大資本・大企業の論理に代わる
オルタナティブとしての協同組合運動を語る


『関西生コン産業60年の歩み」出版記念シンポジウム


主催:協同センター・東京 
協賛:中小企業組合総合研究所/パルシステム生協連合会/変革のアソシエ/
   仙台・羅須地人協会/社会評論社

 2013年11月20日、東京の連合会館にて、『関西生コン産業60年の歩み』(中小企業組合総合研究所発行)の出版記念会が、多彩な発起人・呼びかけ人の下で開催されました。ここに、その発言の要旨など一部を紹介します。見出し、発言要旨などは編集部の責任でまとめています。なお出版会の全貌については、別途に「報告集」が発行される予定です。末尾の資料「ソウル宣言」は丸山茂樹さんのご了解を得て掲載させていただいています。(コモンズ編集部)


開会の挨拶から



東京の各種協同組合と関西の事業協同組合、この組み合わせに注目を
下山 保(協同センター・東京代表)

『関西生コン産業60年の歩み」出版記念シンポジウム、下山保さん挨拶 私の方からいくつか、申し上げたいと思います。1点目は、この60年史の本の言わばエキスだろうと思いますが、労働界の暴れん坊の武さんの関西生コンの労働組合が事業協同組合に注目をして、労働組合と協同組合が提携をして大資本と闘って成果を挙げてきた歴史だと私は読みました。戦前、日本に労働運動、協同組合運動が出来たての頃は、(両者は)最初から兄弟だった。しかしいつのまにかこの兄弟は離ればなれになり、労働運動は労働運動、協同組合は協同組合運動という風になってしまいました。それが提携したり、連帯するということはほとんど現在ない。関西生コンの労働組合が、協同組合組織を作り、提携してきた、そういう事例は日本にあまりありません。

 2点目は、今日は生活協同組合から、2つの生協が参加しています。パルシステムと生活クラブの生協。この2つは、生協の中で反主流派であったり、異端派生協であったりということで、この生協の理事長、前理事長が今日は発言します。それが関西の事業協同組合の方と、あるいは今日のシンポジウム参加者が、どんなことを協同組合というキーワードで話されるのかを注目してください。

 3点目は、シンポ発言者の丸山茂樹さんから、『グローバル社会的経済ポータブル2013 韓国ソウル』の中の≪ソウル宣言≫をいただきましたが、これが素晴らしいもので、丸山さんからそのお話しがあると思います。もう1点は、この集まりの呼びかけ人の何人かで、良い人材をつくって良い社会をつくる発想で、新しい人材育成の学校、学習の場をと4年間にわたって論議してきました。今年の10月に仙台で大内秀明先生らの仙台・羅須地人協会がスタートし、2年後には関西で関生中心に衝撃的なスタートをする、東京でも始まります。その辺のことが協同組合運動をベースにした新しい社会運動の新しい芽になっていくと思います。そんなことに注目いただきながらシンポジウムを聞いていただきたい。

出版の報告



『共生・協同』をキーワードに中小企業協同組合と労働組合が連携して大企業と闘う
武 建一(中小企業組合総合研究所代表理事、連帯労組関西地区生コン支部委員長)

『関西生コン産業60年の歩み」出版記念シンポジウム、武建一さん挨拶 今日は各界代表の皆さん、労働組合の代表、生活協同組合、学者、文化人の方、私どもが作成しました『60年の歩み』の出版記念会を開いていただき誠にありがとうございます。生コン支部と言いますと、普通の労働組合とは違って特別じゃないかと見られがちですが、この60年史をお読みいただき決して特殊な存在ではないことをお分かり頂ければ、それだけでもこれを出した意味があると思うところです。

 さて、生コンは関西では1953年スタートし丁度60年になります。近畿二府四県の生コンの製造業、ミキサーの輸送協同組合、粉を運んでいるバラセメントの協同組合、ポンプ車の協同組合などが全部寄りまして、現在327社が労働組合と定期的に政策懇談会をしています。中小企業が個別に対応したのでは生き延びていけないと、中小企業が結束する。それには競争社会に対抗して「共生・協同」をキーワードにして、大企業の収奪に対して共に闘うために、団結し、行動を起こそうではないかと。そのための知的レベルアップのためにシンポジウムや学習会を労使が一緒にやっております。1ヶ月に一度『提言』という新聞を全国に8000部ほど、今の弱肉強食の市場原理主義や情勢に対する認識、経済や産業、社会構造を民主化する観点に立った新聞を発行している。

