新年座談会 暴走する安倍政権の本質と闘う主体の課題

「731」と書かれた戦闘機でガッツポーズをする安倍


座談会に当たって 2014年は、時代の大きな転換のなかで、日本列島社会に暮らす民衆の未来の運命を左右するような正念場の年です。この座談会は、新年特別企画としてある沖縄の辺野古埋立て問題と名護市長選、脱原発問題、オルタナテイブとしての協同組合運動についての内容との重複を避けて、暴走する安倍政権の本質、それと闘う主体の問題を主題に討議しました。(編集部 生田あい)

出席者
  武  建一 (連帯労組関生支部委員長、中小企業組合総合研究所代表理事)
  大野和興 (農業ジャーナリスト、TPPいらない人々他) 
  司会を兼ねて 生田あい (コモンズ編集長)

1.秘密保護法成立と暴走する安倍政権の本質をどう見るか


――戦前の軍機保護法、治安維持法に匹敵する非常に危険な秘密保護法が強行成立されました。短い間で60年安保時のように、市民、ジャーナリスト、弁護士、学者、映画人、音楽家など広範な人々の反対の声が広がるなかで、これを無視して押し切ったものです。また同じ時期に、安倍政権は沖縄の民意を踏みにじって、沖縄県出身の5名の国会議員を恫喝して県内移設の公約を破棄させ外堀を埋めて、沖縄県知事に普天間基地の辺野古埋立てを迫る「平成の琉球処分」といわれる強権的な仕打ちをしています。
 新年は、沖縄の辺野古埋め立て問題と名護市長選、8%消費税増税、安保戦略の転換、集団的自衛権問題もあり、戦後の歴史を画する歴史的節目に差し掛かっています。
 まず、この秘密保護法をどう見るか。暴走する安倍政権をどう見るか。この点から…

■一種の「合法的クーデター」

農業ジャーナリスト大野和興さん大野 今回の件は一言で言うと、一種の「合法的クーデター」に日本の国家が乗っ取られたというような感じがしております。ナチスの台頭の時と同じような状況がいま進んでいるのかなあっていう気が、特に今回の秘密保護法の一連の政治過程を見ていると、痛感します。それが一つ。

 二つ目は、クーデターの主体は安倍政権ですが、それじゃその安倍政権とは何者か。極右と言っていいと思うんですが、それが衆参選挙で大勝した。国際的には孤立してるんだけども、国内では依然として支持率が高い。そしてその安倍政権を軸に政治の翼賛体制がますます強まっている。議会内の圧倒的多数が極右政権を支える翼賛体制が進んでいて抑える勢力が見当たらない。そのことの怖さを感じます。

■背景にあるアメリカと日本支配層の危機

 背景にはアメリカの要請が強く働いていると私は見ます。我が国の支配層と資本主義的価値観を共有し、日米安保同盟を結ぶ米国自体が深刻な危機の渦中にある。リーマ都市部大手銀行から中小信用組合に預金を差し替えるなど多様な運動が報告されている。「米国一極覇権」の終わりとその衰退が始まっているので、アメリカはアジアにシフトし、アメリカの目下の同盟国として日本の力をアメリカのために活用しようと。安倍政権がなりふり構わず沖縄の辺野古埋立ての強要、国家安全保障会議(日本版NSC)の設定、秘密保護法、そして集団的自衛権へ、これらは全部セット。安倍が元々極右だというのは分かるんですが、あんなの大したことない男ですよ。

――それで思い出したのですが、ハンナ・アーレントというユダヤ系のドイツ人としてナチスに迫害された経験を持つ女性哲学者が、ナチズムの分析で示した大虐殺の責任者は凡庸で陳腐な人間だったという「悪の凡庸さ」のことです。稚拙で陳腐でどう見ても凡庸な政治家たちが数におごり、民意を足蹴にして残虐な戦争への扉を開ける。安倍たち政治家のことですね。話の腰を折って……続けてください。

