アダルトビデオ制作現場での性暴力と搾取を人権NGOが告発

3月3日、東京弁護士会館にて行われたヒュマンライツ・ナウの記者会見

3月3日、東京弁護士会館にて行われた
ヒュマンライツ・ナウの記者会見

 「モデルにならない?」などと声をかけ、アダルトビデオへの出演を強要する事例が後を絶たない。状況を調査報告で暴露した人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」(以下、HRN)は、警察など国に制度整備を要請すると同時に、AV業界団体にそうした事例の根絶をするための業界規則を定めるよう要求している。ヒューマンライツ・ナウの調査は、インタネット時代のエンターテイメントの一部に巣くう闇をあぶり出している。(おおの)

 アダルトビデオ(AV)のマーケットはインターネットの普及と同時に急速に拡大している。あるデータによると、国内の市場規模は年間約5000億円、毎年2万本の新作が発表されている。マーケットの拡大に女優の供給が追い付かず、脅迫や詐欺まがいの行為が横行しているのである。性交渉を映像化するAVの制作過程は、女性の人権侵害のたまり場ともいえる。近年のそうした現場からの女性の訴えが多くなっているとHRNはいう。インターネットで発信しやすくなったためだが、しかしこれでも氷山の一角だ。

 きっかけは、「タレントにならない?」「モデルをしませんか?」などといった声かけからはじまる。夢を膨らませて誘いに応じた若い女性たちが、アダルトビデオの出演を強要される。AV に出演するという意識がないまま、プロダクションと契約を締結した途端、「契約だから仕事を拒絶できない」「仕事を断るなら違約金を払え」「親にばらすぞ」等と脅され、AV 出演を余儀なくされる事例が後を絶たないのだ。

 HRNの報告書は以下のように述べている。
「若い女性の無知や困窮に乗じて、衆人環視のもとでの意に反する性行為を強要し、その一部始終が半永久的に公にさらされる被害は著しい人権侵害であり、違約金の脅しによりこうした奴隷的な立場に置かれる『債務奴隷』ともいえる深刻な事態であり、女性に対する深刻な暴力です」

 HRNがAV被害者支援を行っている団体から聞き取りを行った中には、次のような深刻な事例もあった。

  • B子は20歳の時に知人から「グラビアモデルの事務所」に紹介すると言われ、X社の面接に行った。B子はX社の専属モデルになることが決まったが、面接ではAVの話は一切出なかった。
  • B子はX社の紹介でY社に面接に行ったが、性体験の有無など猥褻な質問を受けたため戸惑った。結局、B子はY社の作品に出ることが決定したが、仕事内容は分からないままであった。
  • 撮影開始直前に、B子はX社から、AVであることを知らされた。B子は拒否したが、X社から、キャンセルすれば高額の違約金が発生すると脅されたため、応じざるを得なかった。
  • B子は1本目の撮影終了後、X社に契約の解除を申し出たが、X社は既に仕事は決まっていると告げ、「キャンセルすると違約金が発生する」「現場に来なければ大学や実家まで迎えに行く」「違約金を支払えないなら親に請求する」などと脅すことで、B子に出演を強要した。
  • B子はその後も、違約金の脅し等から出演を続けるしか選択肢がなく、出演を続けたが、撮影内容は次第に過激になり、B子の意思に反して残虐な行為が繰り返されるようになった。

撮影で強要された行為は以下のようなものがあった。
  • 撮影のため 1 日 12 リットル以上の水を飲まされる、
  • 避妊具も付けず洗浄もしないまま複数人から挿入行為をされる、
  • 避妊具も付けず洗浄もしないまま肛門と膣の出し入れをされる、
  • 膣内に男性器に見立てた管を通し大量の卵白等の液体を何時間も続けて 流し込まれる、
  • 避妊具もつけないまま複数人の精液を無理やり膣内に注入される、
  • 下半身をむき出しのまま、上半身は木の板囲いによって固定され、身体的 自由を奪われたまま凌辱を受ける、
  • 多数におよぶ無修正の動画への出演強要

 HRNはこの調査を元に警察・検察、厚労省、内閣府など関係官庁に当面の対策と法的規制を要請すると同時に、このほど関連業界団体である特定非営利法人知的財産振興協会に対して、出演強要被害の再発防止および人権侵害の防止のために当面取り組むべき優先的事項を取りまとめた要請書を提出した。
それは、
  • 意に反する出演強要を禁止する。
  • 契約の解除をいつでも認める
  • 適正な報酬を支払う
  • スカウトの禁止
  • 女優が出演拒絶した場合、違約金を請求しない
  • 出演契約にあたっては女優が参加したうえで契約を締結する、といった内容を含んでいる。

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