報告】国際シンポジウム 「朝鮮戦争を検証する―停戦60年目」

京都・立命館大学コリア研究センター 2013年11月23日

国家の壁を越え、「民衆主体のアジア平和」構築へ!


〈韓半島平和と東アジア平和の同時化〉と
〈国家中心から、民衆中心での平和構想〉を――徐勝研究顧問が提唱


国際シンポジウム 「朝鮮戦争を検証する―停戦60年目」立命館大学

概 要
 わが国における朝鮮情勢の研究拠点・京都の立命館大学コリア研究センター(RiCKS)は、1953年7月の停戦から、38度線で分断され緊張状態のまま昨年停戦60年を迎えた朝鮮戦争の史的意義を検証し、〈東北アジア平和構築・安全保障体制で最重要テーマたる朝鮮戦争をいかに終結させ、平和共存体制に移行するべきか〉という命題を元に、昨年11月23日、同大学衣笠キャンパス充光館で、第14回国際シンポジウム「朝鮮戦争を検証する―停戦60年目」を開催。韓国から東国大学北韓学研究所要人らを迎え、日韓さらに中国の研究家も加えた討論の場に打ち出し、関係者の注目を集めた。

 同センターは、世界で唯一“冷戦”が続く、朝鮮半島構造の解明無しに、国際相互での平和観樹立と根本認識のパラダイム転換は成しえないとし、今回シンポジウムでは枠を広げ、社会学や人文学的視点も持ち込むことで、多元的に朝鮮戦争の継続/終結の意味するところを議論したいとして、多くの識者を集結させた。各国大学研究者による、最新の朝鮮戦争~その後の歴史検証等のテーマ別報告〈1部〉〈2部〉では、別項の4氏が研究成果を発表した〈*参考1,2を参照〉。

 第3部の総合討論では、徐勝・立命館大学コリア研究センター研究顧問による統括進行で、「終わらぬ朝鮮戦争の爪跡と周辺諸国への問題の広がり」での論考と、「朝鮮戦争評価と平和統一への実践の道」として、それら諸国全体を巻き込んでの総合的観点と、歴史的事実での相互確認など、為政者を離れた旺盛な学術的民間的交流実践等の中からこそ、平和への具体的道筋は生まれるのではないか、との同氏提起が会場の共感を呼んだ。

日米中心思想から、民衆中心の東アジアへの大転換
徐勝研究顧問

徐勝研究顧問

■総合討論から徐勝(ソ・スン)研究顧問の見解/
 停戦60周年の2013年、韓国―日本―中国で様々のシンポジウムがあった。9月北京の精華大学シンポジウムに参加し、中国人のいう「抗米援朝」60周年に関する論文に接した。
 内容は、国家利益より革命利益を優先した毛沢東の「抗米援朝」策に批判の意見が主流だった。朝鮮とほとんど同じの100~200万もの大量の兵の犠牲、加えてアメリカに口実を与え台湾海峡に軍事介入コミットされ、台湾は自力解放できずにマイナスだったとの否定的論調ばかりだった。 
 当時の毛沢東は、“朝鮮では戦争不可能”の幹部意見を押し切り、解放戦争の延長として朝鮮戦争を位置付け一貫していると扇動していたためだが、中国国民挙げての人民戦争の時代は終り、その変わった中国による朝鮮戦争への評価とは何か?論議する必要性が今後大いにあるだろう。

自由往来関係の中国―台湾、南北統一への形は?
 現今の、中国―台湾間での往来自由な関係に、南北は将来なれるのか? 2014年から台湾は事実上兵役が無くなり、大陸中国に対する戦争準備の必要性すらなくなった。金門島=対中国への特別最前線区域の解除の事実。両岸の緊張関係はなくなったと観ていい(―人々の意識はまだ反対だが)。南北統一への道とは、国家間での決断という方向によるか、周辺環境が緩和する中で、往来を重ねた中で統一に向かうかのいずれかだと思うが、朝鮮半島だけで平和を望んでも、周辺の政治力学の今がそれを許すとは思えない。東アジアでの冷戦体制とは、持続する戦争前状態のことであるのだから終結こそ望まれるのだが、日・中・ロ、もちろんアメリカもパワーポリティクスとしての秩序バランスを崩すものとして認めないだろう。