 もう一つ、安倍政権が暴走する動きには、彼ら支配層内における深刻な危機がある。危機の中身は、近年の新自由主義のツケが一気に集中して、貧富の格差が拡大し続け、ワーキングプア、高齢者、若年層、農民、中小企業者がますます困窮している。ですから、アベノミクスは実際は莫大な借金を作って人々を騙したが、消費税は新年4月から8%ですが、新年末には10%に、IMF(国際通貨基金)は15%と言われている。こういう形で99%の民衆に犠牲を転嫁する政策を実行してくる。そうすると当然、反発が高まってくるわけで、その前に国民の手足を縛るような秘密保護法のような法律が彼らにとって必要だった。だから安倍がやっている事は1%の支配層の危機の反映です。尖閣を巡る日中問題などでも隣国との対立を煽る政策を続けている。これも安倍政権が国際的に孤立していることの現れで、こうした国内の不満を外に向け抑え込もうと。しかし広範な反対世論の高まりをみても、闘いの条件を相手が作ってくれていると見ますね。

■彼らは今を千載一遇のチャンスと

――大野さんの「ナチスのような手口」が、沖縄では、「デモはテロだ」といった石破自民党幹事長が沖縄県連をねじ伏せて、辺野古容認を認めさせ、仲井真知事に「辺野古埋立て」承認を迫っている。年末の「国家安全保障戦略」「防衛大綱」の閣議決定も合わせ、全ては日米安保同盟における彼らにとっては「命綱」みたいなところを、民衆の怒りが爆発しない前に数の暴力で急ぎやってしまえということですね。支配の側にゆとりがあったらもっと懐の深い支配の仕方をするはずですから。もうそのゆとりがない。

 彼らは、今を千載一遇のチャンスだと見ている。今を逃したら後ではやれない。後では今いったツケが国民にくるから。選挙の投票率の低さや危険率にみる国民の政治不信の高まり、政党への失望がある。軸になる政党が無い。そういう意味ではその空洞ともいえる期間に、こっちが虚を衝かれている。

■アベノミクスと軍事路線は結びついている

大野 アベノミクスと今回の安倍の軍事化路線は結びついている事をもうすこしきちっと言った方がいいと思っている。例えば武器輸出三原則の緩和ですが、アメリカの軍事技術開発に、日本も加わりたいという事です。アジアは今いちばん経済が成長しているし、いろんなところで紛争が起きている。そして中国も日本も含めてアジア各国が軍拡競争に入っている。フィリピンもベトナムもそうです。いまアジア全体が武器市場化している。その市場をどう取り込むかということが安倍成長戦略そのものとみていい。安倍が熱心に進めている原発輸出も、その動きの一環とみることができます。

 そこで秘密保護法の出番となる。アメリカと組んで技術開発をする。秘密保護法みたいなのがないとアメリカは技術を解放しないから。そしてそれを持って日米共同でアジアに武器を売り込んでいく。アベノミクスの最終的な到達点はそこなんだろうなあという事で行くと、アベノミクスと軍事化路線、日本版NSCとか秘密保護法、この関係をもうすこしきちっと総体的にとらえた方がいいんだろうなと。

 で、実はTPPというのはその要のところのインフラを作っているというわけです。TPPをなぜあれだけ延長するかというと、そういう大きい経済、これからの経済の基礎を作るものだと僕はとらえている。
 もう一つは仰しゃったとおりだと思うんですが、日本の権力構造というのが変わってきているんだろうと思うんですね。で、対米従属と自立のあいだで揺れている、その中で安倍政権という奇妙な政権ができあがったと思う。権力構造の分析が少し我々に足りないんじゃないのかなあという気もするんですけどね。

■安倍政権の国家権力・統治システム 再編への現局面
 ―「この国のかたち」はどう変えられつつあるか


――その権力構造の分析について、具体的に言うとどういうことでしょうか。

大野 逆説的に聞こえるでしょうが、ぼくは政党という仕組みがかなりガタがきているという感じがしています。それは政権党である自民党にもいえる。自民党の基盤だった農村部を歩いても、かつての土着の強さは感じない。その意味では政権を追われた民主党とあまり差はないですね。それは現実の政治にも反映していて、安倍官邸だけが突出して権力をふるっている。では安倍官邸の強さの源泉はどこにあるかというと、支持率が高いということくらいしかない。つまりはふわっとした民意で、その民意を動かしているのはナショナリズムで、操作しているのは官僚です。それもかつてのような財務官僚ではなく、公安を中心とする警察官僚がのさばりだしている。