 どうして〝関生〟が中小企業と連携をしてこういう運動ができたか。1つ目の条件は情勢です。1960年代までは中小企業といえどもセメントメーカーの意向を受けて労働組合潰しをやる。今日お集まりの生協の中で労働者は沢山働いていると思うのですが、生協の中で労働者が結集しますと、どうも労働組合は権利主張ばかりして扱いにくいと組合を認めたがらない傾向もあるのではないか。

 私が言いたいのは、労働組合がしっかりしなければ労使が連携して大企業の収奪と闘うことはただ言っているに過ぎない。それは60年代の中小企業をはじめとするセメントメーカーの組合潰しに対して、我々は統一要求、統一交渉、統一行動、統一妥結を中心におき闘い、いま労使両方が200人寄って集団交渉している。単なる企業内の問題解決をするのみならず、業界全体のあり方をどう変えていくのかということを立ち上げたのが1973年。何故そうなったかと言いますと、生コンの場合は70年代に中小企業にしずくも落とさないという厳しい大企業の収奪政策の中で、闘う労働組合と問題意識を共有できる中小企業との連携が始まっている。ですから情勢の変化、その認識を共有できたのが連携の始まりで、集団交渉で賃上げ、労働条件の改善、産業構造を追及し始めたのが74年以降。以来、一貫して大企業の収奪に対してどう結束し闘っていくのかと。それには大企業と対等に取引するためには事業協同組合に結集しなければいけない。

 全国に事業協同組合は3万8000くらいあるが、その中で労使が連携して大企業の収奪と闘っているのは、たぶん関西生コンぐらいではないか。置かれている条件、業界、労働組合も厳しい。この厳しい状況が共同してやっていける2つ目の条件を作っている。3つ目の条件は、自動的に連携なんて始まっていかない。それは労働組合が主導性を発揮する。そして中小企業のリーダーたる人、人格的にも信頼でき、お金にガツガツせず自分の持っている商権を厳しい人たちに配分してでも一緒にやろうという、そういう素晴らしいリーダーと労働組合が連携して運動を拡げてきた。

 全国の中小企業、事業数で言えば99・7%が中小企業と言われており、その99・7%の中小企業のうち、そこで働いている人たちが70%以上と言われ4300万人を超えている。しかもその中小企業の70%は赤字。お互いに苦しい思いをしている者同士が結束していける客観的な条件はある。

 ところがそれをしっかりと束ねていくことが中々難しい。その原因の一つは、中小企業は法律を有効に活用することができるのに、それを理解していない人たちが多い。もう一つ、決定的なことは、中小企業が寄って大企業と対等取引と言い出すと、荷主から取引停止され、そういう恐怖がある。ですから簡単には中小企業はのらない。しかし、追い詰められて行きますと自助だけではダメで、共助の力、これを元にして公助。自治体からは金を散らす力にもなる。そして大企業に対する対等取引になっていきます。

 今、情勢がそういうことを刻々と我々に迫ってきているのではないか。安倍内閣は終わっている市場原理主義の方向へ傾斜し、ワーキングプアとか非正規労働者、格差社会がどんどん社会に蔓延している。そういう条件ですから、丸山先生からお話があるかと思いますが、韓国と同じように日本も一気に「関生型」と言われるものが、全国に広がる可能性をもっている。この会が、全国に向けて中小企業を結束し、労働組合と連携した協同組合運動に大きな弾みがつく、そういうきっかけになることを期待いたします。

第1部 シンポジウムでの発言より



「シンポジウムを始めるに当たって」
司会 上原公子(元国立市長)

