原発ゼロに舵を切った台湾・蔡英文政権 市民運動の勝利をアジアのモデルに

 台湾の民進党政権が原発ゼロに舵を切った。その一方で、インドは原発大国をめざして突き進み、安倍政権はそれを全面支援する姿勢を強めている(記事)。アジアの原発をめぐる二つの動きを紹介する。(大野和興)

原発ゼロに舵を切った台湾・蔡英文政権

原発ゼロに舵を切った 台湾・蔡政権 

蔡英文総統

原発ゼロに舵を切った蔡英文総統


 台湾の蔡英文(ツァイインウェン)政権が原発ゼロに舵を切った。2025年に「原発ゼロ」にする。
行政院(内閣)は、再生エネルギー事業への民間参画を促す電気事業法の改正案を10月20日に閣議決定、太陽光と風力発電を中心に再生エネの割合を20%まで高めることを目指す。改正案は近く立法院(国会)で審議に入り、年内の成立をめざす。改正案は25年までに全原発停止と明記している。

 台湾は現在、第一から第四まで8基の原発を保有し、そのうち3基が稼働している。原発の発電量は全発電量の14・1%(2015年)を占めている。
原発ゼロに舵を切った台湾・蔡英文政権 台湾政府はこの原発に代わる電力源として、太陽光と風力を柱とする再生エネルギーを位置づけている。
 また改正案は、これまで台湾電力に独占されていた電力事業を逐次民間に開放することにしている。第一段階では再生エネルギーの発電と売電を民間に開放する。

 台湾政府が、原発ゼロに舵を切ったきっかけは日本の福島第一原発の事故にある。ノーニュークス・アジアフォーラムによると、東芝・日立が原子炉を輸出した台湾第四原発は、ほぼ完成していたが2014年4月27日、5万人のデモ隊が台北駅前の8車線道路を15時間占拠し、稼働を阻止。凍結にもちこんでいた。
 2016年7月28日、台湾立法院(国会)で、凍結にかかわる予算が削除され、廃炉に大きく近づいた。こうした反原発市民運動の高まりが、今回の政権の判断の背後にあった。

【第四原発中止を要求して幹線道路を座り込みで封鎖する5万人の学生・市民(2014)】
第四原発稼働阻止闘争(2014) 第四原発中止を要求して5万人が幹線道路を座り込みで封鎖

【第四原発阻止を掲げ国会議長席を占拠する野党(当時)民進党の議員(2013)】
台湾第4原発稼働阻止闘争 台湾第4原発稼働阻止闘争

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新自由主義と環境破壊の「中台貿易協定」に反対し、国会突入占拠闘争(2014)を牽引した緑色公民行動連盟の声明

「選択の権利を奪い返す!国会占拠支持および参加について」

緑色公民行動連盟

国会を突入占拠した台湾学生たち

国会に突入占拠した台湾学生たち

 3月18日の夜、台湾と中国との間で結ばれた「サービス貿易協定」に反対する青年および市民は、立法院議事堂に突入、歴史上経験のない「国会占拠」の幕が開かれた。この夜から、一万人以上にのぼる市民が議事堂の周りに集まって、占拠を応援し、「サービス貿易協定を撤回! 民主主義を守ろう!」と訴えてきた。

 緑色公民行動連盟は、長い間、原子力発電、エネルギーの政策転換、および環境、資源配分のガバナンス問題にとりくんできた。こういったイシューは、サービス貿易協定をめぐる争議とは無関連のように見えるが、現在原発反対運動がおかれた状況からみれば、実に類似している。いずれも、政治と経済の構造的抑圧に直面しているのだ。

 市民団体による長い間のとりくみの積み重ね、また福島原発事故の教訓を受けて、脱原発を支持する市民は6割を超え、安定した多数を占めるようになった。しかし、人々は徐々に以下のようなことに気づいた。すなわち、「なぜ、多数派の意見が、いわゆる民主主義体制のなかで、うまく反映できないのだろうか」ということである。

 現在の台湾では、行政権はもはや統治者の原発擁護・推進のための暴力装置になってしまい、民意を受けとめる窓口としての国会もまた、党議の拘束をうけ、市民の望みから目をそむけている。さらに、代議制民主主義の補完としての国民投票は、多数の民意を反映できないように操作され、反対の世論を封鎖するための道具になってしまった。

