提言―これからの生コン支部100年に向けて
武 建一 連帯労組・関生支部執行委員長
『関西地区生コン支部労働運動50年―その闘いの軌跡』より
1.企業内労働組合から脱却し産業別労働組合へ
日本の多くの労働組合は企業別、本工主義です。下請労働者を踏み台にして本工労働者の賃上げを行っている現状を脱却しなければ、労働組合の社会的存在感は減少します。そうしなければ、結果的には本工労働者の賃金闘争も有効に発展しません。
企業別労働組合は、資本には都合がいいですが、労働者には良くないのです。それは、労働者の団結体が企業内だけに限定され、多くの労働者と共通課題で団結・連帯できにくいからです。例えば、多くの企業内労働組合は、「能力給、成果配分」など労働者同士が競争し合う賃金制度を導入しており、これでは労働者の力を結集し、発揮することは出来ないのです。
しからばどうすれば良いでしょうか。それは、世界の労働者が長い歴史の中で培ってきた組織形態である企業の枠を超えた産業別労働組合に、発展・転化させることです。そのことにより、労働者間の競争をなくし、そのためには団結強化のもと公平性、平等性を確保する賃金・雇用制度や福祉政策を実現することです。

2つは、産業別的雇用制度を実現する。一企業が倒産してもその産業は無くなるわけではないので、その産業(トラック協会とか自動車とか各種業者団体)との間において連帯雇用制度を協定化し、雇用安定を確実なものにする。
3つは、産業別福祉政策として、退職金の労働組合管理、年間の福祉予算を労働組合の団結強化に使えるシステムを作る。会社、団体の保養所、グランド等、労働者の使用権を確保し、多くの労働者・市民に解放する。これら3つは、関生支部では既に実行しています。
2.経済・産業構造の民主化闘争の発展を

これを打破するには、「中小企業事業協同組合法」などを有効活用し、全国に各業種・産業の下請企業が無数にある中小零細企業を事業協同組合に組織し、大企業との対等取引を実現することです。
今日の協同組合は、親会社や行政の天下り先としての雇用受け皿的存在となり、従属支配されています。これを改革することは、中小企業同士が対立、競争しない仕組みを作ることです。それには関生支部が実践しているように、共同受注・共同販売・シェア運営(個社共生思想)を各業種、全産業に広める運動を、全国各地域で展開できるようにすることです。
そのために労働組合が果たす役割は、企業の枠を超えた集団交渉を実現することです。日本の企業は個社型で各企業間競争に労働組合を引き込んでいるのが現状ですが、これでは、産業別的規制力を持った諸制度の確立は不可能です。
社会的団結体を作り、企業と業者団体との対等な労使関係の確立が必要条件です。集団交渉は統一要求、統一行動、統一妥結を実践することです。このことが、組合員の労働組合への結集力強化にもなります。そして未組織労働者にも労働条件の適用規範を拡大することにもなります。これが関生支部が追求している運動です。
3.戦術は多様に、時に電撃的反撃を

労働組合でストライキが出来なければ「名ばかり労働組合で、歌を忘れたカナリア」です。統一ストライキあり、部分、指名、抜き打ちなどあらゆるストライキ権行使を構えておくことです。製品の不買、ボイコットなど相手の嫌がる戦術なくして要求は前進しないとの原点を貫くことです。
また不当労働行為、人権侵害は電撃的反撃をすることです。「1発やられたら3発返す」ことを基本に行動する。経済的損失については、原状回復は当然であるがペナルティを課し、不当労働行為の抑止効果を実現することです。これは関生支部で実行してきたことです。
4.全国民的課題に取り組み東アジアの非戦・平和の構築を

2015年8月13日、ソウルで「東アジア平和国際会議」が開催されました。そこでは「日本の平和憲法が東アジアの平和の根幹である」「東アジアの非戦国家宣言の必要」などが合意されました。この実現に向かう運動こそ、戦争への道を急ぐ安倍政権の化けの皮を暴露し、真に東アジアの平和を作る上で重要です。われわれは、東アジアの平和構築に向かうこの運動を実践します。
5.時代認識―資本主義は終焉に向かっている

今や、資本主義の本質である競争社会の対極にある「共生・協同型社会」への動きが、中南米で、韓国・ソウルで、イタリア・ミラノ、スペインなど、協同組合運動が主流となって、大きな流れとなっています。日本では1000兆円以上の借金、少子高齢化、自殺者増大、新国立競技場での税金の無駄使いと談合に象徴されるように、政治、経済、行政の腐敗が進行しています。
安倍政権は「我が国を取り巻く安全保障環境の変化」を理由に、戦争法案、辺野古新基地建設を強行しています。崩れつつある体制の延命のため、アメリカの尻馬に乗り、戦争の道にのめり込んでいるのです。また消費税増税による大衆収奪、大企業への減税、労働法制度改悪による労働者への搾取強化も著しく、すでに年収200万円以下の「ワーキングプア」と言われる人は1000万人を超え、非正規労働者は2000万人となり、貧富の格差拡大となっています。これが社会不安の元凶になり、想像を絶する事件が続出し、治安悪化の源になっています。
安倍政権は、このような根本を正そうとせず、民意を聴く耳持たず、人民抑圧政策「特定秘密保護法、共謀罪、マイナンバー制」などで切り抜けようとしています。
しかし、こうした情勢は、人民との対立矛盾を激化させ、客観的には「敵は自らの行う政策によって自分で自分の首を絞める」方向に向かっており、われわれに団結条件を与えています。つまり、アメリカと日本の資本主義は体制的危機を脱却することは出来ず、そう遠くない時期に命運尽き、体制の崩壊は避けられないのであります。この情勢が未来を切り拓く運動の確信となります。
6.共生・協同型社会をめざして主体的力量の強化こそ、未来を拓く

中小企業の自立、自尊、協同の運動と労働組合とが連携することにより、大企業の収奪政策と闘い、対等取引条件を確保する事になることは、この間の歴史と現実が証明しています。現在、関西で行われている中小企業と労働組合の連携運動は、その価値観において共生・協同型であり、今後も協同組合と労働組合が連携し、このような政策闘争を前進させることです。
最後に、未来の労働組合運動を推進する上で重要なことは、主体的力量の強化です。
既に関生支部は幹部活動家の資質向上十四項目を発表し実践していますが、更に自己規律を高め、幹部活動家の資質を高めることなく、組織強化・拡大は不可能です。そして、産別共闘組織と地域的共闘組織を作ること。感情豊かに、感受性をより豊かにするため、今後は文化部を作り、スポーツ、芸術・音楽など幅広い活動に着手します。
7.50周年事業は未来を担う仲間への贈り物

とりわけ「学働館・関生」(2015年12月23日竣工)は、総面積320坪(4階建)を擁し、全国の闘う労働者、全国の中小企業団体、国際諸団体、地域住民との交流の拠り所であり、未来の希望に向かって時代を拓く闘いの砦とならなければならないのです。
この50周年事業の成功をもとに、向こう2年間で1万余名の組織拡大に全力を尽くすことを社会的使命として取り組み、向う100年への「提言」の実践課題とします。


その関生労組の経験は、このほど出版された『関西地区生コン支部労働運動50年―その闘いの軌跡』(社会評論社刊)に詳しい。是非ご一読をお薦めする。また、全国組織である連帯労組は、仲間と自分の生活向上を願うすべての労働者に門戸を開いている。興味をお持ちの方は、ひとりで悩まず相談してほしい。
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