鎌田慧さんに聞く 反原発運動と秘密保護法反対運動を結び安倍内閣打倒運動へ

反原発運動と秘密保護法反対運動を結び安倍内閣打倒運動へ
大きな大衆運動の力を結集するときです


鎌田慧さん


コモンズ編集部より 鎌田慧さんは、3・11福島原発事故以来、それまでの活動をなげうって、「さよなら原発1000万署名市民の会」という新しい大衆運動組織を起ち上げ、その呼びかけ人となって全国を駆け回って諸運動を結びあわせ、今日に至る大きな反・脱原発運動の奔流をつくりだしてこられた方です。その鎌田さんに、安倍政権が強行成立させた秘密保護法を反原発の立場からどう見るか、反原発運動の今後の課題をお聞きしました。発言の要旨、タイトルや文中の見出しなどは編集部の責任でまとめさせていただきました。

反原発の立場から秘密保護法を考える



■原発はずーっと秘密だった

 秘密保護法が成立して施行されると、世の中の雰囲気がじわじわ変わると思う。それはすぐにというよりも、だんだん萎縮状態が強まっていく。自粛とか自己規制が進んで、それが肉体化すると思う。いやな法律です。

 原発に関して言えば、原発はずうっと秘密にされてきたわけで、事故が起こっても「事故」とは言わず「事象」ってしか言わない。かなり後からでないと報告しない。報告しなかった例もある。東京電力の例ですけど、ゼネラルエレクトリック(GE)の下請け社員が、格納炉の隔壁にひび割れがあったという内部報告を安全・保安院に出したのが、保安院から東京電力に連絡して、東京電力が犯人(内部告発者)探しをしたとか、とにかく原発の中は今は法律があるなしに関わらず秘密状態なのです。
 SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)による放射能拡散状況さえ発表しなかったわけで、とにかく「原発は安全だ」という建前でしか原発は建設されてこなかった。だから建設の根拠は「安全」ということだったわけで、安全が冒されると建設の根拠が無くなるから、事故はみんなごまかしてきたんですよ。

 ただ、罰則が無かった。内部告発する人にも罰則は無かった。働いている労働者が原発の中の状況をしゃべったって、罰せられることは無かった。孫請け労働者が田舎に帰ってどこかでしゃべったから捕まえようがなかった。これからは、追っかけていって逮捕できるわけです。
 原発の門を通過するのにもすでに厳戒体制になっている。車の下も鏡で調べているしね、トランクも全部開けさせ、全部点検している。そういう厳戒体制だったが、罰則が無かったという1点で問題にならなかった。これからは禁固10年という刑があるわけですからね。

■原発も軍事問題

 原子力基本法が、原発を進める最大の法律なんです。これは「自主、民主、公開」という三原則を入れることによって、原子力開発をやる突破口になったわけです。原子力基本法は1955年12月に公布されたが、中曽根が2億3500万円で予算化した時には、日本学術会議は反対していた。それをねじ伏せるために「平和利用する」という形で「自主、民主、公開」という三原則を付けた。ところが、一昨年、野田内閣の時に、「安全保障に資する」という一句が入れられた。安全保障に役立つという、つまり平和利用から軍事利用にも転換したのですね。

 今度の秘密保護法は外交と軍事とスパイとテロという4分野、どっちにしても軍事が中心です。外交は軍事と絡んでいる。軍事機密の防衛が中心です。原子力基本法の改定によって、原発自体が「軍事施設」になって、いままでは民間企業の施設だったのが、安全保障に資する、つまり役に立つための生産設備ですから、軍事秘密に関わってくる。秘密保護法の設置によって原発の中がもっと見えなくなる。それに対する反対運動も規制しやすくなる。軍事問題ですから、軍事と原発と両方を規制できる。

 原発反対運動も、「デモはテロだ」という発言で石破の民主主義感覚というか、デモに対する嫌悪感と恐怖というのがよく顕れています。彼は原発稼働は安全保障のために必要だという事を言っている。元防衛大臣だった。とにかく防衛族だし、軍事強化論者です。「デモはテロ」発言で、この法律の本質がよく現れている。

■『日本の兵器工場』の中で暴露した兵器工場の真実

日本の兵器工場(講談社文庫) 毎日新聞のコメントでも言ったのですが、すでに各兵器工場には、日米防衛援助協定の秘密保護法による「防衛秘密保全規則」というのがあるんです。『日本の兵器工場』(講談社文庫)に引用しています。
 工場の中にもう一つ工場があって、そこに出入りして働く労働者は厳重にチェックされている。その人たちの「適性調査」で身辺から親戚から調べられています。それは今までやられてきた事なんです。原発工場は兵器工場でもあります。三菱、東芝、日立、IHI(石川島播磨)、それから日本製鋼所。日本製鋼所は室蘭ですけど、昔、日鋼室蘭の大争議があったところです。日本製鋼所っていうのは戦艦大和の大砲を作ったメーカーで、その鍛造技術があるんですよ。だから今、世界の原子炉の8割は日本製鋼所が作ってるんですよ。

 兵器工場というのは電機と造船と鉄鋼ですよ、兵器産業の中心は。それが全て原発メーカーです。兵器工場の労働者支配が強まることは、そこの構内ばかりか、周辺、家族友人も含めた周辺が全部管理されていく、これから自衛隊員の適性検査も身上調査も厳しくなっていくのですが今後は秘密保護法で最高10年。「秘密」を言った方も取材した方も罪になる。ほとんど取材ができなくなるということです。
 今でも兵器工場はほとんど取材されていない。僕が1983年に『日本の兵器工場』を出したあと、朝日新聞の名古屋本社が連載して本にしています。豊和工業という銃のメーカーが「鎌田にやられたから取材には応じたくない」ような事を言っていたと、朝日新聞の社内誌記者座談会にあるんです。
 現在、兵器工場は取材に応じていないし、ほとんど写真も出ていない。原発内もこれからそうなっていくでしょう。建設過程でも僕も伊方や六ヵ所村の再処理工場なんかは見ていますが、これから「公開」するかどうか。

