連載(寄稿)(その83)
協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史〇56

協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史 近畿生コン関連協同組合連合会専務理事 増田幸伸
連載第83回

■産業民主化と労働組合

関西地区生コン支部 労働運動50年(社会評論社)

社会評論社より刊行


 ここまで「世界の協同組合運動」(その39)から、日本の戦後中小企業運動や政府の中小企業政策を追いかけ、さらに、生コン関連の事業協同組合について言及してきた。
 さて、生コン関連の事業協同組合運動をリードしてき関西地区生コン支部(関生支部)が、2015年10月に「関西地区生コン支部 労働運動50年-その闘いの軌跡 共生・協同を求めて1965~2015」(50年誌)を出版した。
 すでに、関生支部については詳しく述べてきたが、あらためてこの50年誌から、関生支部労働組合運動の特徴(それはそのまま、関西の生コン関連事業協同組合運動の特徴につながる)を明らかにしたい。

 50年誌には、「第Ⅱ部 関生労働運動の社会的意義」の項に、木下武男元昭和女子大学教授、本山美彦京都大学名誉教授、熊沢誠甲南大学名誉教授、丸山茂樹参加型システム研究所研究員、大内秀明東北大学名誉教授の論考が掲載されている。ここで、木下から関生型労働運動が日本の労働運動再生の鍵を握るとの重要な指摘があった。

 1つは、戦後日本では、世界基準と比較して特異な組合組織形態である企業別労働組合が主流であったが、例外的に、産業別業種別労働組合として、全日本海員組合や全日本港湾労働組合、そして関生支部があった。関生支部は結成のころ、海員組合から学んでいる。木下は、関生支部執行機関が、欧米で一般的な、企業の枠を超えた業種別統一指令部として機能し、執行権・財政権・人事権は末端の企業組織ではなく、支部に集中していることが強力な統一闘争を可能にした組織的保障だという。
ウェッブ夫妻

ウェッブ夫妻/イギリスの社会運動家で、1894年のフェビアン協会に参加。夫のシドニーと妻のベアトリスは1894年に結婚、夫妻ともにその理論的指導者となった。彼らは社会主義の立場に立つが、革命による変革ではなく、言論と議会を通じて漸進的な社会主義の実現を目指した。後に夫のシドニーは労働党内閣で商務相や植民相を歴任した。


 19世紀、英国で労働組合が爆発的に拡大した。エンゲルスやマルクスは、労働者の悲惨な状態は資本家の搾取から生まれているが、これが維持されるのは労働者間の競争であるとし、組合こそがこの競争を排除するのだとした。さて、日本ではどうか。日本の賃上げは、年功賃金を基礎に企業内の労働者(主として男性正規雇用)の賃上げを対象とする。産業・業種全体の労働者間競争を排除しようとはしない。日本の主流の労働運動は、組合の本来の機能を持っていない。
 この労働者間競争を規制する方法を定式化したのがウェッブ夫妻である。労働者の競争は個人取引から生まれる。労働組合が労働条件の共通規則を作って、個人ではなく、労働組合がまとめて集合取引(団体交渉)で経営者に押し付けるとした。日本の主流の労働運動は、企業横断的な共通規則・集合取引に取り組まない。関生支部では、1973年以降、企業ごとの賃金格差のない統一賃金(業種別・職種別賃金体系)などの共通規則を作って、多数の企業を集めて集団的な労使交渉を行い、実現させている。

 さらに、日本の産業構造では大企業が重層的な下請構造を形成し、中小零細企業の過当競争を利用し、収奪している。この構造を変えない限り、日本の労働者数の過半を占める中小零細企業下の労働者の賃金・労働条件は変わらない。そして、この構造に挑んだのが、関生支部の産業政策である。生コン業界の中小企業をまとめて事業協同組合に組織し、大企業(生コンの原料であるセメントメーカー、生コンを購入するゼネコン)と対等な取引関係を形成する。共同受注共同販売によって、適正料金の収受、生コンの品質管理、安定供給を果たしていく。この闘いこそが日本資本主義の根幹を穿つのだ。

 2つには、関生支部が所属していた全自運が1978年に運輸一般と名称変更した。当時の英国最大の組合であった運輸一般労働組合から学び、日本労働運動の限界を乗り越えるために、新たな運動を模索した。世界では、一般労働組合(ゼネラルユニオン)は各種の産業や職業の範囲を越えて、半熟練・不熟練労働者を、単一の労働組合として広範に組織し発展した。英国の運輸一般(名称に拘束されず、運輸ばかりか建設やサービス業など多様な領域にまたがっている)や米国のチームスターという巨大組織が存在する。
 木下は、総評解散後、連合・全労連・全労協の3つの全国組織が作られたが、この25年間、それぞれの勢力を減退させてきただけであるとした。今の日本の労働運動にとって必要なことは、関生型労働運動を各産業・業種・職種に広げることだと指摘する。生コン業界が特殊だと逃げないで、全国様々な業界で業種別職種別ユニオンを作り、互いに連携し合同していけば、ゼネラルユニオンの大きな全国組織が日本に出現する。これが日本労働運動を衰退の淵から再生していく唯一の方途であるとした。(つづく)

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