アン・ライトさん(元米軍大佐・外交官)の講演 ‐ 6・12集会より(2)

2.アン・ライトさん アメリカからの特別ゲスト講演(要旨)
米陸軍退役大佐・元外交官・平和のための退役軍人の会

アン・ライトさん 第7期沖縄意見広告・東京集会 私は29年間米陸軍に勤め、大佐で退役した後、外交官としてニカラグア、グレナダ、ソマリア、ウズベキスタン、キルギス、シエラレオネ、ミクロネシア、アフガン、モンゴルの米国大使館に勤務していました。
 しかし2003年3月、ブッシュ政権のイラク戦争に反対して辞表を提出しました。現在は平和のための退役軍人の会、コードピープルリメンバーフォーピース、平和と正義のための連合など様々な平和団体で活動しています。
 さきほど上原さんが私を「平和のための外交官」と紹介しましたが、それは大変うれしいことばです。なぜなら多くの外交官は残念ながら平和のためには仕事をしていないからです。

■「問題を暴力で解決する」訓練を受ける兵士たち

 私はまず沖縄で起きた事件について、米軍に29年間在籍した者として謝罪しなければなりません。私は沖縄に4日間ほど滞在中、基地・軍隊をゆるさない行動する女たちの会の高里鈴代さんに沖縄を案内していただきましたが、その団体は沖縄での米軍による暴力を記録してきて、現在それが28ページになっています。私は沖縄の女性たちとともに、20歳の被害者が発見された現場にも行き、追悼いたしました。

映画『ONE SHOT ONE KILL 兵士になるということ』予告編
人は人を殺せるようには、できていない。では、どうすれば、普通の若者が
戦場で人を殺せるようになるのか?サウスカロライナ州パリスアイランド。
米海兵隊ブートキャンプ、12週間の新兵訓練のドキュメント。公式サイト


 軍隊の任務は国際的紛争や対立を暴力を使って解決することです。軍人はそのために暴力に対して暴力で返す訓練を受けています。
 米軍による暴力は軍隊の中だけでなく個人の私生活の中でも起こっています。家族や友だち、他人との関係の中でも怒り、憎しみ、優越感などを暴力で解決しようとします。

 本日は軍隊の暴力の被害者で、力強くたたかってきたキャサリン・ジェーン・フィッシャーさんもおいでになっています。キャサリンさんは、最近日本語の本を出版されましたが、その中では米軍だけでなく、日本の警察の暴力についても書いています。

 米軍の暴力は基地の中や外に住んでいる家族の家庭内暴力も多いです。軍関係者による軍関係者への暴力も多く、統計によれば平均6年の勤務期間に3人に1人の女性が暴力を受けています。米国防総省の統計によると軍隊内の性暴力事件は毎年2万件も発生しています。またその起訴率が非常に低いのも特徴です。起こった事件のうちたった7%しか起訴されていません。

■環境破壊と犯罪は基地を撤去するまでなくならない

20130725基地環境問題 10日ほど前にオバマ大統領が日本を訪問した時、最近の米軍元兵士による殺人について大変残念と発言しましたが、70年にもわたる米軍による沖縄占領について何の謝罪のことばもありませんでした。また、最近発表された基地による環境破壊についての8500ページにもわたる報告書に関しても何も言及しませんでした。その報告書には生物・化学、そして兵士による環境破壊について詳細に書かれています。その環境破壊の実態は日本政府にさえ報告されていません。

 悲劇的なことですが、70年間の在沖米軍の歴史を見ると、米軍が沖縄に存在するかぎり、このような犯罪行為は続きます。沖縄の女性や子どもに起きている被害を止めるためにも、基地による環境破壊を止めるためにも、基地そのものを撤去しなければなりません。
 この背景には日米地位協定があります。大変不平等なこの協定によって米軍は報告の義務がありません。また基地の中での犯罪行為についても報告の義務がありません。この地位協定によって基地の中でどれだけ多くの犯罪が行われているかわかりません。いまこそ日米地位協定見直し交渉をするべき時です。そして米軍に責任をとってもらうということです。

 数日前、辺野古と大浦湾を見ましたが、軍用施設のひとつもない美しい海でした。その光景に涙が止まりませんでした。2015年12月にも訪問しましたが、その時には大浦湾にはたくさんの軍用施設(編集部注:正確には埋立て工事設備)がたくさんあって悲しい思いをしました。
 沖縄の市民の皆さん、そして選挙で選ばれた皆さんが成し遂げた辺野古での一時的な基地建設差し止めは前例がない事です。沖縄の皆さんと支援者の皆さんが基地建設阻止のために日米政府に立ち向かっている事は素晴らしいことです。
韓国済州島・江汀村の抵抗運動

韓国済州島・江汀村の抵抗運動


 東北アジアでは沖縄の他にもうひとつ、韓国済州島の江汀(カンジョン)村では海軍の巨大な基地建設を阻止するための活動を8年間続けてきましたが、残念ながら止めることはできませんでした。その大きな理由のひとつは政府が建設を推進したからです。政府は建設に対する妨害だとして116人の市民と5つの村の団体を損害賠償請求で訴えました。

