書評】屋嘉宗彦著『沖縄自立の経済学』七つ森書館/大野和興

沖縄経済自立に向けて、その原理と方向性を明らかにする

書評『沖縄自立の経済学』屋嘉宗彦著 七つ森書館

大野和興(ジャーナリスト、本紙編集委員)

●経済的依存を許さない沖縄へ

 辺野古新基地阻止を掲げる沖縄の島ぐるみの闘いは、個別課題を超えて沖縄の戦前・戦後史を包みこむ全体的総合的な運動へと進んでいる。それは政治的自立、さらには沖縄独立ということまでも射程に置いた議論として、いま沖縄の人々の心をとらえつつある。本書冒頭の「はじめに」で、著者は次のように記す。

「沖縄の政治的独立・自立論は日本への経済的依存を許さないものになりつつあるとみるべきだろう」

 日本への経済的依存を「なくす」とか「解消する」といった生易しいものではなく「許さない」と表現するところに、本書の立ち位置をみる。

●政治的自立は経済的自立と両輪

 次いで著者は次のように書く。

「政治的独立は、必然的に経済的自立を要請する。沖縄の日本からの経済的自立は可能か、またその時間的距離範囲をどう考えるか、本書は、この完全な経済的自立の可能性の検討までを射程に置くものとする」


 政治的自立は経済的自立と両輪となってはじめて成り立つ。本書は、沖縄の日本からの経済的自立は可能なのか、その道筋を戦後の沖縄と日本の経済関係を綿密に追うことによって明らかにすることを意図した。著者は現代資本主義論を専門とする経済学者であり、長年法政大学沖縄文化研究所を拠点に沖縄研究に従事してきた沖縄出身の沖縄研究者でもある。冷徹な経済学者の目と熱い沖縄研究者の心が融合して、沖縄の今と未来を見据える読みごたえのある本が出来上がった。

●地場産業から全国市場、外国市場へ

 本書は、沖縄経済の現状をどう見るかという問いから出発する。この分析がとてもおもしろい。そのまま沖縄経済自立の処方箋になっているのだ。
 沖縄経済の現段階をつかみ取った著者は、さらに綿密に日本の戦後構造を作ってきた国土総合開発計画の足取りを追いながら、沖縄開発とそれがどうかかわってきたかを分析する。基地と開発という日本の押しつけが沖縄経済をいかにゆがめてきたかを摘出する。

 そして最後に、著者は沖縄経済自立に向けて、その原理と方向性を明らかにする。「ローカル産業複合」という道筋を提起する。著者が要約するその道筋とは次のようなものだ。それは、農業を主とした第一次産業を軸に、地域の資源を加工し、地域住民のニーズを満たす地域産業、地域的独自性を有する財を供給する特産品工業、といったものだ。いい方を変えれば沖縄の資源、第一次産業と有機的な連関をもった地場産業ということになる。

 こうした地場産業は規模の拡大や技術の発展によって将来的に対外的競争力を持ちうる、という前提が付く。さらにその市場は地域をベースとしながらも、全国市場、さらに外国市場へと展開する。よくいわれる地産地消といった、ある意味で“限られた“市場ではなく、地場産業間の連関を重視しながらも自由貿易を組み込んだ開かれた市場を想定する。そうでなければ一〇〇万人を超す人々に当たり前の生活を提供できないからだ。そのためには沖縄独自の高度な独創性と、対外競争力を身につけるための一定の時間が必要になる。出来るだけ外から買わないための自給力のアップと、それを移(輸)出する力量とが問われる。

●政治的経済的自立から人権の確立へ

 本書の最終章で著者はなぜ自立が必要なのかという根本問題を立てる。経済的自立によって何を実現するのか、と言い換えてもよい。それは人権という視点である。人びとの絶え間ないたたかいの成果として、人びとは生存権、幸福追求の権利を公共社会が保障すべき社会原理として獲得してきた。それは自助原則と互助原則という二つの原則で支えられる。この社会原理の具体的表現を私たちは憲法という形で手にしている。なぜ政治的経済的自立が大事なのか、それは沖縄で憲法を実現するためなのだと。

関連リンク
『沖縄自立の経済学』Amazon書店で見る・買う
目次と内容(七つ森書館)
【書評】川平成雄=沖縄社会経済史研究室長・歴史学者(東京新聞)
『沖縄自立の経済学』「自立」論議の契機に(琉球新報)
一向に打開の兆しのない「沖縄問題」の実態と真実に迫る(日刊ゲンダイ)
〔本の紹介〕「沖縄自立の経済学」(平和フォーラム)

(「コモンズ」98号の目次にもどる)

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