投資という名のアフリカ破壊 アベ主導のアフリカ開発会議とは何か?

強権的「開発」と外国企業の土地収奪に加担
現地の農民からは激しい抵抗運動が

アフリカ開発会議2016

アフリカ開発会議2016

 日本が主導してアフリカ開発を支援するアフリカ開発会議(TICAD)の第6回会議が8月末のケニアのナイロビで開かれ、日本は今後三年間で官民合わせて3兆円(300億ドル)の投資をすることを表明した。
 「アフリカ諸国への日本の投資」、これまでどんなことが行われているのだろう。その事例の一つをモザンビークにみることができる。日本の農地面積の3倍に上る巨大農業開発、そこでくらす小農民の追い出し、生産する農産物はすべて輸出用で、多くは日本向けの大豆。現地農民は激しい反対運動を展開し、国際的にも批判を浴びている。(大野和興)

■三角協力で熱帯農業開発

「モザンビークと周辺国の地図」周りに南アフリカ共和国など 数か国と国境を接する旧ポルトガル植民地であり、1975年に独立を達成した。独立後1992年まで 内戦が続いた。内戦終結後は好調な経済成長を続 ける反面、エイズ蔓延が問題となっている。隣接 国が英語圏であるため、英国連邦に加盟する。


モザンビーク共和国は周りに南アフリカ共和国など数か国と国境を接する旧ポルトガル植民地であり、1975年に独立を達成した。独立後1992年まで内戦が続いた。内戦終結後は好調な経済成長を続ける反面、エイズ蔓延が問題となっている。隣接国が英語圏であるため、英国連邦に加盟する。

 「日本・ブラジル・モザンビーク三角協力による熱帯サバンナ農業開発プログラム(略称:プロサバンナ事業)」と呼ばれるこの事業は、主として日本の政府開発援助(ODA)で進められている。
 対象地域は北部三州(ナンプーラ州、ニアサ州、ザンベジア州)をまたぐ「ナカラ回廊」と呼ばれる熱帯サバンナ(雨季と乾季がはっきり分かれた乾燥気候)で、“広大な未利用農地”が地元の小農民に使われることなく“残っている”ため、ブラジルから技術を移転し、農業投資を導入することで、同地域を輸出向けの大豆や穀物の一大生産地へと転換するというものだ。

 なぜブラジルか。日本がブラジルで行ったセラード開発がモデルとなっているからだ。ブラジル中西部に広がる熱帯サバンナを対象に行われた農業開発事業で、日本のODAで土壌改良の技術協力、企業との連携、農地造成や生産費の資金提供などを行った。日本政府はこのセラード地帯を「不毛の地」と呼び、そこを、大豆やトウモロコシを生産する世界有数の穀倉地帯に変貌させた。
 日本政府の海外農業開発事業では唯一の成功例といわれている。しかし、一方でその開発はこの地でくらしていた小規模農民の排除や深刻な環境破壊を招いた。そのブラジルの経験をモザンビークに持ち込んで第二のセラード開発をしようというのがこのプロジェクトだ。

 日本政府はODA予算を使って大規模農業への転換を支援するほか、港湾や輸送網などを整備。その一方で伊藤忠などの巨大商社が大豆やゴマなどの生産物を買い受け、輸出するという体制づくりが進められている。安倍首相は2014年1月にモザンビークを訪問、インフラ整備と農業開発に6億7200万ドル(約700億円))を拠出すると表明、農業開発とともにそこで出来た農産物を港まで運ぶ道路建設や港湾整備を請け負った。

■反発する地元農民

UNACのプロサバンナ計画反対デモ  2013年5月、第5回アフリカ開発会議の前日にモザンビーク全国農民連盟(UNAC)の代表ら3人が来日、日本の政府とJICA(国際協力機構)が力を入れる大型農業開発ODA「プロサバンナ(ProSAVANA)」事業の即時停止を要求する書簡を安倍首相に提出した。

UNACのプロサバンナ計画反対デモ
2013年5月、第5回アフリカ開発会議の前日にモザン
ビーク全国農民連盟(UNAC)の代表ら3人が来日、
日本の政府とJICA(国際協力機構)が力を入れる大
型農業開発ODA「プロサバンナ(ProSAVANA)」事業
の即時停止を要求する書簡を安倍首相に提出した。

 この事業は、日本政府のイニシアティブにより、2009年9月に合意された。しかし、2012年にモザンビーク最大(約10万人)の農民組織である全国農民連合(UNAC)が、懸念と反対を表明した。事業の不透明性や農民との協議の欠如、土地収奪への不安などが理由だった。UNACなど20を超える現地市民社会組織は「一時停止と再考」を要請したが、逆に同事業に疑問や異議を唱える農民らに対する人権侵害が生じ、事業は社会問題化するとともに、同事業への懸念は国際的な広がりを見せた。

2015年には同事業の最大の対象地ナンプーラ州から農民の代表らが来日し、現地の緊迫した状況を報告し、日本のNGOなど市民団体の協力で安倍首相に手紙を渡すなどの運動を繰り広げた。現地農民・市民組織の見解は次のようなものだ。

「日本の『寛大な支援』は、今なお続く植民地主義の表れであり、このようなプログラムの結果として、土地の権利の保障・食の主権・栄養の安全保障・地域コミュニティの文化的統合が脅かされ、環境そして将来世代に影響が及ぶ」

■強権的開発と土地収奪に加担

 対象となった1400万ヘクタールというのは日本の農地面積のほぼ3倍に当たる。そこで生産された大豆やゴマなどは、伊藤忠などの巨大商社が買い受け、日本を含む世界に輸出するとことになっている。
 日本企業の土地への進出も動き出している。2013年のモザンビーク政府の資料には次のような記述がある。
ジャガイモを収穫する農民の家族。この土地も外国企業に狙われているという(写真:Yasuo Kondo)

ジャガイモを収穫する農民の家族。この土地も外国企業に狙われているという(写真:Yasuo Kondo)

「日本企業のニトリは、年内にナンプラ州ナカラ市にて、紡績工場建設を開始する予定。また同社は同州マレマ郡にて綿栽培のため、4000ヘクタールを確保している模様」

 日本のNGOの調査によると、対象地域は農業不毛地帯ではなく、小規模農民による耕作が広く行われている。生産性が高くはないが、家族とコミュニティを中心とした自給的農業が営なまれている。このプロジェクトは外国資本の投資を招き入れることで、そうした自給的農業とコミュニティを壊していると、同調査は報告している。

 モザンビークの農民・市民組織、ブラジルの市民組織と協力して、この問題に取り組んでいる日本の国際協力NGOは、プロジェクトに反対する農民組織・市民組織のリーダーへの脅迫など人権弾圧は相変らず続き、事業の停止と情報公開を求める要求は無視されたままだという。
 安倍政権によるアフリカ開発計画は、こうしたモザンビークの事例を全アフリカに拡大することになる。
(大野和興)


「No!プロサバンナ計画-闘いは今も…」(Nao Prosavana Campanha)

ノープロサバナキャンペーンのイメージビデオ。昔からそこに住んでいる現地の農民にとって、この計画がどういうものなのかがわかりやすい。


「プロサバンナ計画の裏の顔とセラード開発」(全国農民連合(UNAC)他作成)

モザンビークの最大農民組織UNACと農村開発NGOのORAMが、プロサバンナ(ProSAVANA)事業の「モデル」とされるブラジル・セラードでの大規模農業開発事業(PRODECER)を、モザンビーク人自ら訪問、現地当事者から聞き取り調査した時の記録ビデオ↓。ポルトガル語。


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