日本を犠牲にする米軍新戦略 辺野古はその最前線基地/伊波洋一(元宜野湾市長)

講演】辺野古埋め立て承認の取り消しと沖縄の自己決定権
「辺野古基地建設強行糾弾!12・5緊急関西集会」での伊波洋一さん講演録
(編集部の責任で要約。中見出しは編集部)

日本政府が辺野古に固執する理由
自衛隊は何をしようとしているのか
講演する伊波洋一さん

講演する伊波洋一さん


 11月26日には、安倍首相が米海兵隊トップのロバート・ネラー総司令官に会って「確固たる決意で辺野古基地建設を進める」と宣言した。沖縄との対決を宣言したようなものだが、なぜ政府は辺野古に固執するのか。その意図を日本の多くの人は政治家も含めて知らないのではないか。

 日本は駐留米軍兵士数が5万3000人と世界一多く、その約半数が沖縄に集中している。また沖縄本島の18・4%を米軍施設が占有している。
 しかし一方、沖縄を取り巻くアジアの発展によって沖縄観光は拡大し、今年は観光客数が700万人を突破した。また元米駐日大使のマイケル・アマコスト氏は、海兵隊の沖縄駐留は死活的に重要なものとは思えず、グアム、ハワイ等への移転が必要と述べており、沖縄に海兵隊基地を押し付けることは必ずしも米側の総意ではない。

 そのような状況で自衛隊は何をしようとしているのか。2005年に日米で合意された米軍再編の中で、南西諸島は米軍ではなく自衛隊が守ることが合意されている。だから、沖縄本島、宮古島、石垣島、与那国島など南西諸島に自衛隊基地建設着々と進められている。そしてそこで「離島奪還作戦」の訓練が行われている。「奪還」とは占領された事が前提、つまり南西諸島が戦場となる事を想定している。

日本全土を「戦場」にしてアメリカを守る新戦争計画
辺野古新基地は「普天間代替」ではなく米中戦争の最前線基地
内閣府「世界経済の潮流」2010より

内閣府「世界経済の潮流」2010より


 内閣府が2010年に出した報告書「世界経済の潮流」によると、2030年には中国が世界経済の30%を占め、日本が3・3%、アメリカが11・7%になると予想されている。つまり2030年には日米のGDPを合計しても中国はその2倍以上になっているだろうと、日本政府が予想している。
 そのような経済状況の中でアメリカは日本列島―南西諸島―フィリピンにかかる線を防衛ラインとする戦略の中で、同盟国それぞれに役割を与えようとしている。

 アメリカの現在の対中戦略では日本列島を戦場にして中国と戦争をすると計画されている(『労働旬報』9月下旬号、『世界』16年1月号にも書いたのでぜひ読んで欲しい)。中国の軍事力強化によって、アメリカが中国との戦争に勝つ見込みが立たなくなってきたため、南西諸島を中心に「制限戦争」に止める方針を立てた。米軍は直接中国本土を攻撃せず、代わりに日本に中国艦船を攻撃させる。これを「オフショア・コントロール戦略」という。その戦略に合わせるため、日本は「集団的自衛権」が必要となった。

 海上自衛隊幹部学校の戦略研究会コラムで、米国防大学戦略研究センターのT・X・ハマス退役海兵隊大佐は「オフショア・コントロールは中国のインフラを破壊しないことにより、紛争後の世界貿易の回復は促進される。経済的な現実として、グローバルな反映は、中国の繁栄に多く依存するということである」と述べている。つまり中国を破壊すれば、アメリカにとって経済的不利益となるというのである。

 だからこそ、アメリカは直接中国とは戦争をせず、南西諸島で戦争を終わらせるという事である。私たちの国はこの米戦略にしたがって南西諸島に自衛隊基地を建設し、集団的自衛権行使を可能にし、日本の国土を戦場にする事を前提にアメリカに奉仕する国になろうとしている
 戦場になるのは沖縄だけではない。米軍基地があるところはミサイル攻撃対象となる。こうして日本全土が攻撃され、そこだけで終わらせる戦争をアメリカは企画している。この事実を多くの日本人が知らない。

