戦争と性犯罪―キャサリン・J・フィッシャーさんの心と行動の軌跡を追う(1)/大野和興

戦争と性犯罪 なぜこんな理不尽なことが

書評『自由の扉―今日から思いっきり生きていこう』

―キャサリン・ジェーン・フィッシャーさんの心と行動の軌跡を追う―

 5月中旬のテレビ朝日「ニュースステーション」。沖縄の女性レイプ殺人事件の報道の中で、キャサリン・ジェーン・フィッシャーさんの映像が現れた。日本国内で米軍兵士にレイプされ、たたかってきたオーストラリア女性だ。以前、二度ほど取材でお目にかかったことがある。自分も被害者の一人として、米軍の沖縄からの撤退と日米地位協定の廃止を、流ちょうな日本語で訴えていた。決して泣き寝入りしないで、本国アメリカに逃げた犯人を見つけ出し、有罪を勝ち取る彼女のたたかいを通して、軍隊と女性、戦争と性犯罪、そして沖縄を考えてみる。(ジャーナリスト・本紙編集委員)大野和興

自由の扉 7年前の2002年4月、神奈川県横須賀市で一人の女性がレイプされた。犯人は米空母キティーホーク所属の米兵、被害者はオーストラリアの女性だった。
 彼女への加害はなおも続く。駆け込んだ警察署でセカンドレイプに遭うのだ。男性警官によって、受診もできないまま傷ついた心身への配慮もなく、一晩中質問攻めにあう。さらに再現写真撮影という理由で、「レイプの格好がどんなものであったかをすべて教えろ」と迫られる。
 深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥り、生きていくのがつらく、困難になったジェーンさん(仮名)が Victim (被害者)から復活者(Survior)として再生していく心と行動の軌跡を手記と絵でつづった本書は、世界のすべての性犯罪被害者と戦争被害者へのメッセージである。本書は2009年に御茶の水書房から刊行された。この書評は独立系インターネットメディア『日刊ベリタ』2009年5月30日に掲載されたものである。(評者:大野和興)

 Ⅰ 心の奥の奥から紡ぎだされる言葉の美しさと強さ
『自由の扉―今日から思いっきり生きていこう 』

キャサリン・ジェーン・フィッシャーさん

沖縄米兵のレイプ事件一覧表は巻紙で10メートルにもなる
キャサリンさんはこのコピーを常に持ち歩いている
レイバーネット日本『涙のあとは乾く』出版される:ジョニーHさんより)

 とても変わっていて、不思議な、そして美しいつくりの本である。著者ジェーンさんの、心の奥の奥からつむぎだされる言葉。彼女が自ら描く絵が、その言葉によりいっそうの切実さと現実感を添える。カラー印刷の本書は、黒く重く沈む色づかいから始まる。それが次第に明るい色調に変化する。絶望から再生へ、まるで彼女の心の風景のように。

 著者は自らに問い詰める。なぜこんな理不尽なことが。そして彼女はたたかいに立ち上がる。ひとに語りかけ、裁判に訴え。米軍横須賀基地と横須賀警察署に被害届けを出すが、不起訴。しかし加害米兵を相手に提訴した東京地裁では勝訴。しかし犯人は本国に逃亡。現在、非人間的な捜査に対する損害賠償を求めて横須賀警察署を相手に最高裁で争っている。

◆沖縄へ、沖縄へ、私の愛しい沖縄へ

 彼女にとって決定的な転機となったのは沖縄との出会いであった。2008年2月沖縄で中学生の少女が米兵に性暴力を受ける事件が発生した。彼女は集会に呼ばれた。集会の前日、彼女は彫刻家金城実さんの彫刻にふれる。彫刻に刻み付けられた沖縄の人びとの表情に出会い、彼女はその夜スピーチ原稿をすべて書き直す決心をする。

 「一睡もしないで一行一行書いていくうちに、私の頬を涙が幾筋も流れました。日本語を確かめようにも、辞書をもってこなかったので、原稿は私の心から直接生まれたものでした。沖縄、沖縄……。考えつく限りのすべてを書こう、沖縄へ、沖縄へ。私の愛しい沖縄へ。どうしてそんなにひどくあなたを扱えるのか、あなたは何も悪くないのに。どうして米軍は沖縄人を、もう何十年もレイプし殺害し続けるのですか。なぜ私たちは戦争をするのでしょう。なぜ私たちは世界を平和にできないのでしょう。なぜひとびとは何も聞こうとしないのでしょう。なぜこのいまわしいレイプと殺人の数々をやめさせるために何もしないのでしょうか」

