連載(寄稿)(その85)
協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史〇58

協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史 近畿生コン関連協同組合連合会専務理事 増田幸伸
連載第85回

丸山茂樹さん

丸山茂樹 参加型システム研究所・客員研究員

 前号の熊沢論文に続いて、関西地区生コン支部(関生支部)50年誌での丸山茂樹参加型システム研究所・客員研究員の論考に言及する。

 ところで、2013年11月、ソウル市で国際社会的経済フォーラム(GSEF)2013が開催され、宣言が発せられた。そして、14年11月、同じくソウル市で国際社会的経済協議体創立総会&記念フォーラム2014が開催され、憲章が採択された
 ソウル宣言では、世界の経済危機の要因が、市場原理主義や規制のない金融化にあり、結果として貧富の格差や社会的排除、生態系の破壊がもたらされたとし、この問題解決の希望として、社会的経済(協同組合、NPO、非営利企業、地方政府等)の発展があるとした。
 そして、経済や社会の在り方はグローバルに関連しているので、社会的経済もグローバルなネットワークをめざさなければならないとした。GSEFの創立総会と憲章が採択された所以である。

 そこで、日本でも14年6月に「ソウル宣言の会」(呼びかけ‐社会的企業・生協・事業協同組合・研究所・学者等)が設立され、会として11月の日本でのプレフォーラムの開催と、同月のソウル市GSEF2014に参加した。関生支部をはじめ近畿生コン関連協同組合連合会などが名を連ねた。 このGSEFの意義を日本に積極的に紹介し、GSEFを推進する一員として発言しているのが丸山である。
 ちなみに、国連は世界の貧困削減、仕事の創出や社会的統合に果たす協同組合の役割に期待している。そこで、協同組合の認知度を高め、協同組合の活用を推進するために、2012年を国際協同組合年とし、様々な取組みを展開し、各国にも取組みを促した。

■韓国の試み

GSEF2014

GSEF2014

 GSEFがソウル市で産声を上げた理由がある。大韓民国(韓国)では、協同組合基本法が2012 年1月公布、同年12月施行された。

 それまでの韓国の協同組合法制は、日本と同じように特別法形式で、個別法のみであった。行政の産業政策上の必要から、農業協同組合法(農協)、水産業協同組合法(水協)、山林組合法(山林組合)、消費者生活協同組合法(生協)、信用協同組合法(信協)、中小企業協同組合法(中小企業協同組合)など8つの法律が制定されている。
 基本法成立前の韓国国内には、労働・福祉・教育・育児・住宅・貧困など社会福祉サービス関連において、8千の事業体が協同組合方式で運営されていたが、法制上は社団法人・個人事業者・株式会社などの形態で事業せざるを得なかった。この事情は、日本も同じ。

 韓国では、1997年のアジア通貨危機を契機に、協同組合の価値が見直された。現行の制約的な協同組合法に対し、もっと設立を容易にすることを含め、特別法ではなく一貫性をもって発展させることのできる基本法が必要だとの議論が盛んになった。
2014グローバル社会的経済協議会の創立総会&記念フォーラム(GSEF2014)

パク・ウォンスン ソウル市長

 この議論が本格化したのは、2008年以降の世界金融恐慌下であった。世界的に、協同組合が経済危機に対し対応能力が高く、低成長時代にあっても新たな雇用を創出する能力が認められた。日本では、大企業による経済成長政策の焼き直しであるアベノミクスが選択されたが、韓国では与野党とも基本法を推進した。

 世界各国では、ドイツ・スペイン・スウェーデンなどの多くの国で、協同組合全体を規定する共通法としての単一協同組合法を有し、フランスやロシア、台湾などは、今回韓国と同様、共通法と個別法が併存している。
アントニオ・グラムシ

アントニオ・グラムシ

 韓国の基本法では、5人以上が集まれば、協同組合が設立できるようになった。また、非営利目的の社会的協同組合など、多様な協同組合が誕生した。こうした国民的コンセンサスの上に、1千万都市であるソウル市で、より革新的なパク・ウォンスン市長の誕生によって、実践的な社会的経済の発展がみられたし、世界への呼びかけも実現できた。

 さて、丸山はパク・ウォンスンやチョ・ヒヨン(教育監)などのソウル市の指導者たちは、1980年代の学生運動以来の盟友であり、現在のソウル市の新しい政策と実践を支えているとしている。
カール・ポランニー

カール・ポランニー


 韓国の学生運動は、朝鮮半島の南北分断下での軍事独裁政権と闘い続けてきた歴史を持つ。マルクス・レーニン主義も大きな力を有していたが、彼らの共通項は、二人の思想家、アントニオ・グラムシ(1891―1937。イタリアの革命家・思想家。「獄中ノート」)とカール・ポランニー(1886―19649。オーストリア=ハンガリー帝国時代のウィーン市生まれ。イギリス、カナダに亡命。経済学者。経済人類学に大きな影響を与えた。「大転換」「人間の経済」)にあるとした。(次号につづく

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