ナショナリズムを煽り立てるオリンピック報道 どうなる東京五輪

五輪憲章も「オリンピック精神」もどこ吹く風?

このままだと東京五輪は“国威発揚”一色に


反五輪の会イメージ

 何日間かテレビを中心にメディアはリオ五輪に占拠された感じだった。オリンピックのほかに伝えるべきことは沢山あるだろうに、ニュース番組のほとんどの時間はオリンピックに割かれた。その内容は「日本が獲得したメダルの数」と〝強いニッポン〟の賞賛に終始するものであった。
 2020年の東京オリンピックを前に 「ニッポン、ニッポン」 を連呼するメディア、あふれる日の丸と君が代。どこかおかしいと違和感を感じる人も多い。いつから 「東京オリンピック」ではなく 「日本オリンピック」 になったのか。このままだと東京オリンピックは〝国威発揚〟を前面に押し立てたナショナリズム五輪になりかねない。

■「“国威発揚”のためのオリンピック」を堂々と掲げるNHK

 東京大学名誉教授でNHK改革に取り組んでいる醍醐聡さんはオリンピック報道でNHKに8月26日に質問状を出した。醍醐さんの提起は単にNHKだけでなく、他のメディアにも共通する。醍醐さんの質問は次のようなものだ。

街中に氾濫する「がんばれニッポン」のスローガンは「オリンピック精神」に真っ向から反する「盛り上げ」方ではないのか。

街中に氾濫する「がんばれニッポン」のスローガンは「オリンピック精神」に真っ向から反する宣伝手法だ

1.リオ・オリンピック開催中のニュース7では連日、アナウンサーがその日の日本選手のプレイの模様を伝えたあと、「これまでの日本のメダル獲得数は〇です。これは〇〇に次いで〇番目です」と語りました。
2.8月21日の「おはよう日本」に登場した刈屋富士雄解説委員は、リオ・オリンピックを振り返った解説の中で、「五輪開催5つのメリット」として、国威発揚、国際的存在感、経済効果、都市開発、スポーツ文化の定着を挙げました。
 こうしたNHKの報道は、「オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」(第1章6)、「IOCとOCOGは国ごとの世界ランキングを作成してはならない」(第5章57項)と定めたオリンピック憲章に反していると考えます。NHKの見解をお聞かせ下さい。

ナチス政権下のベルリンオリンピックポスター(1936)

ナチス政権もベルリンオリンピック(1936)を「優秀なドイツ人とその文化」という国威発揚に利用した

 この質問状に対しNHKからは30分後に以下のような回答があった。1.については「オリンピック憲章では、IOC自身と組織委員会が国別ランキングを作成しないことをうたっておりますが、メディアによる報道は禁止しているわけではありません」と木で鼻をくくったような回答だった。また2.については、「『 国威発揚 』という表現は、解説委員がオリンピック開催の効果の一つとして、国民を元気にする、国民の自信と誇りを高めるといった意味で使いました」というものだった。

 この回答に対し醍醐さんは自身のブログで、「オリンピック憲章で謳われたオリンピズムは、国威発揚のためでもなければ、開催都市への波及的経済効果のためでもない」と前置きした上で、「オリンピックを通じて高められる『国民の自信と誇り』とは、どのようなものなのか。国威発揚、ナショナリズム鼓舞とどこが違うのか」「オリンピックを通じて『国民の間に自信と誇り』を高めるのに肩入れするのはメディアの使命なのか」と疑問を呈している。

■オリンピックは「日本のための大会」ではない

『東京オリンピック―「問題」の核心は何か』(集英社新書 スポーツジャーナリストの小川勝さんがリオ五輪が閉幕した翌日の8月22日に刊行した『東京オリンピック―「問題」の核心は何か』(集英社新書)は、帯に「オリンピックは『日本のための大会』ではない」とある。小川さんはオリンピック憲章と照らし合わせながら「ニッポンオリンピック」のおかしさを指摘している。目次からいくつかの見出しを拾うだけで、彼がいう「問題の核心」が浮かび上がる。