『関西生コン産業60年の歩み」出版記念シンポジウム、司会 上原公子さん(元国立市長) 私も国立という小さな地域で生活クラブという組織をつくり、初代の委員長をやり消費者の立場から協同組合と社会貢献ということを考えてきたわけです。
武さんのお話しを聞きますと、改めて弱者たちが協同して大企業に向かっていくために、中小企業経営者と一緒になり自分たちの事業の質を高めていく、そのために学習し、もう一歩進んで社会貢献をするために、自分たちがどういう事業が展開できるか、役割ができるかと進化してきたこの「関西生コンの60年の歩み」だったという気がいたします。
3・11後、大きな被災地を私たちは目の当たりにしてどうやっていいか分からなかったのですが、関西のこういった活動の一つの象徴として、被災地支援を「協同の力」でやっていこうとしてこられたことも、武さんたち関西生コンの果たした大きな役割だったと思います。それぞれが「協同という力」で今までやってきたことを報告いただき、更に質を高め、社会貢献という役割をするためにどうしたら良いか、それぞれお話しをいただくことにいたします。

価値観の転換と資本主義社会を超えた一つの生活様式としての協同組合を
若森資朗(パルシステム生協連合会前理事長)

『関西生コン産業60年の歩み」出版記念シンポジウム、若森資朗さん まず、武さんのお話しのように、中心力を持って闘いをされてきたことに、本当に凄いなと思い、私たちは学んでいかなくてはならないと改めて思っているところです。

 私は、生協活動を40年くらいやってきたのですが、10年くらい前までは台所から社会や政治が見えるという立場で、農薬、添加物、食糧問題、環境問題、農業のあり方などを突き詰めていけば、現実の社会や政治の問題、何が問題なのかと分かり、生協
組合員がそれぞれ社会や政治を変える力になってくると信じてずっと取り組んできた。生協組織は国から補助金を貰っているわけでもなく、事業活動を含めて自立した組織として存在している。これは非常にフェアな形で世の中に問題をアピールできる立場なので、その最大限の武器をもう一度世の中を変える力にもっていくことが、いま生協の中で問われているのではないか。でないと、生協は事業的には大きくなったが、何をしているんだと言われかねない。

 原発問題は以前からパルシステムは反原発で六ヶ所(村)の核燃料再処理も生活クラブさんと一緒に反対してきた。今回の3・11福島原発問題が起きた時も活動しており、反TPPもずっと取り組んできている。そういった中で、もう一度生協活動自身を考え、生協自身にもっともっと問題を持ち込み突っ込まないといけないのではないかという認識に立ってきたところです。

 それが今日のシンポのテーマである「オルタナテイブとしての協同組合運動」にかかわるところです。要するに自民党政権は、経済成長さえすればすべて世の中はうまくいく、所得も上がってということで、原発の問題などすべてを解消していく。今
夏、ある人の選挙をやったが、やっぱり国は国家予算を全部使って、人間を懐柔している。要するに資本主義社会の金を儲けるという価値観をみると、やはり協同組合は共助、助け合う、一緒に活動する、その中で僕らは(新しい)価値観を見い出す運動をしっかりこの世の中に定着させていかない限り、今の世の中の転換は無い。そういった価値観転換の運動をあらゆる形で行っていくのが、協同組合に課された問題かと思います。

 もう一つ、協同組合は資本主義社会を超えた一つの生活様式としての協同組合みたいなところまで含めて考えていかないといけないと思っている。そういった実験として、今、南三陸町で地元の木材を利用して家を建てて産業を興そうという運動をやっている。これは関西生コンの人たちとも接点があって一緒にやっている。地域が活性化しない限りダメで、そこに住んでいる人たち20人ぐらい組織して、みんな被災者でお金はないが森林がある、そして労働力がない、大工さんを雇うお金がない。みんなで力を出し合い、労力を提供し、みんなで家を建てていこうという運動です。その中で、一つの新しい共同性なりを発見できたらいいかなと思っていて、そういう運動を色々と協同組合は挑戦していかなくちゃならない。やっぱり協同組合、生協は、自立して労力・お金を出し、事業しながら価値を生み出し、そのことを社会に還元し、社会に問題提起していく。そうしない限り、生協の存在価値はないのではと考えているところです。