 そこから、この「民主主義体制」は、実は民主主義をうらぎるもので、あくまでも支配者が異議を抹消する道具にすぎないと、多くの国民は気づいた。

 サービス貿易協定をめぐる争議においても、同じようなことが起きた。過半数以上の国民は、メリットとデメリットが知らされないまま、政権が独断専行で協定に調印し、通過させようとしていることに疑問を持っている。にもかかわらず、行政権と立法権を握る国民党政権はそれを無視し、強行に進め、我々に選択の権利をあたえようとしない。

 つまり、すべては「選択の権利」に関わってくる。現行の「民主主義体制」は、片や選挙を通して、有権者が賢く有能な人物や政党を選出できると公言している。しかし、同時に、選挙制度、国民投票権、罷免権を骨抜きにすること、そして、与党・野党と各利益団体とのさまざまな利益交換を通じて、少しの隙間も無いほどに政治的空間をコントロールしている。その結果、利益共同体から除外されるわれわれは、選択の権利が奪われることになる。

 これこそ、緑色公民行動連盟が国会占拠を支持、そして力を尽くして声援する重大な理由である。体制が統治者の抑圧装置・道具になれば、われわれはこの体制を機能させないことによって、持つべき政治権利を奪い返すしか、選択はないのではないか?

 サービス貿易協定の背後にある経済ロジックに目を向けると、これもまた馬政権による原発推進のレトリックと極めて類似している。利益集団や政治的支配者が、資本の利潤を最大化する道を選択してしまえば、もう国民には「NO」をいう権利は許されない。

 環境や労働者の剥奪を通して利潤を蓄積する資本は、ある国・地域で行き詰まったら、また国境をこえて、未開発のさまざまな資源を蚕食していく。この残酷なプロセス・企みを包み隠す言葉こそ、「経済成長」「自由化」なのである。

 台湾がこの20~30年間に経験したことは、無限な成長と自由化が虚妄であることを証明している。その結果として、格差の拡大、環境資源の枯渇、国家財政と社会福祉の破綻、農業と土地の不平等などの問題を招いた。これはもはや難しい学術的な予測ではなく、われわれが実際に肌で感じたことではないか。体制のいう利益はわれわれのところにまわってこない。それにもかかわらず、その負の結果はわれわれが背負うことになる。

 サービス貿易協定は一連の経済自由化の推進の始まりにすぎない。このあとは、「両岸物品貿易協定(兩岸貨品貿易協議)」、「自由経済特区(自由經濟示範區)」、さらにほかの国とのFTAが進めれる予定である。これらはすべて資本利益のカンフル剤にすぎず、しかしその代償は台湾の国民のほかの経済的自立選択の可能性を失うことである。

 したがって、サービス貿易協定への反対は、異なる産業利益の優劣の計算にとどまらず、このようなロジックのもとでは、美しい未 来はありえないと見抜き、異なる発展を選択する権利を奪い返すたたかいでもあるのだ。

 ここ数年、緑色公民行動連盟は、中国のさまざまなジャンルの市民団体と交流・協力し合ってきた。そのなかで、お互いが異なる政治的歴史的文脈をもつことがわかると同時に、中国特有の政治経済状況のもとでの市民団体のさまざまなとりくみは、民主主義の陣営に入ったと自賛する台湾にとっても意味深いことに気づいた。

 そこで、ここで呼びかけたいことは、中国政府の侵入を警戒すると同時に、中国社会と市民への敵視は誇張するべきではないということだ。中国のさまざまな側面を理解することによってのみ、両岸人民にとって適切な関係および今後の方向を見つけることができるのだ。

 3月18日から、多くの市民はそれぞれの思いや期待を持って、議事堂の内外に集まって、占拠活動を守ってきた。有意義な議論や思考がそこでなされている。これはまた、台湾各地にも広がっていった。こうした一回一回の行動、対話、協力を通じて、ますます多くの民主主義の実践、および発展のイメージが生みだされている。

 これこそ緑色公民行動連盟が今回の運動に参加するもっとも大きなモチベーションである。「われわれにはどんな選択肢が残っているのか?」という鋭い質問は、政府・資本集団への挑戦であるばかりではなく、また、「われわれ」自身への問いかけでもあるのだ。

ノーニュークス・アジアフォーラム通信No.127より

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