不透明感が強まったTPPの今後 今こそ本質的な議論を/大野和興(ジャーナリスト)

TPP黒塗りの「公開」情報

タイトル以外が全文黒塗りの「公開」情報


■黒塗りの「公開」情報

 TPP(環太平洋経済連携協定)の批准をめぐる本格的な国会審議は秋に持ちこされた。短時間で終わった4月の衆議院での委員会審議でわかったことは、TPP協定の中身、とくに交渉の経過は秘密のベールに包まれ、ほとんど明らかにされていないということである。衆議院の委員会質疑で、野党の要求で政府がしぶしぶ出した交渉経過を記したメモは、全文黒塗りされていた。TPP交渉の中身が知られると、いかにも都合が悪いことを天下に知らせてしまった一幕であった
 これまで参加国の中でもっとも前のめりでTPP交渉を進めてきた日本政府も、いざ国会批准の段階になって、スケジュールに狂いが出てきたことで、先の見通しに不透明感が出てきたことは否めない。

■混迷が強まるTPP交渉

昨年10月のTPP交渉

昨年10月のTPP交渉

 TPP交渉の主役米国の動きは、もっと混沌としている。大統領選真っただ中の米国で、大統領候補が全員、TPP批准反対を唱え出したのだ。これでは、誰が大統領になったとしても、なった途端手のひら返しで「TPP賛成」というわけにはいかなくなった。大統領選後、米国は間違いなくTPP交渉参加12カ国に再交渉を突きつける。

 TPP交渉で積み上げられて協定文は、今年2月に参加国が集まって調印式を上げた。いま、各国は批准に向けそれぞれの国内手続きを進めているところだが、米国のこうした状況をにらんで、当面動かない方がよいと判断した国も多い。TPP交渉は各国の利害を調整しながら積み上げてきたもので、ガラス細工のようなもろさを持っている。どこかをいじると、ガラガラと崩れてしまいかねない。ここへきて、TPP交渉そのものに混迷感が強まっている。

 そうした状況を踏まえて、TPP反対運動側はどのような闘い方を組むか、が問われている。TPPは生活全般にわたって影響を与える。実質審議が秋まで伸びたこの機会に、憲法と照らし合わせながら、TPPとは何かを改めて考えてみてはどうだろうか。

■TPP交渉差止・違憲訴訟

嘘しかない

ウソしかない 安倍政権の選挙公約ポスター

 「TPP交渉差止・違憲訴訟」がいま東京地裁で進んでいる。同訴訟で原告が主張の中軸においているのは憲法13条である。13条は、「(国民は)個人として尊重される」とうたい、続いて「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を定めている。そしてその権利は「国政の上で、最大の尊重」をしなければならない、とも述べている。

 13条は人のいのち(生命)を基礎とする「人格権」を保障する規定なのである。「TPP差止・違憲訴訟」の訴状は、13条の条文を紹介しながら、「人格権とは、個人の人格に本質的な、生命、身体及び精神に関する利益が総体として保障される権利」であり、「人の生命を基礎とするものであるがゆえに、わが国の法制下では、これを超える価値を他に見出すことはできません」と述べている。

 この権利はさらに判例の積み重ねの中で、平穏な生活を営む権利(平穏生活権)の確立に至っているというのが同訴状の論理であり、TPPはその権利、いいかえれば人が平穏に生活する権利を奪うという主張している。ここまで掘り下げた議論を運動側は世論に提起することが大事になっている。(中見出しは編集部)

大野和興さん(ジャーナリスト・TPPに反対する人々の運動世話人)
大野和興さん

大野和興さん

 1940年生まれ、ジャーナリスト(農業・食料問題)。現在、ジャーナリスト活動のかたわら、アジア農民交流センター・脱WTO/FTA草の根キャンペーン世話人、国際協力NGO・日本国際ボランティアセンター理事、「TPPに反対する人々の運動」世話人。日本とアジアの村歩きを通して、現場での農民との共同作業と発信をこころがけている 。
大野和興さんの本(Amazon書店)

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