――そのことにも関連しますが、安倍政権について整理をしますと。武さんも言われたように、資本主義の根本的危機が進行し、その焦点がアジア・太平洋に移動し、そこで台頭する中国と一極覇権の後退にあるアメリカとの「米中が結託し、争奪する」新しい時代が始まり、この中で日本の国家・安全保障問題も問い直されている。
 沖縄やTPP問題に見る米政権からのあからさまな要求も、「日本を取り戻そう」という安倍の「改憲―戦争のできる国家」への反動政治もこうした世界的変化への対応ですね。

 「3・11」大震災や原発事故下での民主党政権の破綻や震災ショックを利用し政権を奪った安倍政権は、戦後の「この国のかたち」―戦後憲法の絶対平和主義と日米安保条約の軍事的原理との抱き合わせの矛盾を、戦後の平和主義が「消極的」とみて投げ捨て、「積極的平和主義」というレトリックで平和どころか「集団的自衛権の見直し、自衛隊の国軍化」などで右から国家改造を企てている。安倍政権はこの軍事国家への大転換と自主憲法制定をミッションとする政権です。

 現在進行している安倍政権による戦後の国家権力機構(自衛隊・警察・監獄など軍事機構と司法、行政、情報・教育機構など)と3権分立下の代議制民主主義の統治システムの再編政治は、政党政治、議会制民主主義から人心が離れており、大野さんが指摘されたように地方や農村、沖縄などでその支配基盤が崩壊している。それで首相官邸にたった数人の閣僚で構成する戦争司令部―国家安全保障会議(日本版NSC)を創設して、国民の目、口、耳をふさぎ、重罰を振り回して恫喝し、「国のかたち」
を変えるような国家安全保障戦略を閣議だけで決定し、中央突破を図ろうということですよね。

 しかし、この創設された司令塔は、何をどうするか十分わからずアメリカを真似、何を統合軸に支配していけばいいか、21世紀の新しい統合軸をもたず天皇を元首にするとか、国防軍とか、戦前への回帰のようなものしかない。そして中国脅威・封じ込め戦略、敗戦や侵略戦争の責任を認めず戦前へと回帰する安倍政権の路線は、日米間の、東アジア諸国との矛盾・軋轢を激化させ、国際的孤立を深める。
 これが昨年より一気に進行している政治局面で、大野さんが言われた権力分析は、さらに変化している主体の問題と合わせ新年の課題としたいと思います。

2.対抗する主体とその対抗の道はどこに―労働運動、協同組合運動を考える


――武さんがおっしゃったように、向こうが民衆側の主体の空洞問題の虚を衝いてきている。闘う側がオルタナティブをだして、支配の虚を衝いていかなければならないが、できず流動化している状況で、これが今の主体を巡る情勢ではないでしょうか。野党のほとんどは全部翼賛化し、この「合法的クーデター」の補完勢力になっている。共産党は相変らず「自共の対決の時代が来た」と自画自賛し、社民党も衰退の一途で、総体として議会には今の流れを差し止めるような力はない。だから大衆行動で包囲していくしかない。その新しい可能性が、年末の短い時間の秘密保護法反対で大きな怒りと行動が全国に広がり、反対の高まりに押されて野党の一部も分解し始めた。それは衰えず続いている。問題は、労働運動が前面に出る時だと思うのですが、なぜ労働運動はだめになってるんでしょうか。

■企業別組合では労働運動は分断され、闘えない武建一さん(連帯労組関生支部委員長、中小企業組合総合研究所代表理事)

 ひとつは企業内組合ということにある。企業の支払い能力でしか物事を見ようとしない。その産業構造や経済構造をどうするかとか、そういうのは全く見えていない。結局、資本主義を維持するための思想的な動員に勝てず会社に協力する組織になっている。企業別組合。ですから要求の設定も、本工中心主義で出入り業者、非正規労働者の権利、つまり労働者全体の利益は全く眼中にない。むしろそうした人を踏み台にして本工だけよくなろうということです。

 ですから労働運動が企業別的に分断されて生存や基本的人権に関わることがあっても対応させない仕組みになっている。「関生型」のように産別組合であれば、職場における要求に限定せずに、産業構造、経済構造を民主化していく観点と運動が中小企業も結集させて闘えば変わるんですが、そういう思想や発想がほとんどない。
 共産党の場合などは議席が1議席増えたかどうかだけで喜んでいて、大衆運動を組織することをしないわけで、共産主義を語りながら、議会主義で事実上の「国民党」です。だからここに、下からの大衆運動で権力と闘うことを期待するのは幻想に過ぎないですね。