川の「上流」にすむ者、「下流」にすむ者が互いを思いやる社会を目指す農業協同組合を
川崎吉己(おきたま農協経営役員、置賜百姓交流会世話人)

『関西生コン産業60年の歩み」出版記念シンポジウム、川崎吉己さん(おきたま農協経営役員、置賜百姓交流会世話人) 私の住んでいる置賜地方は、ちょうどこちらから福島原発は120kmから150kmぐらいにある、そんな雪の深いところから私はやってまいりました。私のおる「おきたま農業協同組合」は非常に大きくなりすぎまして、どこから手を付けていったら良いんだろう、と思うそんな農業協同組合です。いま日本では、専業農家は18%ぐらいで、兼業農家は82%ぐらいですから、その中で「おきたま農協」はまだ正組合員と準組合員は2万9千人ぐらいで組合員の方が多いんですが、全国的には準組合員の方が上回ったという話を聞きました。そういう状況ですから、当然営農よりも生活全般に関わった事業を展開していった。いろんなことを経て、いまTPP問題が出てきました。

 このTPP問題は、実は3、4年前に私が提案した時に、私の農協の代表、その他の人はほとんど知りませんでした。「え、なんだそれ?」と、その程度でした。それが実際自分の身に火の粉が降りかかってくると、右手の拳を挙げてワーワーと騒いでいる。私は百姓をしていますが、地元で、正直言ってJAに対して非常に不信感を持っておりました。4年前まで。「え?農協なんて有っても無くても別にいいんじゃねぇかな」っていう程度で。「なんとかなるんじゃねぇか」程度に思っておりました。そんな奴がいきなり飛び込んでいったわけですから、私自身も面食らいましたけど、向こうも周りも面食らったと思う。ただTPPの問題が出てきた時に、JAがこれを放っておいてしまったら、本当に村が潰れていってしまう。無くなってしまうんだと非常に感じました。これじゃあいけないということで、もう少し真剣に取り組もう、そして事実を伝えよう、と思いながら1人でも多くの仲間を増やしながら意見を上に上げてやるような活動をしている。

 私は原発もTPPも同じだと思う。田舎に原発を押し付け、TPPで村を壊そうとしている。残念ながら私の「おきたま農協」はストップTPPとは言うが、他の農協さんも多くはそうだと思うが、ストップ原発とは言わない。言えないんですよ。農協は、農民というのは、都市に関わっている。原発と食料の生産は絶対相容れないものがある。これはやっぱりストップさせ、NOと叫ばなきゃならない。今は非常に国益ということを言うが、「国益」を間違ってとらえていると思います。国益は一部の輸出業者が儲かる仕組みを作り上げて、大資本の懐を肥やして多くの国民を窮地に追いやることと、私は思う。今日、挙げられた「オルタナティブとしての協同組合運動」というのは、そういう当たり前のことに対して、きちっと言い続けること。そして、地域を積み上げていく、そんなことから始まっていくんじゃないかと私は思っております。

 今後は、私たちJAが地域にどんな貢献ができるかを考えるときに、組合員と共に活動し、組合員と一緒に行動していくこと、組合員の目線で考え、そして言うことはきちんと言う、と最近感じております。都会に住む皆さんも私たちのことを理解していただいて、私たち「上流」に住む者が「下流」に住む者のことを思いやって、互いを思いやれるようなそういう社会を目指していくのが農業協同組合のあるべき姿なんじゃないかなと思います。それなしに農業協同組合というのはあり得ないと思うし、あってはいけないと私は思っております。私はそんな農業協同組合が理想ですけれども、なかなかその理想にはたどり着けません。1人でも声を挙げ、仲間を増やし、手を振り上げ、これから少しずつ活動していきたいと思っております。

消費生活協同組合から生活全般に広がる協同組合運動への転換を
加藤好一(生活クラブ生協連合会会長)

