中国全人代 バブル後始末、軍事費温存 一党支配と国家資本主義の行方

国際短信拡大版2【安藤壮(国際トレンドレポート)】

中国・全人代開幕、一党支配・国家資本主義の行方


経済成長で軌道修正-バブルの後始末。
軍事費温存―「軍事覇権国家」への道

習近平国家主席と李克強首相

習近平国家主席と李克強首相


 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は3月5日、約3000人の代表を北京の人民大会堂に集め開幕した。開催期間は9日間前後とみられている。今年明らかにされたのは、減速感を受けての「第13次5ヵ年計画案」で、6・5%―7.5%経済成長を目標とするこれまでのバブル経済の修正だ。
 だがその中で、習近平国家主席の強い意向とされる中国版NSCと呼ばれる「中国国家安全委員会」の創成は目を引く。世論統制~民族分離運動への弾圧表明さえうかがわすこれら<国家安全>策への傾倒。さらに海洋権益開拓を重要項目とする軍事力増強(軍事費は今後ともGNP10%以上水準を堅持)―アジア・太平洋での米国との角逐に勝利し得る強大な覇権国家への野望は、もはや隠しようがない。

●李克強首相は開幕日、1年前に就任して以来初となる政府活動報告で主要な経済目標を発表し。今年の経済成長率目標は6.5―7.5%に据え置かれると発表があった。
●銀行預金金利の自由化につながる預金保険制度や人民元の変動幅拡大、および中国(上海)自由貿易試験区で人民元の資本勘定における交換性向上を目指した実験を目指す。
●資源をめぐる環境保護省の権限強化など、一段の政府機構改革。環境破壊行為を罰する権限を強めたりすることが見込まれる。
●重要な経済のけん引役となる民営企業の役割を拡大するため、大手国有企業の活動制限を行う。  
●腐敗撲滅活動の強化を前進させる。

バブル経済の「胡錦濤時代」克服と
「新常態」掲げる習近平政権の立脚点

2016-03-中国全人代
■中国政府による「新常態」の説明

習政権が今後取る「新常態」=ニューノーマルとは2つのこれまでのアブノーマルからの脱却を意味する。その2つとは、2002年から10年間にわたる胡錦濤政権時代に見られた不適切な経済政策運営のことであり、今も腐敗の温床となっているバブル的熱狂の沈静化である。

■成長速度の適正化

 前政権時代の第1のアブノーマルは速すぎた成長速度である。前政権の指導部は中国国内のあらゆる地域の産業が好景気を謳歌する状態が望ましいと考えていたように見える。このため、中央および地方政府、国有企業等の景気拡大重視派の求めに応じて、全産業、全地域が喜ぶように景気刺激策を実施した。

 米国、日本のような経済大国では通常、産業分野別、地域別の経済状態のばらつきが大きい。金利引下げ、貸出増大、財政支出拡大といったマクロ経済刺激策で不景気産業や地域経済を全て救済しようとすると、元々景気が良かった産業や地域は景気が良くなり過ぎて景気過熱に陥る。事実、前政権の10年間に3度もインフレが発生し、一般庶民は物価高に苦しんだ。中央政府はインフレを未然に防ぐことに失敗し、景気過熱になってから急速な金融引き締めを実施したため景気変動の波が大きく、中国経済は常に不安定な状態だった。こうした政策下では、企業や地方政府は短期的に好景気を謳歌するが、良好な状態は長続きせず、すぐに景気過熱を招き、庶民はインフレによって生活苦を強いられた。

 ただし、経済全体としての適正な成長速度の保持を重視しているため、一部の産業は好調な一方、一部の産業は不景気が続くなど、産業別・地域別にはまだら模様の状態が続いている。競争力が乏しく不景気が続いている産業分野の企業や地域の政府関係者は当然この状態に不満を持っている。しかし、習近平政権はそうした産業や地域に対して補助金を与えて甘やかすことをしない。市場メカニズムに基づき競争力のない企業の整理淘汰を促進している。以上が「新常態」の1つ目の特徴である。

■経済構造の筋肉質化

 第2のアブノーマルは経済成長の中味の不健全さである。現在中国は、鉄鋼、セメント、硝子、石油化学、造船など主要製造業の過剰設備見直しと、3~4級都市における住宅の過剰在庫の削減に取り組んでおり、中国バブルの後粗末―ハードかソフトか、着地のあり方に主眼を置こうとしている。

中国P-A【全人代解説】
 全国人民代表大会は、中華人民共和国の一院制議会。憲法上、国家の最高権力機関および立法機関として位置づけられている。任期は5年。毎年1回、3月頃に開催される。代表の定数は3000人を超えてはならない。第12期全人代の議員数は2,987人。
 日本では全人代と表記する場合が多いが、中国では全国人大、人大と略する。全人代は、省・自治区・直轄市・特別行政区の人民代表大会および中国人民解放軍から選出された代表(議員)によって構成される。一般国民(公民)が代表を直接選挙するのではなく、閉ざされた政治形態である事に変わりない。

「コモンズ」93号の目次にもどる

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

  1. コモンズ最新号目次

特集記事(ランダム)

  1. 労働学校・アソシエ 特別シンポジウムの様子

    2017-10-17

    労働学校アソシエ8・26特別シンポ詳報

季刊「変革のアソシエ」No.29

最近の記事

  1. フランス政府の公式ロゴ、自由・平等・博愛
    グローバリズムへの対抗軸として 2014年にフランスで制定 スペイン・エクアドル・メキシコ・ポルト…
  2. ブランコ・ミラノビッチ
    前号(こちら)からのつづき 4、帝国主義の世界支配からのパワー・シフト [caption id=…
  3. 木畑壽信さんを偲ぶ会 献杯の様子
     7月1日に急逝した木畑壽信さん(享年66歳)を偲ぶ会が、9月8日、東京中野の中野産業振興センター1…
  4. 尾形憲さん
     さわやかな秋風が吹く今日この頃、皆様方には益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。  「元法政大学…
  5. カタルーニャ独立闘争
    10月1日に実施されたスペイン東部カタルーニャ州の独立をめざす住民投票をめぐってカタルーニャ州と…

特集(新着順)

  1. 開城(ケソン)工業団地・韓国の工場で働く朝鮮の労働者

    2017-10-20

    アジアの現実から朝鮮問題をとらえ直す-一体化するアジア経済/大野和興

  2. 労働学校・アソシエ 特別シンポジウムの様子

    2017-10-17

    労働学校アソシエ8・26特別シンポ詳報

  3. 借金なし大豆

    2017-9-20

    種は誰のものか「種と百姓の物語」種子法廃止に思う(下)

  4. 社会的連帯経済の実践に学ぶ-6.30シンポジウム

    2017-9-18

    社会的連帯経済の実践に学ぶ 山形県置賜地域から菅野芳秀さんを招いて

  5. 文在寅(ムン・ジェイン)

    2017-9-15

    講演】東アジアの平和を!韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権の誕生を受けて/李泳采(イ・ヨンチェ)(恵泉女子学院大学教授)

バックナンバー

カテゴリ一覧

本日
昨日
累計
FROM 2014/01/01
ページ上部へ戻る