◆性犯罪被害者としての提言

 彼女は本書で、24時間体制のレイプ緊急支援センターの設立を軸とする性犯罪の防止と被害者の支援のための提言をまとめ、日本社会と日本政府に公開書簡を出している。日本にこの種の施設がひとつも存在しないことは想像もしていなかった、と彼女は書いている。彼女自身、被害者になって初めて気づいたことだ。オーストラリアにはたくさんの24時間体制のセンターが公的支援を受けて運営されているという。

 そのセンターでは被害者は国籍、民族、言葉などによって一切差別されず、敬意を持って扱われ、プライバシーや自分の意見が尊重されなければならない、と彼女は強調する。
 最後に彼女の提言を列記しておく。

1、24時間体制のレイプ緊急支援センターの設立
2、アメリカ軍人による日本における犯罪防止策と被害者のケア
3、児童性虐待者による子供への接近の禁止
4、性犯罪被害者の立場を理解するための警察官の研修
5、被害者パッシングをやめること-ジャーナリズムの責任-
6、性犯罪に理解について、社会全体に必要な教育と情報
7、裁判所での性犯罪被害者の権利の向上
8、性犯罪の再発防止の取り組みの推進
9、日本政府は、国連による日本人の人権改善のための勧告を受け入れること

※次回「Ⅱ 絶望から再生へ―フィッシャーさんの足取り」に続く

◇参考書籍(Amazon書店へ)
『自由の扉―今日から思いっきり生きていこう』(ジェーン(仮名))
『涙のあとは乾く』(キャサリン・ジェーン・フィッシャー)