『関西生コン産業60年の歩み」出版記念シンポジウム、加藤好一さん(生活クラブ生協連合会会長) 私どもは、北海道から関西ぐらいまで35万人組合員がいて、事業の柱は2つで、生産と消費に関わる共同購入事業と90年代以降取り組んできた地域福祉に関わる事業です。昨年の国際協同組合年の日本の全国実行委員会代表をされた内橋克人さんが「自覚的消費者」とおっしゃっていて、物の値段が安ければ安いにこしたことはないが、しかしそれはなぜ安いのかを考える消費者を多くしていかないと世の中はまともにならないと。願わくば、我々の生活クラブの共同購入事業はこういう運動でありたいと考えやってきました。そのかいあって、ワーカーズコレクティブと言っているのですが、生活クラブ組合員ではありますが、その組合員が出資をして自分たちの働く場を作る運動を1982年からやってきました。弁当屋、パン屋、現在の中心は地域福祉に関わるものが事業の大半。現在は1万5990人、2010年で総事業高が約148億円と。地域福祉の運動が現在、事業所総数で675箇所。そこで働くニューワーカーズと称する就業者数が1万4400人。そのサービスを利用している登録者が4万7500人。7万人くらいの人がデイサービス、介護、食事サービス、託児とかの関連のサービスを提供させていただいて、総事業高で126億円くらい、共同購入が860億円くらい。今後、市民金融ということで、生協は金融が認められていないが、この辺ももっと上手くやればこういう事業がさらに発展するのかと、そういう意味ではオルタナティブの一つの方向かと考えています。

 協同組合運動の発展を期してということですが、協同組合の経済的社会的位置について、有名な2000年にレードルが書いた「現代経済のもっとも顕著な傾向の一つは、巨大な企業と巨大な政府という2大機構の癒着化傾向である」「市民に残された唯一の別の選択の道は自分たち自身のグループ。特に協同組合を作ることである」とある。私はその通りだと思っている。それを進めるに、1995年に策定をされた協同組合の新原則。これを擁護し実体化させ、発展させることです。生協法見直しに危機感を持っている。会社法準拠という条文が多くなってることが一点ある。農協法がすでにそうされている。特に金融やっている農協は会社法準拠は当たり前になっていて、だからオルタナティブを語る前に足下をどうするんだという課題がある。先ほど川崎さんが「営農から生活」への広がりがみたいな問題提起があり、非常に感銘を受
けましたが私どもの主張と重なる。

 で、持続可能な地域社会への貢献を実現するため、人々の相互の助け合いの力を広げ、消費生活協同組合から生活協同組合への転換を図る、という問題提起をしています。消費というのではちょっと狭すぎる、やはり生活という広がりを全般的に擁護する立場に立った協同組合運動でないといけないと、生意気ですが皆さんに訴えたいところです。また新しい公共推進会議の経験があって、この会議で協同組合はその組織の組合員同士の助け合いで古い公共であって、公益を担うのはNPOであるという機械的な論議があった。私はそれは違う、協同組合も十分に公益的な活動ができ、そもそも初発はそうであった、と言ってひんしゅくをかった。イタリアのデイ型といわれる社会的協同組合の必要性を訴えてきた。

 最後に、韓国基本法の意義について。これはポスト国際協同組合年の活動として、私どもが日本の協同組合の方々に問題提起をさせていただいているが、これは会社法に接近する協同組合を守る意義が一つ。二つは先ほど言った社会的協同組合みたいなものがちゃんと整備され、例えば生協法は1000人いなければ生協になってはいけない、そういう無謀なことを言わない、やりやすい法体系になっている。是非とも日本において、そのようなことを皆さんと一緒に検討させていただき、実現ができないかと思うところです。

雇用労働に代わり、自らが企業の主人公になる協同労働を社会の力に
田嶋康利(日本労働者協同組合連合会事務局長)

『関西生コン産業60年の歩み」出版記念シンポジウム、田嶋康利さん(日本労働者協同組合連合会事務局長) 労働者協同組合(ワーカーズコープ)は、働く人々、市民が共同出資をして事業に経営参画し、人と地域に役立つ仕事を自らおこす協同組合の形で、30数年にわたり活動を進めております。その前史は全日本自由労働組合、全日自労で、初期は失業対策事業の後処理的な仕事で公園の草刈りや清掃等の自治体からの特別な配慮の仕事を中心とする前史から始まり、生協や農協等の協同組合間共同という形での民間ベースで病院の清掃や建物の管理、生協の仕事などを経て、現在一番大きい事業としては2000年に始まった介護保険制度に対応して市民主体のコミュニティ経路を作ろうと、生協や途中の現場や病院清掃で働いている中高年の仲間たちが全国でヘルパー養成講座を開催し、受講生である中高年の女性たちに共同出資経営労働で介護の拠点を地域物資事業所という名称で設立する運動を進めてきました。