  • オリンピックは「開催国のために行う大会」ではない(第1章)
  • オリンピックは「国同士の争い」 ではない(第2章)
  • オリンピックに「経済効果」 を求めてはならない(第3章)
  • オリンピックの理念は「勝敗」 ではない(終章)

 では現実はどうであったか。東京五輪のために2015年11月に決定された政府基本方針というのがある。その一節に次のようなくだりがある。

「日本人アスリートが(略)過去最高の金メダル数を獲得するなど優秀な成績をおさめることができるよう…」

 醍醐さんの指摘のようにオリンピック憲章は第1章で「オリンピック競技大会は(略)選手間の競争であり、国家間の競争ではない」と定めている。日本政府は、はなから憲章違反を犯しているのである。憲章がこうした規定を置く背景には、オリンピックとナショナリズムの長い「戦い」の歴史があった、と小川さんは書いている。

 オリンピックの創設者クーベルタンは当初から大会にナショナリズムが持ち込まれるのを警戒していた。1952年から72年まで会長を務めたブランデージは、再三にわたり表彰式での国歌・国旗を廃止し、国歌を五輪ファンファーレに代えるよう提案していた。こうした提案はオリンピックを国威発揚の場、資本主義国よりすぐれているとことを証明する場と考えていた「共産主義国」の反対でつぶされていった。「日本をとり戻す」ことを自身の政治目的に掲げる安倍首相が率いる政権の姿勢と重なる。

リオ五輪閉会式の「安倍マリオ」明らかに五輪憲章違反の政治利用となる行為。恥ずかしい。

リオ五輪閉会式の「安倍マリオ」
明らかに五輪憲章違反の政治利用となる行為。恥ずかしい

 リオ五輪の閉会式での安倍首相のパフォーマンスにその姿勢は見事に現れていた。ドラえもんやキャプテン翼など国際的に有名な日本のアニメキャラクターが登場した後、日本から地球を貫通してリオに現出したマリオ。赤い帽子の下はなんと安倍首相の得意げ顔。
 オリンピックの閉会式に一国の首相が顔を出すこと自体が憲章違反であり、オリンピックの政治的利用に他ならないのだが、日本のメディアはこうした安倍首相を持ち上げるだけだった。大手広告代理店が関わったこの演出、なんと12億円かかったと8月8日の東京新聞は伝えた。

■追いつめられるアスリートたち

 最後に、もう一度醍醐さんに登場いただく。醍醐さんは、NHKからの回答を得てすぐさま、以下のような意見を送った。

もう走れません 円谷幸吉の栄光と死 昨日、お送りした意見・質問への返信の中に、オリンピック開催の効果の一つとして「国民の自信と誇りを高める」というくだりがありました。国ごとのメダル獲得数を示すのもそのためですか? しかし、オリンピックは参加国の国民にどのような「自信と誇り」を高めるのですか?
 「幸吉はもう走れません。お許しください」という遺書を残して円谷幸吉選手は自殺しました。ロス五輪マラソンで途中棄権して帰国した増田明美さんは空港で「非国民」という罵声を浴び、ショックのあまり寮の自室にこもって死ぬことばかり考えたと述懐しています。女子シンクロで銅メダルをもたらしたとして賞賛された井村雅代ヘッドコーチは「無茶苦茶強引に指導して選手を追い込んだ」と誇らしげに語りました。
 オリンピックは、選手の人権を顧みず、選手を追い詰めて、国民に自信と誇りをもたらすため、「お国のため」にあるのではありません。メディアがそんな国威を煽るのは愚の骨頂です。
(編集委 O)
ーーー
※その他の問題(環境破壊・「再開発」による住民無視・都市部貧困層の追い出し・利権や税金の垂れ流し等々々)については、以下のサイトが詳しい(電子版編集部)。
No OLYMPICS 2020 反五輪の会