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行動予定

10月
21
13:30 変えよう!日本と世界!第12回反戦... @ 円山公園音楽堂
変えよう!日本と世界!第12回反戦... @ 円山公園音楽堂
10月 21 @ 13:30 – 17:00
変えよう!日本と世界!第12回反戦・反貧困・反差別共同行動in京都 稲嶺進さん・雨宮処凛さん 他 @ 円山公園音楽堂 | 京都市 | 京都府 | 日本
9条改憲阻止!東アジアの平和を妨害し、 政治を私物化する安倍政権を倒そう! ■ 日時:2018年10月21日(日)13:00開場 13:30~   *雨天決行・集会後デモ ■ 場所:京都円山公園野外音楽堂 ■ 講演:  アベノミクスの失敗と貧困/雨宮処凛(評論家)  沖縄辺野古への米軍新基地建設許すな  /稲嶺進(前名護市長・「オール沖縄」共同代表)   安次富 浩(沖縄/名護・ヘリ基地反対協共同代表) ■ 歌:趙 博/川口真由美/よしだよしこ ■ 主催:反戦・反貧困・反差別共同行動In京都  連絡TEL090-5166-1251(寺田)
10月
27
18:30 パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか
パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか
10月 27 @ 18:30 – 20:30
パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか | 大阪市 | 大阪府 | 日本
■ 講師:役重善洋(パレスチナの平和を考える会) ■ 会場:エルおおさか(大阪市中央区北浜東3−14)  http://www.l-osaka.or.jp/pages/access.html ■ 第1回 米国大使館エルサレム移転と帰還大行進の歴史的意味  2018年9月29日(土)18:30~20:30  会場:エルおおさか701号室(定員54) ■ 第2回 ジェンタイル・シオニズムとイスラエル国家  10月13日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第3回 中東和平とオスロ合意  10月27日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第4回 “反ユダヤ主義”をめぐる議論  11月17日(土) 18:30~20:30  会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第5回 日本とパレスチナ問題、BDS運動の経過と課題  11月24日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ***** ■ 参加費:毎回¥1000(割引希望の方は応相談)  ☆通し参加を申し込まれた方は第2回以降各¥800 ■ 主催:パレスチナ問題連続学習会実行委員会  賛同団体:ATTAC関西グループ/関西共同行動/パレスチナの平和を考える会  連絡TEL090-42980-3952(喜多幡)
11月
17
18:30 パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか
パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか
11月 17 @ 18:30 – 20:30
パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか | 大阪市 | 大阪府 | 日本
■ 講師:役重善洋(パレスチナの平和を考える会) ■ 会場:エルおおさか(大阪市中央区北浜東3−14)  http://www.l-osaka.or.jp/pages/access.html ■ 第1回 米国大使館エルサレム移転と帰還大行進の歴史的意味  2018年9月29日(土)18:30~20:30  会場:エルおおさか701号室(定員54) ■ 第2回 ジェンタイル・シオニズムとイスラエル国家  10月13日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第3回 中東和平とオスロ合意  10月27日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第4回 “反ユダヤ主義”をめぐる議論  11月17日(土) 18:30~20:30  会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第5回 日本とパレスチナ問題、BDS運動の経過と課題  11月24日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ***** ■ 参加費:毎回¥1000(割引希望の方は応相談)  ☆通し参加を申し込まれた方は第2回以降各¥800 ■ 主催:パレスチナ問題連続学習会実行委員会  賛同団体:ATTAC関西グループ/関西共同行動/パレスチナの平和を考える会  連絡TEL090-42980-3952(喜多幡)
11月
24
18:30 パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか
パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか
11月 24 @ 18:30 – 20:30
パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか | 大阪市 | 大阪府 | 日本
■ 講師:役重善洋(パレスチナの平和を考える会) ■ 会場:エルおおさか(大阪市中央区北浜東3−14)  http://www.l-osaka.or.jp/pages/access.html ■ 第1回 米国大使館エルサレム移転と帰還大行進の歴史的意味  2018年9月29日(土)18:30~20:30  会場:エルおおさか701号室(定員54) ■ 第2回 ジェンタイル・シオニズムとイスラエル国家  10月13日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第3回 中東和平とオスロ合意  10月27日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第4回 “反ユダヤ主義”をめぐる議論  11月17日(土) 18:30~20:30  会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第5回 日本とパレスチナ問題、BDS運動の経過と課題  11月24日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ***** ■ 参加費:毎回¥1000(割引希望の方は応相談)  ☆通し参加を申し込まれた方は第2回以降各¥800 ■ 主催:パレスチナ問題連続学習会実行委員会  賛同団体:ATTAC関西グループ/関西共同行動/パレスチナの平和を考える会  連絡TEL090-42980-3952(喜多幡)
12月
3
19:00 元陸自レンジャー隊員・井筒高雄さ... @ 元町映画館
元陸自レンジャー隊員・井筒高雄さ... @ 元町映画館
12月 3 @ 19:00 – 21:00
元陸自レンジャー隊員・井筒高雄さん講演会「元自衛官だからこそ語る 自衛隊を憲法に明記してはならない理由」/神戸 @ 元町映画館 | 神戸市 | 兵庫県 | 日本
元陸自レンジャー隊員・井筒高雄さん講演会 「元自衛官だからこそ語る 自衛隊を憲法に明記してはならない理由」 ■ 日 時:2018年12月3日(月)19:00~21:00(開場18:30) ■ 会 場:元町映画館2Fイベントルーム  〒650-0022神戸市中央区元町通4丁目1-12  https://www.motoei.com/access.html ■ 講 師 井筒高雄さん(元陸自レンジャー隊員) ■ 参加費:1000円   ※お申込みなしでどなたでもご参加できますが人数把握のためご連絡くださればありがたいです。  メール:civilesocietyforum@gmail.com まで。 ■ 主 催:市民社会フォーラム  http://shiminshakai.net/post/4784 ■ ご案内  安倍首相は9月3日、防衛省の自衛隊高級幹部会同での訓示で、「全ての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えるのは、今を生きる政治家の責任だ。私はその責任をしっかり果たしていく決意だ」と述べ、憲法に自衛隊の存在を明記する改正に取り組む考えを改めて示しました。  10月から12月まで開会予定の通常国会でも、安倍首相は憲法改正の自民党案を提出し、早期の発議を目指す方針を明らかにしています。  はたして、自衛隊を憲法9条に明記すれば、日本の平和を保障することになるのか? 9条を現実に合わせて現状追認するだけのことなのでしょうか?  そして、有事があれば命がけで日本を守る自衛官たちも、憲法に自衛隊を明記することを望んでいるのでしょうか?  元自衛官の井筒高雄さんに、改憲発議がされようとする今、自衛隊を憲法に明記することの問題点についてお話しいただきます。 井筒高雄(いづつたかお)さん 1969年、東京都生まれ。 88年、陸上自衛隊第31普通科連隊に入隊。91年にレンジャー隊員に。 92年にPKO協力法が成立すると、武器を持っての海外派遣は容認できないとして翌93年に依願退職。 大阪経済法科大学卒業後、2002年から兵庫県加古川市議を2期務める。 元自衛官の立場から戦争のリアル、コスト、PTSD などリスクを 伝える講演活動を行う。 現在、ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン(VFP) 共同代表。 共著に『安保法制の落とし穴』(ビジネス社)、単著に『自衛隊はみんなを愛している』(青志社)など

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