連載(寄稿)(その86)
協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史〇59

協同組合運動とは何か アジア・オセアニアの協同組合運動の歴史 近畿生コン関連協同組合連合会専務理事 増田幸伸
連載第86回

■GSEFの展望


 前号に続いて、「関西地区生コン支部50年誌」での丸山茂樹参加型システム研究所・客員研究員の論考に言及する。
 丸山は、国際協同組合同盟(ICA)から委託を受けたレイドロー博士のレポート(「西暦2000年における協同組合」1980年)において、重要な位置付を与えられた労働者による生産協同組合に関心を向けている。

 レイドロー報告では、80年当時の情勢を「若干狂気じみた方向へ進んでいる」とし、「協同組合こそが正気の島」であるべきだと説いた。しかし、その協同組合も事業や経営を優先させ、協同組合の目的や思想を蔑ろにしているとした。そのため、協同組合のミッションを明確にした4つの優先分野を提案した。1つ目が世界の飢えを満たす協同組合。2つ目が生産的労働のための協同組合。3つ目が持続可能な社会のための協同組合。4つ目が協同組合地域社会の建設。

 残念ながら、資本主義に対抗する国際的な協同組合セクターの力は、新自由主義(多国籍企業によるグローバリゼーション、市場原理主義、規制緩和等々)の席巻を止めることはできなかった。4つの課題は課題のままである。
 しかし、2008年のリーマンショックによる米国発金融恐慌は新自由主義の行き着く先を明示した。前号で紹介したソウル市で開催されたグローバル社会的経済フォーラム(GSEF)2013及びグローバル社会的経済協議体創立総会・記念フォーラム2014が開催された契機となった。あらためて課題に挑戦しなければならない。

 さて、2つ目の生産的労働のための協同組合の実現であるが、レイドローは従来の資本主義では「労働者や職人は生産手段の管理権を失い、その所有権や管理権は資本家の手に移ったのである。つまり資本が労働を雇うようになった。ところが労働者協同組合はその関係を逆転させる。つまり労働が資本をやとうことになる。もし大規模にこれが発展すれば、これらの協同組合は、まさに新しい産業革命の先導役をつとめることになるだろう・・・」と指摘した。レイドローは、労働者協同組合の存在は他の協同組合とは違い、「新しい産業民主主義社会の入り口」に立っているとした。
 丸山は、レイドローの協同組合論と共に、前回で言及したグラムシのヘゲモニー論や知的モラル的改革論、ポランニーの新しい文明論が加味された思想的潮流が上記GSEFの運動を支えていると指摘する。

■産業政策の発展

放し飼いの鶏(置賜経済自給圏)

放し飼いの鶏(置賜経済自給圏)

 丸山は、関生支部や事業協同組合の取組みを高く評価する。その上で、生コン関連産業だけでなく、地域の他産業の中小企業や労働者、学生や知識人などを幅広く組織化し、巨大資本の側に正義はないことを周知すべきとする。

 さらに、地方政府(自治体)への働きかけも欠かせないとする。日本の自治体の独立性や政党構成に課題は多いが、自治体は住民の仕事や暮らしや環境を守る責任を負っている。もし、自治体がソウル市やモントリオール市などのように、協同組合と共に歩むならば、共同経済事業や地域コミュニティーの可能性は大きく開けてくるとする。

 また、丸山は、関生支部や事業協同組合の取組みの先駆性を評価するが、作るべき組織としては、地域の必要性に応じた労働者生産協同組合(ワーカーズ・コレクティブ)が欠かせないとする。例えば、業界の中で倒産した企業を労働者協同組合に再組織化して再生させる等、労働者も受け身の人間から参加行動し経営する人間に転換することが大事と指摘する。教育、福祉、スポーツ、文化でも、レストランや飲み屋でも、人間が生きていく必要なすべての領域において、受け身や消費者としての立場だけではなく、自らが参加し、組織し、運営していくシステムを作ることが重要と力説する。

 丸山は、日本でのモデルとして山形県南部の3市5町の置賜(おきたま)地域で作られている一般社団法人置賜自給圏推進機構(2014年結成)をあげている。3市5町を一つの「自給圏」ととらえ、エネルギーと食、住の地産地消を考え実践するために、自治体の首長も社会的経済団体も知識人も参加している。
 外国のモデルとして、「自治・協同組合の都市」として知られるイタリヤ・ボローニャ、スペインのモンドラゴン協同組合企業体、オーストラリアのマレーニ協同組合、韓国のコミュニティー作りで著名なソンミサン・マウルなども参考にすべきとした。

 丸山は、先駆者である関生支部などの労働組合や事業協同組合の担い手たちに、新自由主義による政治・経済支配に対して、批判や抗議や抵抗にとどまらない新しい経済・文化・文明の創造者になって欲しいという。(次号に続く)

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