貧困

反貧困デモ 4番目に行きます。民主主義の要件、平等。自由・平等・博愛ですよね。平等です。
 アメリカの収入の伸び、この10年間でグワーっと伸びたけど、その半分は1%の富裕層が締めております。そして先進国全体ではお金持ちの階層と貧乏人との階層がもう9倍以上になっております。一番大きいのはアメリカで30%30倍。メキシコ30倍、アメリカ18倍、イスラエル14倍、日本もだいたい10.7倍。まぁ格差の大きいトップ10に入ります。これが民主主義なんでしょうか。

 つまり、能力ある人間は報われて、無能者は報われなくて当然だというのが民主主義だというのが我が日本人の多くの人の考え方です。果たしてそうでしょうか。
 私、キザだと思わないで聞いてください。やっぱりもう一度人生をやり直すなら学者になります。だけど好きなことをさせてもらってるんだから、日夜油にまみれた生活をしている人たち、肉体を使っている人たちの給料の半分でも良いと本気で思います。
 つまり好きで人様の役に立てるものが出来ている。
 だったら給料は安くて良いじゃないかと。で、人様が嫌っている3Kというのは給料を沢山貰っても良いじゃないかと。そういう社会にしようじゃないか、というように私は思います。ですから必ずこの所得の不平等さ、これはなんと17世紀段階に戻ったんだという研究がほとんどであります。

アメリカ第一を押し付ける新自由主義が民主主義の敵

トマス・ホッブズ

トマス・ホッブズ

 格差が大きすぎる、だから国家が出てきたんだと。国家が修正するスタンダード。
 で、そうすると大きな国家になりすぎたと。だから元の自由主義に戻れ、これが新自由主義なんですね。しかもみんながアメリカの真似をしろ。アメリカのようになれば世界は幸せになる。アメリカの真似をしろ。アメリカが法律であると。アメリカに嫌われることをするな。

 こういう社会に我々は突入した、という時に、お手元のレジュメ最後4ページ、民主主義と国家というところで言わせて下さい。昔の知識人は偉かったということを思い起こしていただきたいと。いま日本で生きている知識人であと100年後200年後に残る人というのはどのくらい居るんだろうかと。まぁ恐らくゼロだろうと思いますけども、昔の人は残った。まずレジュメ5番の一番。生き延びたいという自然権。これ作った、言葉を出した人はトマス・ホッブズ、イギリス人です。そして万人の相互の闘争が始まるから契約しようじゃないかと。これが『リバイアサン』という本であります。

 関生の50周年を記念しまして、大阪労働大学(学校)・アソシエと。の、校長先生にならせていただけそうです。その時にやはり基本的には世の中がどう移ろうと、揺るがないものの考え方というのがあるんだと。しかし同時に、いまもの凄い早足でお話ししましたけども、60年代70年代80年代、そして現在、凄い勢いで社会は変化してしまっている。この社会の変化に媚びてバンザイバンザイじゃなくて、やはりキチンとした目で批判的に物をみていく人を今の間に作っておかなければ絶滅すると私は思っております。そういう意味で、今度の労働学校のご支援、切に切によろしくお願いいたします。なんか自分の宣伝ばっかりしたようで、誠に申し訳ございませんけども、難しい民主主義と国家というテーマを与えられまして、私としましてはこういう形でのお話しか出来なかったことを誠に申し訳ないと思っております。【以上】

(※掲載にあたって一部文章を修正しました。および見出し、写真等、すべて編集部の責任によります)

大阪労働学校・アソシエ 来年4月開校


物事の本質を見抜く力をつけよう!
2年間の共同生活~目指すは労働と学びの尊厳

連帯労組新館完成イメージ
 連帯労組関西地区生コン支部結成50年記念事業の一環として、本山美彦氏を学長に迎え、来春4月開校する「大阪労働学校・アソシエ」。
 1922年賀川豊彦によってこの地で設立された「大阪労働学校」の系譜をつなぐ新しいもうひとつの学びの場として、熱い期待の中、開校準備が進んでいる。
 同校は、市民にも広く開放され共に学びながら社会の変革者を目指す人々を育む場であり、同校正規学生は2年間、共同生活をおくりながら勉学に集中する事になる。
 卒業生は労働組合運動や協同組合運動を担い支える有為の人材として、現代の世界を蝕む競争至上主義から共生・協働による経済・産業構造の転換のため、関生型労働運動の全国化への先頭に立つ。
【問い合わせ先】roudou.associa@gmail.com 大阪市西区川口2-4-2

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