■世界の反基地運動と連帯して闘おう

平和のための退役軍人会(アメリカ)Veterans For Peace

アメリカ・平和のための退役軍人会 Veterans For Peace

 次に沖縄基地撤去のための国際的連帯運動をどう作っていくかについて一緒に考えていきたいと思います。米軍基地が沖縄の2割もの土地を占領していることを考えると、これは国際的にもこの問題を拡げていかなければならない問題だと考えています。

 米軍は全世界に800もの基地を持っています。最も多い順にドイツに174箇所、日本に113箇所、韓国に83箇所あります。
 アメリカ以外に国外に基地を持つ国は8カ国ですが、それらの国々の基地を全部合わせても30箇所に過ぎません。イギリスは7箇所、フランスは5箇所、そしてロシアは8箇所持っています。

ドイツ・ラムスタイン米空軍基地反対運動

ドイツ・ラムスタイン米空軍基地反対運動

 これらのほぼ全ての米軍基地には、それに対抗してたたかう市民運動があります。そしてこれらの市民たちこそが沖縄のたたかう市民の仲間なのです。
 私は国際的に様々な運動団体と一緒に活動しています。それらの団体は沖縄のたたかいに共感を持ち、自分たちにどのような連帯活動ができるかを考えています。そうした団体が例えば「ノーベース・オキナワ」(沖縄基地反対)というメッセージをメルマガやニュースレターなどでインターネットを通して発しようとしています。もうひとつ、海外から沖縄にもっともっと代表団を送ることです。

 全世界の800の米軍基地をぜひ閉鎖させましょう。
 海外で活動している団体を紹介します。私たちはフェイスブックで連絡しあっています。

イタリア・NoMUOS運動

イタリア・NoMUOS運動

  • 平和のための退役軍人会(アメリカ)。
    アンさんも参加している。
  • オーストラリア反基地キャンペーン連合
  • ドイツ懲役拒否の団体
  • ドイツ・ラムスタイン米空軍基地反対運動
  • ストップ・ザ・ウォー(イギリス)。
  • 済州島の市民団体
    何度も沖縄に代表団を派遣している。
  • NoMUOS。イタリア・シチリア島の団体。京都のXバンドレーダーに似ている米軍レーダー基地への反対運動。
  • 創造的な非暴力のための声。済州島やアフガニスタン、パキスタンに代表を派遣している。
  • 第4回平和・海外基地廃止のための国際セミナー(キューバ)。113年前からの古いグァンタナモ米海軍基地がある。
  • スコットランドの原子力潜水艦に対する非常に強い反対運動
  • ピースボート。日本の世界の現場に船で連れていく運動。
  • イタリアのピチェンツァで建設されようとしている基地に反対する運動
  • アイルランド、イランやアフガンへの出兵にシャノン空港を使わせる事に反対する運動
  • アメリカ、ネバダ砂漠の核実験現場を見学し核兵器に反対する運動
  • 本当の安全保障のための女性の会(アメリカ)。
  • スクールオブウォッチ(アメリカ)。子供たちに米軍から軍事訓練を受けさせるのをやめさせる運動
  • パッチェエーベネ。非暴力で戦争に反対するキリスト教の団体。
  • DMZハワイ

3.質疑応答 会場からの質問に答えて

 休憩のあと、参加者からあらかじめ配布されていた質問用紙でのたくさんの質問が提出された。一部を紹介する。

【質問】沖縄海兵隊の新人教育が沖縄にとって屈辱的な内容であるのはなぜなのか。ドイツなどの基地でもそうなのか。
ジョン・ミッチェルさんの特ダネを紹介する琉球新報(5/26)

ジョン・ミッチェルさんの取材
を紹介する琉球新報(5/26)

【アンさん】マニュアルになっているという事は上層部からそのような意識であることを示している。基地が沖縄に存在する限りこのような問題は続く。全ての沖縄基地を無くす事が解決の道です。
【安次冨さん】これを暴露したのはジョン・ミッチェルさんでした。これを読んで「沖縄人はゆすりたかりの名人でゴーヤも作れない」と言った元沖縄総領事のケヴィン・メアを思い出しました。沖縄は彼らにとって「植民地」なんです。だからヨーロッパに派遣される時のマニュアルは違うと思います。

【質問】8500ページの沖縄環境破壊に関する資料はどうやって入手できるか。
【アンさん】その資料もジョン・ミッチェルさんが情報公開法を使って手に入れたものです。本当に素晴らしいジャーナリストです。彼はこのページを全部スキャンして彼のホームページで公開しています。彼が記事を書いている『ジャパン・タイムズ』でも公開されています。

【質問】全世界に800もの基地があることについてアメリカ人はどう考えているのか
【アンさん】ほとんどのアメリカ人は海外に800もの米軍基地があることや皆さんのお金で米軍基地を維持しているという事実を知りません。

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