つながれアジア!葬れTPP!国際シンポジウムの成果とこれから

TPP反対ハワイ集会

TPPへの反対は世界に広がっている(TPP反対ハワイ集会)

 TPP参加12カ国の政府代表が2月4日、ニュージーランドに集まり、署名式を行った。これによって各国はそれぞれの国内手続きに沿って、協定批准に向け動き出す。日本では2016年度予算案が成立し次第、本格的な国会論戦が行われる見通しだ。こうした情勢を踏まえ、TPP反対運動を進める市民団体「TPPに反対する人々の運動」は、「連帯ユニオン関西生コン支部」「TPPストップ!山形県民アクション」と連携して東京、大阪、山形で「つながれアジア!葬れTPP!国際シンポジウム」を開催した(シンポの内容はこちら)。TPP成立阻止の国際的な包囲網づくりを掲げたこの取り組みの意味を考える。(大野和興)

シンポジウムが目的とした3つのねらい

 国際シンポには三つの国の民衆活動家を招聘した。TPP参加国ではないが、政府が参加に積極的に動いている韓国、東南アジアからマレーシア、太平洋の国からニュージーランド。シンポのねらいは大きく三つだった。一つは、政府が署名をしたという現実を前に、それぞれの国ではTPP阻止のたたかいをどのように組もうとしているかについての情報の交換。二つ目は、それぞれの国内での運動を国際的な連携にしていくにはどうしたらよいかについて知恵を出し合うこと。三つ目は、それぞれの国、地域でTPPがもたらす影響、TPPの問題点をどうとらえているか、について改めて確認し合うこと。

阻止のためには日本の運動の責任は大きい

つながれアジア!葬れTPP!国際シンポジウム 第一の課題についていえば、どの国も「闘いはこれからだ」と強調したことが印象的だった。TPPについて政府はどこも推進に積極的だが、社会、経済の状況は矛盾に満ちている。この20年、急速に進んだグローバリゼーションのもとで、各国とも社会の分断、格差の拡大が広がり、それは民族間、産業間、階層間、都市と農村、などさまざまのセクター間の軋轢を生んでいる。貧困の拡大で底辺層の社会への不満も充満している。反対運動はこの矛盾をテコにTPP批准阻止の運動を広げていく方針だ。

 韓国から参加したチョン・テインさんはノ・ムヒョン大統領の首席秘書官を務めた経歴を持ち、TPPの原型ともいわれる韓米FTA運動をリードした韓国の代表的な知識人であり運動家でもある。彼は、「反対運動の広がりを背景に韓米FTAは署名から批准・発効まで5年かかった。TPPはまだ前段が終わったばかりで、阻止のためには日本の運動の責任は大きい」といういい方で、日本の運動を激励した。

投資家の利益が国家の役割よりも優先する

つながれアジア!葬れTPP!国際シンポジウム 第2の課題である国境を超えた運動のつながりの構築についても、その必要性をみんなが認め合った。TPP反対の運動ではこれまで米国やオーストラリア、ニュージーランド、日本の四カ国の市民組織が連携しあって、それなりの動きをつくりだしてきたが、寄り大きな影響を受ける新興国・途上国とのつながりはつくれないまま、今日まできている。その意味では、今回東南アジアなども招いての国際シンポを開催した意義は大きい。

 TPPがもたらすであろう影響をどう見るかという第3の課題については、どこも共通して指摘したのは、外国資本の投資を保護するISDS(投資家が投資相手国の政府を訴えられる制度)の危険性についてであった。韓国では同じ規定をもつ韓米FTAによって米国の投資ファンドによって韓国政府が訴えられる事例がすでに出ていることをテョン・テインさんは具体的に指摘した。

TPPは人々の生活の基盤を破壊してゆく

つながれアジア!葬れTPP!国際シンポジウム だが、そうした具体的な条文や枠組み以上に深刻な問題として取り上げられたのは、それぞれの国と人びとのくらしを成り立たせている基盤とでもいうべきものをTPPが壊してしまうという指摘であった。多民族国家マレーシアではこれまで複雑な利害の衝突を防いできたもろもろの歴史的に形成された仕組みが壊されてしまう危険性があるという。なかでももっとも印象的だったには、ニュージーランドの先住民マウリ民族のアーティストで、先住民の権利回復運動の活動者でもあるモアナ・マニアポトさんの話であった。マオリの人びとはイギリスの植民地主義と200年にわたる闘いを続け、奪われた土地、失った水に対する権利回復の粘り強い運動を進めてきた。モアナさんは、TPPに反対する運動をそうした歴史的な闘いの流れになかに位置づけ、多国籍資本による新植民地主義との闘いと規定した。

 TPPに代表される新自由主義によるグローバリゼーションは、何重、何層もの抑圧と差別を生みだす。その最底辺に押し込められ、生きるための資源も基本的人権も奪われている存在が先住の民と呼ばれる人びとだ。モアナさんはTPPを最底辺の視座から見つめ直すと何が見えてくるのかを教えてくれた。今回のシンポジウムの最大の成果であった。

大野和興(ジャーナリスト、TPPに反対する人々の運動世話人)

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