連載(寄稿)(その84)
協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史〇57

協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史 近畿生コン関連協同組合連合会専務理事 増田幸伸
連載第84回

■日本の常識に挑戦する

労使一体となった「生コン関連業界危機突破総決起集会

労使一体となった「生コン関連業界危機突破総決起集会

 前号の木下論文に続いて、関西地区生コン支部(関生支部)50年誌での熊沢誠甲南大学名誉教授の論考に言及する。
 熊沢は「社会的労働運動」とは何かと問う。企業別労働組合と連合体は、組合も社会全体のことを考えているとして、広く国民生活に関わる政治・経済・社会福祉などへの取組みを組合のスローガンに加えることをもって「社会的労働運動」と標榜している。しかし、本来の「社会的労働運動」とは、労働組合が労働条件を標準化する範囲を、個別企業の正社員だけでなく、競争企業や関連企業の労働者、多様な非正規労働者たちに広げていくことであるとする。みずからの傍らで働く非正規労働者への差別や同業他社の労働条件格差を放置して、労働運動というのかと指摘する。

 以上を前提にして、関生支部の組織と運動において、本当の「社会的労働運動」が示されているとする。その特徴は組織形態では欧米型の産業別労働組合、運動形態では関生支部いうところの「産業政策」である。
 すでに触れているが、関生支部は競争する生コン工場を協同組合に組織化し、ゼネコン・商社に対し共同受注共同販売、適正料金収受を勝ち取ってきた。協同組合化は生コン工場に、賃金・労働条件の相場を守ることのできる「支払能力」をつけさせるということになる。その上で、生コン経営者団体との統一的な集団交渉で、標準的な労働条件を獲得する(正規労働者だけでなく、非正規の日々雇用労働者の賃金・労働条件、出入り業者の適正料金等々)。この結果は、業界の労働条件の規範となる。日本ではほとんどない、ヨーロッパ型の労働協約の拡張適用である。

 こうした闘いには大きな反発が出てくる。協同組合化は個々の企業にとって、従来の個社型経営(自分だけ儲ける)か相互扶助による協同型経営かの選択を迫る。協同組合化には、いつでもアウト(協同組合員外)社が出てくる。協同組合化の過程では、説得と圧力による攻防が繰り広げられる。アウト社に対し、説得に応じない場合、ピケを含むストライキやボイコットを対置する。協組への結集率が高まれば、価格交渉力も強くなる。ゼネコン・商社には危機意識が高まる。
ものものしい関生支部への不当な弾圧に怒りのシュプレヒコールや抗議の集会

ものものしい関生支部への不当な弾圧に
怒りのシュプレヒコールや抗議の集会


 さて、生コン業界には無頼の経営者も少なくなく、関生支部では労働組合を作り、交渉を進めることに対して、暴力的な攻撃を受けてきた。1974年と82年には、組合員が会社に雇われた暴力団に殺害されている。
 また、81年にはヤクザならぬ日経連(財界の労働対策団体)の大槻文平会長が先頭に立って、関生支部の運動は「資本主義の根幹に関わるような闘いをしている」との判断を示し、「箱根の山を越えさせない」と述べた。
 さらに、司法も偏っていた。協組の維持発展のためには必ず伴うアウト社に対するピケに対し、司法はビジネスを妨げる「威力業務妨害」として断罪し、ときにアウト社からの損害賠償請求を認めてきた。しかるべき組合活動への刑事弾圧も頻繁で、今まで延べ100人以上の逮捕者をだしていると指摘。

 熊沢は、これらは先進国では通用しない労働運動へのまぎれもない弾圧に他ならないという。日本では、横断的な労働組合による個別企業の「経営権」への介入を異常(違法!?)とすることがまかり通っていると批判する。権力は、企業横断的な産業別労働組合が実力(ストなどの大衆的実力闘争)で、中小企業の存続も視野に入れた「産業政策」を追求することは、二重の意味で「反社会的」であるというのだろう。企業の専権事項とみなされる製品価格への介入など許されないとする。しかし、現代日本の権力の側が「反社会的」とみなす労働運動こそが、まさに労働者が誇るべき「社会的労働運動」ということができるとした。

 熊沢は、前回木下論文と同様、関生型労働運動は広範な産業の労働者に適用されるべき必要性と可能性をはらんでいるという。特に、関生型労働運動は深刻な企業規模間賃金格差の根因である下請構造へ楔を打ち、産業民主化を進めることが可能となる。懸命に模索されるべきとしている。

最後に、全日本港湾労働組合(全港湾)にも言及する。港湾では、全国港湾と日本港運協会との労使交渉で産別協定を交わしている。その中で、1979年に雇用と生活保障制度に関する協定を締結、港湾労働者保障金制度(生活保障・年金・就業斡旋等)を確立した。また、財源は荷物の取り扱い基本料金以外にトン建て料金として別途請求し、事業者団体の日本港運協会が確保する。生コン業界も全国港湾の制度保障に学ぶことが多いとした。(次号につづく)

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