■石破の「デモはテロ」発言はいみじくも彼らの本音を

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ビキニ環礁で行われた水爆実験と被曝した第五福竜丸

 「防衛秘密」がきびしくなると、たとえば昔のように、舞鶴の軍港とか大湊の軍港とか、丘の上から撮影できなかった。そういう風にどんどん報道の自由が無くなる。公務員もなにもしゃべれなくなるし、民間の労働者でも中の事をしゃべれなくなっていく。そういうことを狙っている。それが今回の石破発言にいみじくも現れた。デモ自体が民主主義と相容れないと彼は言っているわけでしょう。

 60年安保闘争のあとに全造船が徹底的に攻撃されています。どうしてかっていうと、兵器工場の労働者が日米安保反対闘争をやったからです。全造船は中立労連だった。総評じゃなくて。それで三菱とか石川島播磨の経営者がびっくりしちゃったわけですね。それで第二組合を猛然と作ったわけです。それが全造船をつぶして造船重機労連を作るきっかけです。
 いまは兵器工場でもあり原発工場でもあって、日本で最も重要な工場です。そこが中心になって連合になっているわけで、その連合が原発に賛成している。だからこの法案にも連合は、反対していない。

 造船、鉄鋼、電機、それから電力産業というのがこの法律の背景にあります。原発は核開発の中心になっていく。つまり原子力政策は核政策であって、原発がないと核武装できないわけです。
 だから核武装の中心を原発技術が担っているわけで、日米原子力協定も55年に締結されます。その前年、54年の国会で2億3500万円の原子力予算を請求する提案を当時改進党の中曽根議員がおこなった。その趣旨説明を担当した同党の小山邦太郎議員が次のように述べています。「新兵器や、現在製造の過程にある原子兵器をも理解し、またはこれを使用する能力を持つことが先決問題である」。中曽根は53年にアメリカに行って、予算成立は54年3月です。ビキニの水爆実験の時でした。
 ヒロシマ、ナガサキ、第五福竜丸があっても、核武装の問題をほとんど歴代の首相が言ってますよ。安倍も小型の各兵器を持った方がいいと言い、中曽根も佐藤も岸も一貫しています。
 基本的には「潜在的なポテンシャルを高める」という事なんですけどね。

これからの課題 反原発と秘密保護法反対が結びつくチャンス
こんな悪性の政府を認められるかどうかっていう事です



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日比谷野音を埋め尽くした反原発集会(2013.3.10)

■労働運動の参加が少ない 「いのち」の運動をしてこなかったことに

 今、反原発、戦争をさせない運動で動いているのは、連合の中では日教組と自治労が中心で、あとは中小労働組合、関西生コンもそうでしょうけど、中小の労働者が労働運動を担っている。各地の集会でも市民の方が圧倒的に多い。10万単位の人びとが個人で集まってきています。これまで労働運動がヒューマニズムの運動というか、いのちの運動に取り組んでこなかった。

 「安全闘争」として、労働者のいのちに最も関わってくる問題だったが、経営者側の合理化運動に飲み込まれてできなかった。労働者が「自分たちのいのちは自分たちで守る」っていうのが労働運動の第一の原則のはずなんです。賃金よりも、やっぱり労働者の存在っていうか、生存権、いのちですね。労働現場が四重、五重構造という、多重構造になっています。
 多重構造の底辺労働者が被曝したり死んだりしても、正社員=本工労働者は今まで無視してきた。気がつかないふりをしてきた。でも、福島事故は、正社員でも被曝しているわけで、原発事故は下請け、孫請け、ひ孫請け、日雇い労働者の問題だけでなく、本工労働者の生命の問題でもある。
 今まではどんどん非正規を切り捨てていて、自分たちだけは安全なところにいたけど、いったん事故が発生すると放射能が自分たちの身に降りかかる。下請け労働者だけを犠牲にして自分たちが安穏と暮せるのかっていうヒューマニズムの問題でもあります。

■原発運動と秘密保護法反対運動が結びつくチャンス

 秘密保護法反対運動と脱原発運動とが結びつき拡大していくチャンスです。
 自公共謀内閣を打倒する、そういう運動の時期に来ています。いまはさまざまな不安と不法が渦巻き、出口をもとめています。それが大衆運動の課題です。こんな悪性の政府を認められるかどうかっていう事です。

 いまは60年安保反対闘争のような社共総評ブロック、それを中心にした「国民共闘会議」のような運動はできません。このファッショ的な政府にたいする、いのちを中心とする運動です。
 原発で「さよなら原発1000万人署名運動」を盛り上げ、それが様々な分野でいろんな運動を作ってきたと思う。「戦争をさせない運動」でもそれと同じような団体を作る必要があると思います。

 運動を担うところが無い。だからやっぱり、作家とか学者とかジャーナリストとか音楽家、俳優など、そういう人たちが中心になってやっていく運動でいいと思っています。それを呼びかけて、党派を超えて参加してゆく。いまどっかの組織がヘゲモニーを握って何かをやるっていう時代ではないのですよ。
 連帯、協同、共感、共生の時代です。

鎌田慧さんの著作(Amazonサイト)


(機関紙『コモンズ』第67号5面)

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