演劇『秩父困民党・1884年』公演に期待する/乱鬼龍(川柳作家)

「秩父困民党・一八八四年――日本をゆるがした十日間――」
(第219回麻布演劇市フォーラム・コイナさんの会26回公演)に期待する  乱鬼龍

公演フライヤー

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■上演期間:2016/11/25(金) ~ 2016/11/27(日)
■会 場:麻布区民センター(アクセス)
■脚本・演出:菅原司 ■詳細ページほこちら


 今からおよそ130年ほど前、当時の貧窮にあえぐ農民たちが、時の圧政、明治政府を討たんとして、武器を手に埼玉県秩父路に蜂起し、敗れ、死刑となっていった、壮絶な歴史があった。
 彼らは、権力者による歴史(観)の中で、長く「暴徒」と呼ばれ、その貧乏からの解放を高々と訴えた、文字通り命を懸けた熱い志は、今日に至るまで、なかなか正しい評価と理解を得られたとは言い難い時代がつづいている。だが、今日また、ワーキングプアー、ブラック企業、過労死、孤老死等々、正に、今日には今日の「困民」たちが世の中にあぶれ、またその生活破壊の度合はますます強まり、深まってきているという時代状況の中で、この演劇上演の試みは、今日的なものを鋭く持っていると言えるだろう。
舞台稽古風景

舞台稽古風景


 この芝居は、1999年に一度上演されているが、今日の時代の中で、もう一度上演される運びとなったことは、また新たな若い世代にも、観る機会が得られ、そのこともまた喜びたい。
 この演劇を観て、今日の困民である私たちは、そこから何を学ぶのか、それをどう活かしていくのか、様々なことが問われ、求められていると思う。
 この上演の大成功と、そこから発する熱き魂の共鳴におおいに期待したい。

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主な内容(制作・高橋省二)

 19世紀末、世界的不況と政府のデフレ政策によって景気はどん底。絹製品を主要産業としてきた繭の産地秩父の農民たちは、絹の大暴落に加えて維新政府の軍隊・学校創設などによる増税を課せられ、生活は困窮。やむをえず高利貸しに多額な借金をせざるを得なくなり、日増しに破産、逃散、自殺者が増大。まさに村は崩壊寸前。
稽古風景

稽古風景

 これを見て見ぬふりが出来なかった(後に「秩父困民党」を結成する)自由党員で自由民権論者であった落合寅吉、高岸善吉、坂本宗作らは、高利貸しとの交渉、役所への説諭願い、警察署への悪徳高利貸しの取り締まりの要請に奔走。その傍らこの窮状を救うための組織「困民党」を結成。

 しかしあらゆる交渉、請願等ではらちが明かず、秩父の地に田代栄助を総裁にした困民党の「革命本部」を立ち上げ、(暴徒とみなされないためにも)五か条の軍律と4項目の要求を掲げて、ついに1884年(明治17年)11月1日、武装蜂起。
 高利貸し、役所の占拠とともに、貧困、窮状の諸悪の根源をなす圧制政府打倒を掲げて近県在住の自由民権活動家、農民たちが決起し、1万人以上が参加。今日では日本の近代史上、「最初にして最期の武装蜂起」と言われている。

 農民が武器を携えて自由と平等を求めて、借金、重税からの解放のみでなく政府打倒に立ち上がったことに恐怖を抱いた山縣有朋らは、秩父困民党の闘いを「困民救済の革命」「暴動、暴徒」として扱い、初めて軍隊が出動し、人民に銃をむけて弾圧した事件でもあります。
 戦後しばらく、指導者たちの家族は「非国民」「火付け、強盗」の汚名を着せられたものの、歴史研究家たちの粘り強い調査、研究によって、この秩父困民党事件の全貌が明らかになるにつれて、秩父事件は「自由民権運動の最後にして最高の形態」(井上幸治『秩父事件』中公新書)と再評価されるまでになりました。
秩父困民党
 今回の芝居には出てきませんが、秩父事件弾圧から5年後には、植木枝盛ら自由民権運動家が起草した「五日市憲法」をはじめとした草の根の民主的な憲法草案は無視され、伊藤博文らによって天皇制のもとでの「大日本帝国憲法」(明治憲法)を施行。さらにそれから5年後には、朝鮮半島に出兵し日韓併合、日清戦争に突入するのです。
 
 こうした日本の近代史の大きな岐路、変わり目において「日本はこのままでいいのか?!」と問いかけたのが秩父事件だったともいえます。秩父事件から132年経った今日、この秩父事件に立ち上がった人々が思い描いた重税・貧困なき社会、自由と平等な社会、戦争のない社会は、いまだ実現できていないのが現状です。
 秩父事件の舞台化を通して、今日の時代の在り様をともに考える契機となれば幸いです。

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困民党要求・軍律「秩父事件ホームページ」より)

【秩父困民党軍律】
 第一条 私ニ金品ヲ掠奪スル者ハ斬
 第二条 女色ヲ犯ス者ハ斬
 第三条 酒宴ヲ為シタル者ハ斬
 第四条 私ノ遺恨ヲ以テ放火其他乱暴ヲ為シタル者ハ斬
 第五条 指揮官ノ命令二違背シ私ニ事ヲ為シタル者ハ斬

【秩父困民党目標】
 一 高利貸のため身代を傾ける者多し。よって債主に迫り10カ年据置40カ年賦に延期を乞うこと
 一 学校費を省く為3カ年間休校を県庁に迫ること
 一 雑収税の減少を内務省に迫ること
 一  村費の減少を村吏に迫ること

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