■「センターが無い時代」の戦略を

大野 今の時代的な特徴といいますか、さっきの政党や国家の問題もそうですけど、センターがない時代なんじゃないかという気がしてるんですよ。労働運動は、今、仰しゃったような事で、ナショナルセンターは連合、全労連、全労協ととりあえず3つあるが、どこも右往左往している。市民グループも、シングルイシューで個々バラバラで、どの運動を見ても、「どこが中心なのか」が見えない。大きく陣形を広げて、しかも中心がないと政権打倒闘争などできないのですが、それがないのですね。

 国家が溶けかけ、政党政治が溶けかけて、権力構造もセンターが見えない。いまは首相官邸があるだけですよね。官邸が転んだら、たぶん今の体制は全部転ぶと思います。つまり実体は自民党もバラバラで、これは山形の例ですが落下傘で降りてきたエ
リート官僚上がりの若い陣傘議員が選挙区でふんぞり返っている。かつてなら派閥の新人研修で一年生議員の身の処しかたをたたきこんだものですが、そういう基礎的な研修さえできなくなっている。「センターが無い時代」の戦略を僕らが持たなきゃいかんかなあという気がしてるんですけどね。

■韓国の協同組合運動の発展に一つの答えが

 全国的なセンターは、今すぐには状況的に難しいと思いますね。各地域で、拠点になるところを、関西で言えば関生が拠点になる。東京で言えばどこにするのか。それぞれ拠点になるところをきちっと設定して、そこから地域への広がりが出来ていったら、拠点を面にして結びつけて全国のセンターを作る、そういう事でしょうね。

 東京の『関西生コン産業60年の歩み』の出版記念会で、丸山先生が韓国の例を紹介され、非常に感銘を受けたのですが、例の協同組合法ができて1年間で2800の協同組合ができたという。ソウル市を中心にいくつかの地域に拠点センターを創って、あれが資本主義の危機と韓国の支配層に対する一つの答えです。

 日本も関生の経験から見ると、現在の資本主義の危機は中小企業に犠牲を全部転嫁していますから、中小企業の人たちにしっかりした指針を示して、いっしょに行動しようということになれば、全国で中小企業が結集することは可能になる。現在、160万社ほどの会社の70%が赤字だと言われており、それが全部中小企業ですから、そこに運動が大きく発展する条件があります。

 労働者の場合、年収が200万に満たないワーキングプアーが1000万人、非正規労働者が1906万人で労働者全体の36・5%に膨れ上り、もっと増えていきます。安倍政権は、解雇を自由にできる法律を作ろうとしています。つまり、先ほどの生田さんの話にあった「安保戦略」決定もそうですが、今の権力者は、憲法が内閣を縛る最高法規なのに行政府が決める法律によって憲法を縛り上げていって、そういう法律が最高法規のように逆転させるようなやり方をする。基本的には「国民主権」から「国家主権」に変えようという事ですから、それは必ず、経済的に弱い中小企業、労働者に犠牲を転嫁するという政策を実行せざるを得ない。ですから、やつら自身が自分の墓掘りをしているようなものですから、運動の主体がしっかりと確立すれば、中小企業の人たちは経済には敏感ですから、関西だけが特殊では無くして、中小企業を巻き込んで経済と産業を民主化する政策をしっかりと掲げて、労働組合と連携した運動を展開すれば、必ず結果が出る。ですから、関生的な労働運動、協同組合運動が広がる条件は熟してきているのではないかと思います。

■協同組合の理念と実利が合体した取り組みが必要

大野 ぼくらもそうだけど、インテリは協同組合って言ったら、協同組合理論の勉強ばっかりするんですね。だけど協同組合というのは実務であり事業なのですから、そこをきちんとしなければ畳の上の水練になってしまう。

 僕らは有機農業映画祭をやっていて、僕はずっと代表をやっているんですが、今年で第7回。毎年700~800人が参加してくれます。有機農業をしている人たちは、今、一生懸命いいものを作ってるが売れないとか、放射能の問題とかあって四苦
八苦している。しかも有機農業の世界は基本的に一匹オオカミが多い。それでみんなが個々バラバラにやるんではだめだから、地域レベルでいいから、事業協同組合を作ったらどう? そして東電とも集団交渉したらどう? と提案すると、多くの人が「ああ、それはいいですね」って賛成する。

