キャサリン・J・フィッシャーさんの心と行動の軌跡を追う(2)/大野和興

(前号からのつづき)

 Ⅱ 絶望から再生へ
―フィッシャーさんの足取り
キャサリン・ジェーン・フィッシャーさん 第7期沖縄意見広告・東京集会にて

キャサリン・ジェーン・フィッシャーさん 沖縄意見広告・東京集会にて


 フィッシャーさんはずっとジェーンという仮名で通してきた。フィッシャーと本名を名乗ったのはつい数年前のことである。本名を名乗るところまでこぎつけた彼女のたたかいの足取りを、アジア女性資料センターの資料を中心に追った。

性暴力被害に対する司法対応

 日本の検察は2002年 7月に不起訴を決定し、米軍の軍法会議もこの件を扱わないと決定したため、事件は、被害者と加害者間の個人的な問題ということにされてしった。そこでジェーンさんは、2002年8月に加害米兵に対する民事訴訟を起こし、2005年に勝訴判決を勝ち取った。しかし米軍が公判中に加害者を除隊・帰国 させてしまい、居場所がわからなくなってしまったため、実際に補償金は支払われなかった。 

神奈川県警に対する国家賠償請求裁判

 ジェーンさんは、さらに、神奈川県警の不適切で屈辱的な捜査によって受けた苦痛に対し、国家賠償請求を起こした。この裁判は、2009年7月16日に最高裁で敗訴が確定したが、警察による性暴力の捜査のあり方に対する重要な問題提起となった。

米法廷で勝利判決

 ジェーンさんは処罰を免れて本国に帰還した加害者の行方を自力でつきとめ、提訴、2013年10月に勝訴判決をかちとった。裁判では原告がジェーンさんとの民事訴訟中であったにもかかわらず、在日米軍の弁護士の「とにかく日本を出ろ」という指示で出国したことも明らかにされた。
 日米地位協定は、事件・事故を起こした米兵を日本が訴追し裁く権利を制限している。さらに、日本が第一次裁判権を有するケースであっても、日本の司法当局が積極的に訴追をしないという密約が交わされていたことも明らかになっている。

白いシーツと巻紙キャサリン・ジェーン・フィッシャーさん

 沖縄が米国の占領下に置かれて以来の米兵によるレイプを記録した表がある。それはシーツに書かれ、全部で4 枚。「なぜシーツを使ったのかというと、こんなにレイプがいっぱいあるのに、日本政府の人間はよく寝られるなって思っているんです」とキャサリンさんは語る。
 問題の背景には不平等な日米地位協定の問題がある。「彼らはこれらの事件を全部知っているのに、何もしないなんて」。このレイプ事件の一覧は、警察に報告されているもの、報告されていないものも含めてまとめられており、「紙にすると、巻き紙で10メートルほどにもなる。キャサリンさんは、この一覧のコピーをいつも持ち歩いている。

そして辺野古へ

 フィッシャーさんは自身の経験をつづった『I am Catherine Jane: The True Story of One Woman’s Quest for Justice』をオーストラリアで出版、その翻訳が2015年5月に講談社から『涙のあとは乾く』という邦題で出版された。涙のあとは乾く講談社
レイバーネットによると、ジェーンさんは1か月に2回は、辺野古に行きカヌーに乗り、海上保安庁の監視船の前で海に飛び込み基地工事に反対抗議をしている。

◇参考書籍(Amazon書店へ)
『自由の扉―今日から思いっきり生きていこう』
                  (ジェーン(仮名))
『涙のあとは乾く』(キャサリン・ジェーン・フィッシャー)


大野和興さん大野和興
1940年生まれ、ジャーナリスト(農業・食料問題)。現在、ジャーナリスト活動のかたわら、アジア農民交流センター・脱WTO/FTA草の根キャンペーン世話人、国際協力NGO・日本国際ボランティアセンター理事。日本とアジアの村歩きを通して、現場での農民との共同作業と発信をこころがけている。(大野和興さんの本(Amazon書店)

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