 翁長さんは10月13日に埋め立て承認を取り消し、それを巡って裁判が始まっているが、これを「普天間の負担軽減」としてだけ問題をみると、本質を見失う。
 なぜ日本政府はこんなに辺野古新基地建設に固執しているのか。1995年の少女への暴行事件への沖縄の怒りに対して「基地負担軽減」を約束した時から、もはや状況が大きく変わってしまっている。9・11テロや、強大になっていく中国に対する新しい米戦略に沿って中国と対峙する世界をつくるのが目的である。

 したがって、私たちはそういう道を選んでいくのか、選択が迫られているのであって、単に「普天間基地問題の解決策」として辺野古新基地があるのではない。辺野古新基地こそは戦争の最前線の基地だという事を認識する必要がある。
 日米は2009年2月17日にグアム移転協定を結んで7000億円を日本が負担すると合意した。合意書には「沖縄海兵隊のグアム移転が抑止力の強化につながる」と書いてある。ところが今は「辺野古基地建設が抑止力の強化になる」と言っている。
キャンベル・鳩山・ヒラリー・ルースら

キャンベルと握手する鳩山


 「ウィキリークス」によって暴露された2009年10月15日付けのルース大使の極秘公電によれば、キャンベル国務次官を代表とする訪日団が13日に来て、当時の鳩山首相に対して「辺野古は中国と戦争をする時の3番目の滑走路である。沖縄の2つの滑走路だけでは強大となった中国に対抗できない」と説明した。つまり2009年の段階から辺野古は中国との戦争のための基地だと日本政府に伝えていた。宮古島には中国艦船を攻撃するためのミサイル基地が建設される。辺野古はこれと連動している。だから「沖縄の基地負担軽減のために普天間から移設」と説明しているが、実態は違うということだ。

島ぐるみで抵抗続ける沖縄
日米同盟のための「モノ」扱いされてきた歴史
沖縄県の観光客の推移

沖縄県の観光客の推移


 沖縄ではいま「アジアの風」が吹いていて、観光客が押し寄せている。昨年は716万人、今年は760万人になろうとしている。2020年には1千万人を超えるかも知れない。ハワイでも800万人であり、いかに沖縄がアジアの中で注目されているかは明らか。米軍基地はもはや沖縄経済発展の阻害要因でしかないと翁長さんは公言して知事に当選した。

 辺野古ではゲート前で毎朝、資材搬入を阻止するための非暴力の座り込みが続けられている。座り込みの人数は増えている。12月2日の代執行裁判初公判では知事を支持する1000人を超える人たちが集まった。こんなに多くの人が裁判所に来たのは初めて。沖縄のたたかいは現場でも裁判所でも各地の集会でも盛り上がっている。日本政府と沖縄の対立が激化している。
 すでに辺野古基金には4億8千万円が集まっている。そのうち1億9000万円使って、沖縄意見広告運動の実務協力で全国51紙に意見広告を打った。

 沖縄は昨年9月には浜で5500名の集会が行われ、知事選でも基地反対派が当選、衆議院総選挙では小選挙区4区全員当選させた。それでも基地建設方針は変わらない。対立はますます激化し、日米両政府は「辺野古は唯一」という路線を崩そうとしない。
 第三者委員会が法律に従って埋め立て承認に瑕疵(かし)があると認めたにも拘わらず、政府は「瑕疵があろうと無かろうと知事が取り消しをするのは無効」と主張している。

 もともと沖縄の基地の土地は地主の同意を得ずに強制的に接収したもので、「占領軍は住民の土地を没収してはならない」というハーグ陸戦条約に違反するものである。ところが米軍に都合のいい法律を勝手に作って、あたかもそれが合法的であるかのように装っている。
 また沖縄は「琉球処分」によって日本に併合されていったが、その直後の1880年、明治政府は、中国との取引のために宮古島以西の旧琉球王国を中国、当時の清国に売り渡そうと、「宮古八重山割譲案」を閣議決定した。しかし亡命琉球人、向徳宏(天津)や林世功(北京・自決)たちの決死の行動によってこれは阻止された。

 このような沖縄の歴史を見ると、琉球処分以来、沖縄は「モノ」扱いされている。今でも沖縄は日米安保同盟のための「モノ」でしかない。このことを私たちは肌身で実感している。沖縄の人たちが軍隊に反対し、「ぬちどぅたから」・平和に対する強い気持ちがあるのはこういう歴史があるからである。

