破局に向かうアベノミクス「もうひとつの社会」を模索しよう

破局に向かうアベノミクス  “もうひとつの社会”を模索する
破局に向かう安倍 安倍自民党は7月参院選挙で「アベノミクスをもう一段ふかす」ことを公約に掲げて勝利、改憲に必要な議席数三分の二を獲得した。しかし、実質経済はといえば個人消費も企業の投資も賃金も下がり続けている。アベノミクスが主導した日本経済はいまや完全に負のスパイラルに陥っているといってよい。その現実を無視して安倍首相は「アベノミクスは道半ば」といい続ける。突破口として安倍政権が進めているのが経済の軍事化と武器・原発輸出とヘリコプターマネー金融政策だ。いくつかの経済指標をもとにアベノミクスの現段階を検証し、これからの社会を考える。(大)

Ⅰ “負の連鎖”に陥ったアベノミクス

◆落ち込む一方の家計消費

アベノミクス失敗の自認 総務庁「家計調査」でみると、例えば1人当たり消費支出(2人以上世帯)の前年同月比。2014年3月以降、プラスだったのは15年の一時期だけであとはすべてマイナス。16年7月はマイナス0・5%だった。実額でみても、2000年7月に約36万円だった消費支出(2人以上・勤労者世帯)は16年7月には30万円に下がり、エンゲル係数は21%から25%に上昇した。原因は労働者の実質賃金が減っていることにある。消費が振るわないからGDP(国内総生産)も伸びない。今年4―6月期の伸び率は前期比0・048%と横ばいだった。

◆開く格差

 2012年に富裕層上位40人がもつ資産は7・6兆円差った。1015年には15・9兆円と2年間でほぼ倍増した。その一方で貯蓄ゼロ世帯は1421万7000世帯から1888万6000世帯へと466万世帯も増えている。アベノミクスによって、貧富の格差はますます増大している。

◆膨らむ内部留保
アベノミクスの2年間で二つの過去最多
 財務省が9月1日に発表した法人企業統計によると、、企業の内部留保は2015年度末で377兆8689億円と4年連続で過去最高を記録した。第2次安倍内閣が発足する前の2011年度末に比べ100兆円近く増えたことになる。
 内部留保というのは、売上高から人件費など費用を差し引き、さらに税金や配置を払った後に残った利益を貯めこんだものをいう。本来、労働者の賃金や設備投資に回るかカネをポケットに入れたものだ。内部留保が増えれば増えるほど、労働者の賃金は抑制、個人消費はますます減ることになる。

◆何でもあり財政

 2017年度予算の概算要求は100兆円を3年連続で突破した。一方で財政規律の確立が叫ばれながら、ザルに水を入れるような大盤振る舞いである。ザルの網目も年々大きくなり、まるで青天井といったかっこうだ。中身をみると、突出しているのは防衛費と公共事業費。
 8月20日付け新聞は、防衛費概算要求5・1兆円で過去最大の要求という記事と介護保険サービス利用料負担増大を厚労省が検討開始の記事がそれぞれ掲載された。防衛予算の主軸はオスプレイや潜水艦・上陸用舟艇、ステルス戦闘機など攻撃用兵器。加えてJR東海のリニア新幹線大阪延伸に前倒しに3兆円を充てるなど土木事業に札束を降らせる。民間企業に国が直接貸し付けるのは初めて。東京新聞9月3日の社説は「何でもあり」と評している。

◆空からお札を

 100兆円の財政規模のうち税収で賄えるのはほぼ半分。40兆円は借金(国際)である。そんなことができるのは、異次元の金融緩和で日銀が毎年80兆円の国債を引き受けているからだ。
ヘリコプターマネー それでも足りず政府はヘリコプターマネーなる禁じ手を模索している。中央銀行が空中からお金をばらまくような政策を称してヘリコプターマネーという。2015年度の政府の新規利付国際発行額は134・4兆で、そのうち110兆円(81・8%)を日銀が買い占めている。すでに日本は実質的にヘリコプターマネーを実施しているとみる人もいる。安倍晋三は日銀支配に乗り出し、政権のいうことを聞く人を日銀総裁に据えた。その結果がいまだ。こうして日銀がばらまいたお金は企業の内部留保を始め富裕層に集中し、格差はますます拡大することになる。

 アベノミクスが描いた「企業収益増→賃金増→消費増→企業の投資増」は画に書いた餅に終わり、日本経済は負の循環に入った。経済成長を追求することで全体が豊かになるというシナリオは破たんし、成長を追求すればするほど、一部が富み、大多数が貧困化する時代に入った。世界でも同じことが同時進行している。その背景には、市場経済という東西冷戦終結後の世界の経済をつくりあげてきたシステム、新自由主義に基づくグローバリズムの破たんがある。それは豊かさを備えた厚い中間層の存在と分配の相対的な平等を掘り崩し、不満と不安に人々を駆り立てている。

Ⅱ “そうではない社会”を求めて

黒田日銀総裁

黒田日銀総裁

 政治学者の吉田徹さん(北海道大学教授)は、いまのアベノミクスの現状を「破局に向かう『時間稼ぎ』」と評している(『世界』9月号)。永遠に達成しないアベノミクスを「いまだ道半ば」といい続けることで安倍政権の支持をつなぐ、そのために空吹かしをする。そうこうしているうちに日本経済は体力を失う。経済学者の竹田茂さん(法政大学教授)は筆者のインタビューに答え、そのからくりを次のように解説してくれた。

 「(政治任命された) 黒田日銀総裁は『国家の博打』とでもいうべき金融政策を始めます。事実上の財政ファイナンス(赤字国債の日銀引受)でマネ―サプライ増とインフレ期待醸成を狙うという、理論的根拠の極めて薄い政策です。それによって人びとの頭の中の期待を操作する。『期待』というのは投資家や消費者の頭の中にあるものであって、政権であろうと日銀であろうと人びとの『期待』を一夜にして変えることは難しい。反面、状況次第で『期待』はぱっと変わってしまうこともある。黒田日銀はそれを狙ったのです。
 いまデフレで価格が下がっているのは、人びとが悲観的な考えを持っているからで、これをひっくり返えせば二年間で物価が上がるように持っていける。そのためにサプライズ効果で『日銀は変わった、デフレからインフレになるかもしれない』とみんなに思わせる。すると、物価が上がる(インフレ期待)のだから今のうちにお金を使ってしまえ、ということになる」

GSEF2014

GSEF2014ソウル大会
今年はモントリオールで開かれる

 破局に向かう世界と日本。そうならないために、どのような方向があるのか。ソウル宣言を受け、9月7日からカナダ・モントリオールで開かれる社会的経済のための「GSEFモントリオール大会」には、日本を含め世界から、いまのようではない、もうひとつの社会構想の実践をひっさげ、世界から実践者と研究者が集まる。日本からは連帯労組関西生コン支部を始め地域から三つの報告が行われる(詳しくは本紙前号、若森資朗さんの論文を参照いただきたい)。
 そこでは、「成長」ではなく「持続」、「効率」ではなく「循環」、「競争」ではなく「共生」を原理とする社会づくりの実践が論議される。時代は今、変わり目にあるともいえる。

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