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行動予定

10月
27
18:30 パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか
パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか
10月 27 @ 18:30 – 20:30
パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか | 大阪市 | 大阪府 | 日本
■ 講師:役重善洋(パレスチナの平和を考える会) ■ 会場:エルおおさか(大阪市中央区北浜東3−14)  http://www.l-osaka.or.jp/pages/access.html ■ 第1回 米国大使館エルサレム移転と帰還大行進の歴史的意味  2018年9月29日(土)18:30~20:30  会場:エルおおさか701号室(定員54) ■ 第2回 ジェンタイル・シオニズムとイスラエル国家  10月13日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第3回 中東和平とオスロ合意  10月27日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第4回 “反ユダヤ主義”をめぐる議論  11月17日(土) 18:30~20:30  会場:エルおおさか707号室(定員18) ■ 第5回 日本とパレスチナ問題、BDS運動の経過と課題  11月24日(土)18:30~20:30   会場:エルおおさか707号室(定員18) ***** ■ 参加費:毎回¥1000(割引希望の方は応相談)  ☆通し参加を申し込まれた方は第2回以降各¥800 ■ 主催:パレスチナ問題連続学習会実行委員会  賛同団体:ATTAC関西グループ/関西共同行動/パレスチナの平和を考える会  連絡TEL090-42980-3952(喜多幡)
11月
17
18:30 パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか
パレスチナ問題連続学習会/大阪 @ エルおおさか
11月 17 @ 18:30 – 20:30
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12月
3
19:00 元陸自レンジャー隊員・井筒高雄さ... @ 元町映画館
元陸自レンジャー隊員・井筒高雄さ... @ 元町映画館
12月 3 @ 19:00 – 21:00
元陸自レンジャー隊員・井筒高雄さん講演会「元自衛官だからこそ語る 自衛隊を憲法に明記してはならない理由」/神戸 @ 元町映画館 | 神戸市 | 兵庫県 | 日本
元陸自レンジャー隊員・井筒高雄さん講演会 「元自衛官だからこそ語る 自衛隊を憲法に明記してはならない理由」 ■ 日 時:2018年12月3日(月)19:00~21:00(開場18:30) ■ 会 場:元町映画館2Fイベントルーム  〒650-0022神戸市中央区元町通4丁目1-12  https://www.motoei.com/access.html ■ 講 師 井筒高雄さん(元陸自レンジャー隊員) ■ 参加費:1000円   ※お申込みなしでどなたでもご参加できますが人数把握のためご連絡くださればありがたいです。  メール:civilesocietyforum@gmail.com まで。 ■ 主 催:市民社会フォーラム  http://shiminshakai.net/post/4784 ■ ご案内  安倍首相は9月3日、防衛省の自衛隊高級幹部会同での訓示で、「全ての自衛隊員が強い誇りを持って任務を全うできる環境を整えるのは、今を生きる政治家の責任だ。私はその責任をしっかり果たしていく決意だ」と述べ、憲法に自衛隊の存在を明記する改正に取り組む考えを改めて示しました。  10月から12月まで開会予定の通常国会でも、安倍首相は憲法改正の自民党案を提出し、早期の発議を目指す方針を明らかにしています。  はたして、自衛隊を憲法9条に明記すれば、日本の平和を保障することになるのか? 9条を現実に合わせて現状追認するだけのことなのでしょうか?  そして、有事があれば命がけで日本を守る自衛官たちも、憲法に自衛隊を明記することを望んでいるのでしょうか?  元自衛官の井筒高雄さんに、改憲発議がされようとする今、自衛隊を憲法に明記することの問題点についてお話しいただきます。 井筒高雄(いづつたかお)さん 1969年、東京都生まれ。 88年、陸上自衛隊第31普通科連隊に入隊。91年にレンジャー隊員に。 92年にPKO協力法が成立すると、武器を持っての海外派遣は容認できないとして翌93年に依願退職。 大阪経済法科大学卒業後、2002年から兵庫県加古川市議を2期務める。 元自衛官の立場から戦争のリアル、コスト、PTSD などリスクを 伝える講演活動を行う。 現在、ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン(VFP) 共同代表。 共著に『安保法制の落とし穴』(ビジネス社)、単著に『自衛隊はみんなを愛している』(青志社)など

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