米軍再編と対中戦争政策
「戦場」とする予定の沖縄から撤退を続ける米軍

 2006年に米軍の合理化と合わせて8000名の兵士と9000名の家族をグアム移転することになった。さらに2012年には兵士の移動を9000名に増やした。最終的には沖縄から海兵隊は全部いなくなるだろう。なぜなら、「戦争になった場合には沖縄と日本を戦場にする」予定であり、戦場に海兵隊を置いておくわけにはいかないからだ

 マイケル・アマコスト元米駐日大使は6月23日の朝日新聞のインタビューに対して、海兵隊の沖縄駐留は死活的に重要なものではないと言っている。もし事故が起きれば日米関係が壊滅的な影響を及ぼすが、毎年2機くらい落ちているオスプレイが毎日宜野湾市の住宅密集地を飛んでいる。沖縄の反対運動は全選挙区の国会議員、知事、名護市長が反対する広汎なものとなっている。それに比べて海兵隊の戦略的意義はどれほどあるのか、また海兵隊はグアム、オーストラリア、フィリピン、ハワイ、米西海岸へ移転すべきだと答えている。同じ事が9月米議会の報告書でも書かれており、基地建設強行に対する懸念が米議会にも生まれている。

 海上自衛隊幹部学校「戦略研究」が2011年5月に紹介した米軍「エアシーバトル戦略」に関する論文では、日本の米軍基地は同盟国の保障を提供するものであったが、中国の軍事能力が高まり、現在では日本の米軍基地は中国のミサイルの射程の中にあり防ぎようがない。それでエアシーバトル戦略についての有効性が議論されている。

 その背景には1997年12月に米連邦議会に設置された国防委員会の提言がある。そこでは「前方展開基地(沖縄など)に対する脅威は確実に増大し2010年から2020年のあいだに現実のものとなる」とした上で、新たな技術と軍の運用によって中国に対する優位性を確保するように求めている。
 その結果として現在の米軍再編がある。その再編とは、世界に散在している米軍を特定のエリアに集中し動きやすくするものである。沖縄海兵隊のグアムへの移転はその一環としてある。

エアシーバトルからオフショアコントロールへ
日本全土を「戦場」にしてアメリカを守る新戦争計画
米軍戦略に基づくヤマサクラ演習(沖縄は壊滅)

米軍戦略に基づくヤマサクラ演習(沖縄は壊滅)


 そして中国からの先制攻撃が行われたら、米軍はまず第一段階で日本から逃げる。中国のミサイル攻撃圏外のテニアンやサイパンへ退避し、第二段階で制空権を琉球列島ラインまで拡大し、それから初めて中国を攻撃する。次の段階では日本本土での戦争が始まる。
 この構想に基づいた日米共同演習がこれまで何度も行われている(通称「ヤマサクラ」)。アメリカが作った戦争計画に基づいて自衛隊は演習をやっている。

 そしてこの戦略は、エアシーバトル戦略から新しい戦略へと変わりつつある。「アメリカ流非対象戦争」戦略という新しい戦略のもと、「オフショアコントロール」によって米軍ではなく自衛隊が南西諸島一帯にミサイル基地を配備し、中国艦船を攻撃する態勢へと構築しつつある。この戦略は米中が全面戦争や核戦争にエスカレートさせないように、その前の段階で終わらせるため、米中両国を戦場しないことを前提に、その代わりに日本を戦場として戦う戦争戦略である。

 安倍総理は2013年9月、ハドソン研究所での演説で琉球諸島の軍事化を示唆し、集団的自衛権の容認、安保法制強行可決と進んできた。そして先島諸島での自衛隊による離島奪還訓練や、宮古島への地対艦ミサイルが配備され、タイヤ付きの島内高速移動可能な戦車が生産され、配備されることになっている。そういう戦争が行われようとしている。

 日米安保は米軍が日本を守るんじゃなかったのか? 日本を戦場にしアメリカは安全地帯に逃げるという戦略を日本に隠しながら、それに基づいた配備が着々と進んでいる現在、私たちは自分たちの国を自分でなんとかしなきゃならないだろう。

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