 だからこそ、私がこれまで提唱してきた、「日米中心から、民衆中心の東アジア」へという視点変換の重要性をこの際、再認識頂きたい。
 これは戦後、アメリカが帝国日本の悪霊が乗り移ったかのように、〈永久戦争国家〉に位相変化してしまった事を踏まえて、そんな国の平和観(戦争観)に巻き込まれてはならないからだ。
 大日本帝国下で沖縄、台湾、韓国の3つの地域では、冷戦下での共通の運命を自覚してか、過去清算などで多くの事を学び、変えてきた。平和を求めるにあたって、ともすれば国家間利益を優先しがちの政府レベルで好ましい変化が期待出来ないのであれば、これら地域ののように、民衆中心に平和構想を持ち先取りする気概。つまりは、韓半島平和化と東アジア平和化を民衆レベルで同時進行させなくてはならないとの、重要な視点を関係者はぜひお持ち頂きたいと訴えるものだ。

参考1 朝鮮分断の歴史と在日問題の理解から 第1部報告
●鄭栄桓・明治学院大学教養教育センター准教授「『長い朝鮮戦争』と在日朝鮮人運動」では、大日本帝国敗戦後も日本政府は、朝鮮人民を法的支配下におき、かつ朝鮮への退去強制権を確保したいとして、大阪等での「居住証明」など登録制度を試行したこと。済州島4・3蜂起(*解説参照)を契機とする、民団の、朝連=共産主義者責任論(日本共産党を後見人と断じ)などで、韓国のみでの単独選挙賛成への誘導が図られた経緯。さらには、生存権さえ認めようとせず、むしろ在日朝鮮人を「治安撹乱者」として、百万人規模での強制送還を企てた吉田茂ら日本政府為政者の卑劣さと、これらに対する反対闘争の動きも説かれた。

●朴喜辰・東国大学北韓学研究所研究教授「朝鮮戦争が引き起こした分断家族と平和不在の暮らし」では、朝鮮戦争で余儀なく越北、越南と南北に引き裂かれた家族が、南では北に親戚がいることだけで“赤のレッテル”を貼られ、政権の危機のたびに国家保安法や反共法など名目によるスパイ事件で捏造逮捕され、分断統治の犠牲になった民衆悲劇も明らかにされた。

参考2 政治力学の中の朝鮮族、関係修復への両政府行動 第2部報告
●鄭雅英・立命館大学経営学部教授「中国朝鮮族と朝鮮戦争」では、戦前日本の満州国経営に多くの朝鮮人が政策移住させられた歴史。特に中国人開墾地は日本が収奪、これを朝鮮人に有償で分配し、優劣構造を敷き、日中朝での民族間葛藤と憎悪が巧みに演出されたなど、国家間で民族アイデンティティーまでが崩壊させられる、政治力学の非情さが語られた。

●高有換・東国大学北韓学科教授「停戦脇定の平和協定への転換問題」では、南北関係修復への両国政府行動を注視。朝鮮側が韓国側に向け、〈米朝と南北の敵対関係の一挙解消〉など大きなビジョンでの対話を希望しているのに対し、韓国朴政府は朝鮮への人道的支援や東北アジアでの非政治分野での協力体制など、周辺的なアプローチに終始していると比較し明らかにした。

(報告・関西S)



【解説】済州島 四・三事件:
済州島 四・三事件  済州島は朝鮮半島南部にある島で、大日本帝国敗戦解放後南のアメリカ軍占領地域に入った。1947年3月済州市内で「南北統一された自主独立国家の樹立」を訴えるデモに警察が発砲して6名が死亡し、これに抗議する全島ゼネストが10日に行われた。
 アメリカ軍は警察官や「西北青年団」(右翼青年団体)を済州島に送り込んで厳しい弾圧を行った。大韓民国成立後も韓国軍によって島民の処刑・粛清は継続して行われた。韓国軍は、島民の住む村を襲うと若者達を連れ出して殺害するとともに、少女達を連れ出しては、輪姦、虐待を繰り返した後に惨殺したという。1957年までに8万人が殺害されたとの推測もある。
 韓国では、この事件は永らくタブー視されてきたが、2003年に就任した韓国の盧武鉉大統領は、自国の歴史清算事業を進め、2006年には済州島で犠牲者慰霊祭が開かれた。

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