書評】『武器輸出大国ニッポンでいいのか』あけび書房/大野和興

日本の武器輸出大国化の現実を追い詰める
武器輸出反対ネットワーク(NAJAT) 武器輸出三原則の緩和を言い出したのは民主党(当時)の野田政権に時代だが、政権が自民党に移り、安倍政権になってから急速に進んでいる。

 中国、北朝鮮の脅威をいいたて、自衛隊の軍備増強を進め、それをてこに東アジア・東南アジアを武器市場とし、日本の経済成長戦略アベノミクスの中心軸に据えようとする思惑が透けて見える。防衛省と日本企業はイスラエルとの無人攻撃機ドローンの共同開発に乗り出そうとするなど、軍事産業国家をめざして官民挙げて動き出している。それは、経済も科学技術研究も、企業活動もメディアも文化も、すべてが軍事化に向けて、ある時はソフトに、ある場合はハードな手法で統合される過程でもある。

 本書はその実態を官僚世界、軍事ビジネス、学問研究などさまざまの分野から、元官僚、新聞記者、学者、市民活動家が報告したものだ。日本はアジア太平洋戦争の敗北から学んで平和憲法を持ち、国民的論議を経て軍事費の抑制、武器輸出はしない、といった宣言を国レベルで行ってきた経過がある。しかし、ここ何年かの動きを追った本書の報告から見えてくるのは、いまや日本で軍産官学複合体が形成されつつあるという現実である。

 さらに問題なのは、そうした動きに対する歯止めが次第に劣化し、弱くなっていることだ。元通産官僚で、テレビ朝日の報道ステーションのコメンテーターを務め、安倍政権の圧力で降板させられて経歴を持つ古賀茂明さんは、本書で市民運動家杉原浩司さんの質問に答え、防衛利権・軍事利権が形成されてきている実態、そうした動きに違和感を持つ「良識ある官僚」が孤立せざるを得なくなっている状況、マスメディアも鈍くなっているさまを、リアルに語っている。

 武器輸出問題、日本の企業の軍事化を追っている東京新聞記者望月衣塑子さんは、幸い失敗におわったが、官民挙げて推進したオーストラリアへの潜水艦輸出の経過を詳細に追跡、日本産業の軍事化を実態をリアルの暴いている。
 宇宙物理学者として、大学・研究現場の軍事化反対運動の先頭に立つ池内了さん(名古屋大学名誉教授)が展開する軍学共同の歩みと、それがもたらす影響を論じた章は圧巻である。安保体制の下での米軍の日本の科学研究への接近、安倍政権になってから急激に進む大学への接近と防衛省の軍事技術戦略、それに対する科学者の対応と右往左往ぶり、それでも広がる「軍学共同反対の科学者ネットワーク」の健闘。

 最後に、武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)を立ち上げ、精力的に日本の軍事国家化に対する反対運動を展開している市民活動家の杉原浩司さんが、運動の現場から「まだ間に合う」と報告する。古賀さんいう通り、市民の歯止めがあれば、まだ間に合うのだ。そんな確信が生まれる好論文である。

武器輸出大国ニッポンでいいのか
  • 望月 衣塑子, 池内 了, 杉原 浩司, 古賀 茂明
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大野 和興

大野 和興ジャーナリスト

投稿者プロフィール

1940年生まれ、ジャーナリスト(農業・食料問題)。本紙編集委員、『日刊ベリタ』編集長、アジア農民交流センター世話人、脱WTO/FTA草の根キャンペーン事務局長、日本国際ボランティアセンター理事、国際有機農業映画祭実行委代表などを務める。『日本の農業を考える』(岩波ジュニア新書)、『食大乱の時代』(七つ森書館)、『百姓が時代を創る』(七つ森書館)、『農と食の政治経済学』(緑風出版)など著書多数。

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行動予定

4月
23
18:00 第14回怒りのデモ 森友問題の核心... @ 大阪城公園「世界連邦平和像」前
第14回怒りのデモ 森友問題の核心... @ 大阪城公園「世界連邦平和像」前
4月 23 @ 18:00 – 20:00
第14回怒りのデモ 森友問題の核心は安倍昭恵と晋三だ! @ 大阪城公園「世界連邦平和像」前 | 大阪市 | 大阪府 | 日本
■日時:2018年4月23日(月)18時集会、19時デモ出発 ■場所:大阪城公園「世界連邦平和像」前  大阪市中央区大阪城1-1 (大阪城公園 大手前広場)  大阪城の西側。大阪府庁のほぼ正面の道路を渡った広場にあります。 ■主催:「森友問題」疑獄を許すな!実行委員会  連絡FAX06-6304-8431
4月
26
18:00 沖縄意見広告運動全国キャラバン ... @ 連合会館
沖縄意見広告運動全国キャラバン ... @ 連合会館
4月 26 @ 18:00 – 20:00
沖縄意見広告運動全国キャラバン 歓迎と激励の集い @ 連合会館 | 千代田区 | 東京都 | 日本
■ 沖縄から出発した全国キャラバン隊が東京に来ます 4.26「歓迎と激励の集い」に参加ください  1月17日に沖縄辺野古現地を出発点とした沖縄意見広告運動の全国キャラバン隊が、沖縄コースを経て、2月には四国コースを、さらに九州コースなどを回り、4月には23日名古屋、24日静岡、25日千葉を経て26日東京に入ります。  そこで、全国キャラバン隊の皆様を迎え、各地での行動報告を聞き、その労をねぎらい、激励する集いを持ちます。是非、ご参加ください。 ● 日時:2018年4月26日午後6時~ ● 会場:「連合会館」2階201号室  東京都千代田区神田駿河台3丁目2−11   東京・JR御茶ノ水駅より徒歩3分 ● 主催:第9期沖縄意見広告運動  http://www.okinawaiken.org/ 沖縄意見広告運動とは? 沖縄の痛みを、全ての人びとの痛みとして、みんなで受けとめよう! 「普天間即時閉鎖、辺野古(海・陸)やめろ、海兵隊いらない」 このような想いのもと、沖縄意見広告運動は2010年3月に発起されました。国内外の新聞各社への意見広告掲載を中心に様々な活動を行なっています。 意見広告には、公表可能な賛同者の方々のお名前を掲載しています。 【第8期 国内向け意見広告】 掲載日:2017年6月3日 掲載紙:琉球新報、沖縄タイムス、朝日新聞 各朝刊 賛同者総数:12,548件 公表可:10,481件 匿名希望:2,067件 賛同団体:437件 ■ 第9期広告の掲載日は6月3日(日)予定 1万5000件の賛同目標実現にお力を!  賛同者のみなさま。いつもご賛同、ご支援をありがとうございます。  第9期沖縄意見広告の掲載日は6月3日(日)を予定し、沖縄2紙と全国紙との交渉に入りました。9期の目標は、第8期の1万件越えの成果を受け、さらに15000件の賛同を目標に、運動拡大に取り組んでいます。  どうぞ、友人、知人へ賛同の輪を広げて下さい。  振込表付きの第9期新チラシが必要な方は事務局まで連絡ください。  すぐに、お送りします。 沖縄意見広告運動事務局 ● 電話 03ー6382ー6537 ● FAX 03ー6382ー6538 ● mail info@okinawaiken.org (「コモンズ」117号の目次にもどる)

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