 現在、全部で300ヵ所、約100億ぐらいの企業を中心とし、労働者協同組合連合会の事業規模の3分の1は、その介護福祉の事業が占めている。2003年に、全国で地方自治法の改正が行われ、公の施設が市場化、民営化され、指定管理者制度という新しい制度が導入され、子育てや高齢者の施設、障害者の施設、公民館等の約7万施設が民営化、市場化の波に乗るということで、これを営利企業、市場化の波に任せないで私たちのような社会的事業体、協同組合が市民化、社会化していこうと取り組んだ。現在、全国で230の施設、公共を合わせて約300ぐらいの施設の運営をしている。そこで、これまで組織は中高年が多かったが、20代30代の若者が毎年1000人規模で入り、若返りの組織になっている。2008年のリーマンショック以降、元ホームレス、生活保護受給者、アルコール依存症の方たち、傷害があって就労できない方たち、就労困難な若者たちに寄り添いながら仕事の体験を経て共に働く場をこの協同の働き方で働く場を作っている。

 2011年の東日本大震災で私たちも社会や組織のあり方について深く問われました。内橋克人さんの食とエネルギーとケアが循環する地域コミュニティを作るべきだという提唱に挑戦をしていこうと、東北の被災地、いま8つの地域で全国から20代、30代の若者を募って、10数人の若者を全国から被災地に派遣をして自治体の人材派遣事業や、職業訓練の事業に挑戦をし、今では高齢者の介護や子育ての施設、そして、産直センター等をいま設立の準備に向かって進めている。長引く不況で大量に増えている失業者や就労困難者の方たちにそれを支援するという段階ではなくて、共に仕事を作る仲間として彼らに訴えて、協同労働という働き方で仕事場を作っていくことです。

 生活クラブ生協の加藤さんも言いましたが、この国では協同組合を自分たちで設立をすることが中々出来ない。私たちも10数年来、協同労働の協同組合を社会の制度にする法律を作る運動を進めている。働く者や市民が自分たちの生活する地域の課題を解決するために、そして社会を変えるために、この法制度を活用して自らがその地域、職場の主人公として自分たちの問題を解決できる社会的事業体を誰でもいつでもどこでも作れるような、そういうことを目指して進めたい。そうすることで、営利企業やNPOでは解決できない取り組みをできるんじゃないか。ワーカーズコレクティブ、傷害のある人たちと共に働いている社会的事業体、農村女性ワーカーズなど、この日本社会では約1万団体・個人がある。おそらく我が国でも10万人の方たちが協同労働に近い働き方をしており、事業としてもおそらく潜在的に1000億ぐらいの規模があると見ます。速やかにこういう事業体に法律を付与し、私たち働く者がこの職場や地域の主人公となれるような取り組みを進めてまいりたい。「オルタナティブとしての協同組合運動」について、私たちは雇用労働に替わるオルタナティブとして、自らが企業の主人公になりうるか、ということで協同労働を社会の力にする運動をこれからも進め、皆さんとともに地域や社会を変えてまいりたい。

「ソウル宣言」の「グローバル社会的経済フォーラム創立総会」に参加し、新しい社会運動の地平線をここから始めよう
丸山茂樹(参加型システム研究所客員研究員)

『関西生コン産業60年の歩み」出版記念シンポジウム、丸山茂樹さん(参加型システム研究所客員研究員) 『関西生コン産業60年の歩み』の一番大きな意義は伝統的な労働運動とか、伝統的な協同組合運動、伝統的な社会主義、共産主義運動の枠をもっと拡げて、中小企業の経営者たちの協同組合と労働組合が一緒に、ある場合には地方自治体と一緒になって絶対的な権力を持っていると思われていたゼネコンやセメント資本と交渉し、新しい社会運動の姿を実現したところにある。そういう意味で、この運動が持っている重要な意味が、必ずしも生協陣営や農協陣営や漁協陣営に共有されていない。これを共有化していこうというのが本日の主催者の魂胆ではないかと思っています。