 だけど協同組合ですから赤字は出せない。きちっと事業化しなければいけない。会計処理はどうすればいいか。つまり、実務をどうするか、みたいな事が全然手が付いてない。僕らも用意できてないし、「じゃあこうしなさい」って言えなくて、「協同組合はいいよ」で終わる。だからオーエンとかサン・シモンとか、モリスはこっちに置いといて、一緒に実務を考える運動をしないと、掛け声ばかりで実際に広がらないとつくづく痛感しています。実利と理念とが合体したような事が必要です。
 
 結局、労働組合を強くするためには、まず労働者同士が競争しない仕組みを作るということです。例えば賃金ですが、今は成果主義、能力主義的な賃金が普通だが、我々は一貫して成果主義は認めない。つまり賃金は公平平等な、同一労働同一賃金の原則を取り入れて実行していく。そうすると労働者同士の競争が、賃金面において分断されていないわけですから抑制される仕組みです。ですから団結が強固になりやすい。協同組合も一緒ですよ。中小企業同士を競争させる仕組み、大企業に都合のいいような支配構造を作り上げる。ですから、中小企業も「競争しない仕組み」をどう考えるかですよ。

 競争しないというのは、一応民主主義的観点で、今「独禁法除外規定」があって、中小企業が協同組合に結集して値段を談合して決めることは、独禁法違反じゃない。ですからその法律の有効活用をしようと思えば、まとまって競争しない仕組み、例えば取引先と個社が取引すると叩かれますが、協同組合が窓口になって取引できる仕組みを作る。価格も決める。その為には「センター」が必要です。ですから、生コンの場合も生コン以外でも、協同組合が、全国に事業協同組合だけで3万8000位あり、一応事務所を持っている。ところが、ほとんどの協同組合は天下りがおり、大企業にとって都合のいい仕組みにするために、人をそういうところから派遣して、中小企業づらしながら大企業に都合のいい仕組みを逆に協同組合が担わされるわけです。そうじゃないようにしようとすれば、本来中小企業が主体にならないかんわけですが、中小企業が主体になると、大企業から逆指名をくらって取引が不利になるか、場合によっては取引を停止される危険性がある。そうすると、協同組合に対する問題意識を持ったスタッフを軸にしてセンターを作り、そのセンターの中にそれぞれ利害が対立している人たちを結集させていく。

3.新年への課題


■「ソウル宣言」に応えて

――先ほど『関西生コン産業60年の歩み』出版記念会と丸山さんの韓国の例の紹介について話がありました。この出版会で丸山さんが、「この関西生コン60年史の意義は、伝統的な労働運動、伝統的な協同組合運動、伝統的な社会主義運動、共産主義運動の枠をもっと広げて、新しい社会運動の姿を実現したことにある」とおっしゃったことに驚きました。そして、これは世界の流れだということで、「ソウル宣言」の紹介とこれへの取り組み、ここから新しい社会運動の地平線を創っていこうと、呼びかけられたことでした。

 このように、「関生型」と言われている関西の労働運動、協同組合運動の意義が、東京で的確に評価いただいたことで、また紹介された「ソウル宣言」の素晴らしい内容にも啓発されて、その後東京でも、大阪でも「ソウル宣言」への取り組みの気運が生まれ始めています。まずは、これが新年に大きな流れになっていくよう奮闘することが求めれています。
 この確認の上で、最後に、新年の取り組みなど、お話しください。

■政党別、分野別の違いを超えた運動の「プラットホーム」を

大野 最後は武さんに締めてもらうとして、簡単に。来年は本当に厳しい年になると思いますね。言い換えれば変革の年でもある。
 政治、経済、社会と分けて考えたんですが、政治がやっぱり集団的自衛権とか改憲の問題が具体的に出てくる。それとどう対決するか。経済でいくとますます、解雇規制の緩和や生活保護の締め付けなどで貧困化が強まると同時に、独占化がより一層強まる。それもこれまでのいわゆる重化学工業系じゃなくて医療や食や介護といった、暮しに直結するところで独占化がどんどん強まっていく。例えば楽天の薬のネット販売はその一例です。 社会でいくと、地域の崩壊がいっそう進む。特に農村はTPPに絡む農政転換で、百姓がいなくなるみたいな状況になる。百姓がいなくなるということは村が無くなることで、それは同時に地域に根付いていた商店や地場産業が滅びていくことでもある。

