2016年大統領選は米国社会分裂のはじまりか?

国際短信拡大版1【安藤壮(国際トレンドレポート)】

2016年大統領選は米国社会分裂のはじまり?


米国大統領選挙で大きな異変が起きている。民主党の予備選挙で当初無名だったバーニー・サンダース上院議員が本命のヒラリー・クリントン前国務長官に肉薄。共和党の予備選挙では不動産王ドナルド・トランプが依然として独走中だ。これは政治と経済から疎外された左右無名大衆の反乱に近い政治状況の様相とも見えて来る。

ヒラリー・クリントン

ヒラリー・クリントン

 3月1日、米大統領選での候補者指名争いで必要な代議員を獲得出来る最注目日―スーパーチューズディのこの日、民主・共和両党11州の予備選・党員集会があった。民主党ではヒラリー前国務長官と共和党の不動産王D・トランプ氏が過半数の州を制した。
 だが民主党で若者の支持を集めるB・サンダース上院議員も4州で勝利、マサチューセッツ州も接戦であり、「米国大転換のための選挙選継続」を訴え、闘いの姿勢を崩さない。

 極右トランプと極左ではないが穏健左派のサンダース現象が示すもの……。まさに米国資本主義の危機と最終局面が到来している事の証しであろう。
 従来からある2大政党制という既成枠への閉塞感、それに敵意すら抱く左右両派米国民の分裂含みのエネルギーがある。わずか一人?の大統領で収束させ、統一的政体が具現化出来るのか。
 左右とも未来の見えない不気味な閉塞感の拡がりの中、中間層が没落し米国を支えて来たピラミッド構造は既に壊滅に瀕している。今、1%のあくどい権益層と99%の貧困層という上下に引き離されつつある米国社会で、白人中心で極右による排外主義の恐怖か、「ウォール街占拠」での格差社会打破を訴える若者たちの反乱か。そのどちらが制するのか、それとも混乱の中、漂うままなのか……。

 米国2016年は国家がバラバラに寸断される、あのバベルの塔の例にも似た、深刻な分裂劇の始まりの年になるのかも知れない。当然、全世界にその影響は伝わる。
 日本にとり民主党・共和党ではなく、左右どちらかが宗主としての王冠を頭にし命令を下して来るのか。
沖縄基地情勢・TPP・日米安保の行く末など、片時も目を離してはならない年となった。

■トランプの巧妙な選挙戦略
 炎上ツイートとそれに群がるメディア


ドナルド・トランプ

ドナルド・トランプ

 NewsWeek紙上で渡辺由佳里氏が卓抜な論評を加えているように、トランプと他陣営との戦略の違い―それはネット時代の群集心理を最大限利用しているという意味でのトランプの先行だろう(これは、わが国の橋下徹のポピュリズム手法と似通う)。
 アイオワ州では、J・ブッシュが1票の獲得に費やしたコストが5200ドルだったのに対し、トランプはライバル中最少の300ドル 。ほとんど何もせずアイオワ予備選で2位になった。
 武器はツイッターを中心にしたソーシャルメディアだ。
 トランプは、政治に限らずその時の話題に素早く極端な意見をツイートする。エボラ熱が話題になると、オバマ大統領に「エボラの国からのフライトを止めよ」と命じるといった攻撃的口調で、スカッとしたい?大衆は乗せられる。
 こうした暴論極論は、左右から賛否入り乱れ必ずネットで炎上するのが常で、TVはトランプ動向を連日語り続け、ネットも彼の話題であふれる。
 対抗陣営がTVや新聞・雑誌など旧態已然で効果のないCMに大金と時間をかけている間に、トランプは無料でメディアにPRをして貰っている。常に露出し続ける。良識派は目をそむけるが、不満を抱く大衆は鬱憤晴らしの代役として、熱狂する。…似ている、橋下に…。あのヒトラーなどファシスト登場の時代に。
 トランプは大統領選に出馬する前からこれらを経験として熟知している。マスメディアに無料PRをさせ、1回で数千人を集めることができるTVネット集会で時間とコストの節約をする。
 それがトランプの奸知に長けた巧妙な戦略だ。日米にまたがる保守主義の変質―剥き出しの憎悪がはびこる極右反動たちへの警戒感とも併せて、要注意の人物の登場だ。

■米国の社会悪を提起!
 B・サンダース。…そして青年らは

バーニー・サンダース

バーニー・サンダース


 民主党予備選挙で支持を急拡大させているバーニー・サンダース上院議員は、「民主社会主義者」と自ら名乗り、格差是正を訴えて若者層からの支持が大きい。候補者の中でも最高齢の74歳だが、若者から圧倒的な支持を集めている。TV出口調査によると「30歳以下の支持率が85%」(ニューハンプシャー州予備選)と、クリントン氏に大差をつけた。
 「公立大学の授業料無償化」「大手金融機関の解体」「国民皆保険制度の導入」など資本主義の害悪に真っ向から立ち向かうこうした具体的主張が、閉鎖状況にある青年の気持ちをまさにキャッチアップした。

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【解説】4年毎の狂騒…大統領選挙
    年前半と後半で異なるステージ


サンダース候補支援集会での若者たち

サンダース候補支援集会での若者たち

 米国の大統領選びだが、国民が「大統領選挙人」を選び、その大統領選挙人が大統領を選挙するという間接選挙の形をとる。米国50の州では、夏に予定されている党全国大会時に各党それぞれの大統領候補者を投票するための代議員選びが1月から始まっている。

1)1~6月/前半戦は政党内の候補者を決める争いで、同じ政党の中で数者候補者が闘う。この代議員を選ぶには、予備選挙と党員集会の二つがあり、州・党によってどちらか、両方実施する州もある。
2)7~8月/党全国大会ー各州から集まった代議員(各州の予備選挙で当選)が選挙して、各党の大統領指名候補が決定する。全国党大会に出席する代議員数は民主党が4049名、共和党が2380名である(2012年)。これ以後は、両党の候補者同士の戦いとなる。

■大統領になるための条件は?
 Ⅰ>出生による米国人であること
 Ⅱ>35歳以上であること
 Ⅲ>米国に14年以上在住していることの3つ。
  移民でも州知事にはなれるが大統領にはなれない。
 ※たとえば俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーはオーストリアからの移民で現在も
  二重国籍者だがカリフォルニア州知事を務めた。大統領選には出馬できない。

■宗派はほとんど、プロテスタント
米国の宗教の内訳は、カトリックが24%、プロテスタントが51%を占める。 歴代の米国大統領の宗教をみるとケネディだけカトリックで、他全員はプロテスタントだ。米国は、プロテスタントが作った国といえる。

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