映画「顔のないヒトラーたち」を観る
乱鬼龍(川柳作家)
みんなヒトラーだった!!そして今
この映画は、戦後、西ドイツは経済復興の波に乗り、多くの人びとが自分たちの犯した罪を過去のものとして忘れ去ろうとしていた、そんな時、一人のジャーナリストと一人の若き検事が、様々な圧力や苦悩を抱えながら、ナチスがアウシュヴィッツでどのような罪を犯したのか、その詳細を生存者の証言や実証を基にして明らかにしていくという、実に厳しく、重い映画である。
しかし、この映画が描く重い歴史は、かつてのナチスドイツが、多くの「顔のないヒトラーたち」によって行なわれたのと同様に、かつての日本は、天皇ヒロヒトのもとに「顔のないヒロヒトたち」によってその数々の戦争犯罪が行なわれたと考えなければならないということを示しているとも言えると思う。
そして、戦後70年の今日、新たなる日本軍国主義の復活とも言えるような、反動潮流の激化する日々の中で、それは、かつての「顔のないヒトラーたち、ヒロヒトたち」の犯罪だけではなく、正に、今日を生きる私たちひとりひとりの問題でもあり、厳しく、重い問いかけでもあると言えると思う。
この映画を観て「昔はひどいことをしたものだ」というようなことではなく、今日には今日の、大きく、深く、重い課題に、私たちは真剣に向きあい、かつての犯罪的時代を繰り返さないための、深い思考力、そして実行力を、求められていると言うべきだろう。
ひとりでも多くの皆さんに鑑賞をおすすめしたい。
(「コモンズ」89号にもどる)