 人々がおだやかに心安らかに生きる権利、平和的生存権が根底から揺らぐ、その総仕上げみたいな年になる。こうした状況に対してこちらもどう対抗していくか、どこに対抗軸を置くか、対抗の主体をどうつくるか。武さんがおっしゃったような運動の作り方と主体の作り方っていうのがそこで生きて来るだろうと思います。

 運動の陣形ということでいえば、ぼくらが反TPP闘争の提起したことに、分野別、政党別の違いを超えて運動のプラットホームを作ろうということがあります。それは関生にも参加いただいている「ストップTPP市民アクション」という形で具体化し、いろんな課題を抱えながらも運動の流れを作りだしてきています。いま必要なのはもっと包括的な運動のプラットフォームづくりだろうという気がします。変革のアソシエの時期をどうするかという議論の時、生田さんが同じことを提起されていました。ひとつのセンターを作ってそこで民主的に相互対等に、しかしイニシアティヴをとって運動を作って引っ張っていくっていうふうな組織の作り方がいま問われている。変革のアソシエがプラットフォームを作ったら、ひとつの核になると思うんですけども。
 新年の課題は、この辺にあると思います。

■「共生・協同」をキーワードに労働運動が軸に安倍政権と闘う

 「ソウル宣言」の話が出ましたが、今、競争型社会から共生・協同型社会へと向かう公平・平等を求める運動は中南米や韓国などで急速に発展している。また、日本における関生型運動は労働運動が軸となって社会運動の新しい大きな流れを創るものとして、全国に広がりつつあります。

 新年の中心課題は、アメリカ型グローバリズム・弱肉強食の社会から転換し、「共生・協同」をキーワードに、公平で平等な社会を実現する運動を全国的に広げること。そして、安倍政権の進める消費税増税、規制緩和、解雇自由化、公共投資による借金増、原発の再稼働・輸出を許さず、原発ゼロ化・安保破棄・基地撤去・国家安全保障法反対、特定秘密保護法廃止・「集団的自衛権容認・行使」反対を掲げて闘うことです。
 さらに、武器輸出3原則の緩和など軍事大国化・戦争体制づくりを許さず、オリンピックによる国威発揚にストップをかけ、農漁民・医療・福祉・中小企業を犠牲にするTPP反対の運動などを大きく展開する年にしたい。

 セメントについては、詳しく省きますが、生コン価格の適正化が実現するまでは1円たりとも値上げを認めず、現在の仕組み「セメント値上げ交渉は協同組合を窓口とする」という方針を貫くことが必要で、生コン業界では、今年は、大阪広域協組を「中小企業の、中小企業による、中小企業のための協同組合」に刷新するため、全力を尽くす年にします。もちろん14春闘も、大幅賃上げに加え、日々雇用労働者の本勤化、会館・技術センターの建設、雇用・福祉基金創設などの要求を掲げて団結し、行動します。

■会館建設、新しい学校建設など一大プロジェクト

――昨年は関西生コン産業の60年の節目でした。新年は関生支部結成50年の節目です。

 そうです。それで新年と来年、関生支部50周年記念事業ということで、労組の会館建設、生コン支部50年史の編纂、介護事業(介護住宅など)、新しい学校建設などを柱とした一大プロジェクトを起ち上げました。このために、東日本大震災時には全組合員の春闘の賃上げ1年分を被災地の南三陸町で支援の基金にしましたが、13年の賃上げ分を全組合員が会館建設費用に3年間つぎ込むことを大会で決めました。これは組合員にたくさんのカンパを求めることになりますので、50周年事業の意義を理解する、会館建設が運動と組織を大きく発展させる器をつくるということが理解できれば、それだけで組織の質・レベルが上がるということです。全力を傾注してこうした課題の実現に向かって組合員一丸となって闘います。

――長い時間、ありがとうございました。新年は、「安倍政権打倒」に向かって、大きな力を結集していくため、奮闘したいとおもいます。その突破口は1月19日の沖縄の名護市長選に勝利することにあり、ここから反転攻勢に転じていく闘いの発展を期待して、終わりとします。

大野和興さんの本(Amazonサイト)


(機関紙『コモンズ』第67号6-8面)

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