 これは決して日本だけの現象ではない。世界的な一つの新しいオルタナティブな潮流である、ということをお話ししたい。 具体的に申し上げますと、韓国で「グローバル社会的経済フォーラム2013」が開かれました。長い間、協同組合の後進国であった韓国で、いま、もの凄い勢いで様々な協同組合が発展している。例えば、韓国で生活クラブをモデルにして作り始めた生協がいま10万を超えている。昨年12月1日に「協同組合基本法」が成立しました。この法律によりますと、金融や共済を除くどんな事業でも5人以上の組合員が集まって法に基づく定款を作り、出資金を振り込めば即座に、許可無く、届け出だけで協同組合ができる。税金やさまざまな特典のある社会的協同組合は、日本では大臣の認可が必要ですが、(韓国のこの法では)設立の条件に制約がない。まだ一年経っていないのに、韓国は協同組合創立ラッシュです。

 どうしてこういう状態にあるのか。協同組合基本法が制定されたこと。それからソウル市がそれに立脚して「協同組合活性化支援条例」を制定し、現在800あるソウルの協同組合を10年以内に8000組合に10倍化し、ソウルのすべての市民がなんらかのかたちで協同組合の組合員として活動する条件を作るために予算を付け、ソウル市庁に社会的経済課を作り、21名の専門スタッフを置いて様々な活動をしている。ソウルを4つに分けてそれぞれの地域に設立から活動まで支援する役所を置き、民間団体とソウル市が協同して「社会的企業促進センター」を作りました。

 私が参加した「グローバル社会的経済フォーラム」はイタリアのボローニャ、カナダのケベック、フィリピンのケソンとか、世界で協同組合の先進都市として知られているところの市長や知事が沢山参加しました。そして、歴史的文書と言って良い「ソウル宣言」(別掲文書を参照)を発表した。ここには世界の危機と社会的経済はなぜ重要か、グローバル社会的経済のネットワークを目指そう、そのための具体的な確認事項が1から10まで書いてある。

 このソウル会議と同じ趣旨で、11月9日から11日まで、フランスのシャモニーで第6回モンブラン会議が開かれている。国家や大企業の成長戦略に我々の運命を任せるのではなく、民主的に管理し、運営し、社会を良くしていく経済主体を我々自身で作っていこう。これなくして社会のイノベーションも現代の危機の解決もあり得ないという、主旨の会議です。1ヶ月前の10月15日から18日まで、フィリピンのマニラでアジア連帯経済会議が開かれ、これもアジアの途上国の立場から、現在の不公正な状態を公正にするためのアピールが出されている。

 つまり今日、私たちはここに集まっている『関西生コン産業60年の歩み』の出版記念会は、新しいタイプの社会運動の出発点であり、ソウルで、フランスで、フィリピンで開かれている国際会議と内容的には通じているということです。はっきり言いますと、伝統的な協同組合運動、伝統的な労働運動、伝統的な社会主義、共産主義運動をのり越えて新しい質に転換していく社会運動が全世界的に試みられている、ということです。

 開会の挨拶で下山さんが一番最初のお話、今日の司会者、呼びかけ人、スピーカーを見てください、色々な経歴をもつ人々が新しい地平線を切り開こうとここに集まっているではありませんか。というお話でした。私はそれに全く賛成です。相手がグローバルな新自由主義で、非常に不幸な出来事がアメリカでもヨーロッパでも日本でも起こっているにも関わらず、我々がどうしてグローバルにネットワークしてグローバルに闘わないでいられるのか。私たちはもう、過去のことや問題をほじくり返している暇はないんです。新しい道を歩む中で、過去の様々な欠点や誤りやお互いの関係のこじれも修復していきましょう。そして来年の「グローバル社会的経済フォーラム創立総会」にぜひ参加しましょう。新しい社会運動の地平線をここから始めましょう。

(機関紙『コモンズ』第67号9‐11面)

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