書評】サンダーズが展望するアメリカの未来(『世界』12月号)/大野和興

トランプに真っ向から対峙する人物が語るアメリカ
大野和興(ジャーナリスト)

最悪の二人、安倍・トランプ 米国の次期大統領になったドナルド・トランプをどう規定するかは、一筋縄ではいかないが、排外主義のレイシストで、扇動家であるといういい方は間違いではあるまい。政治家である前に、人間として最低の部類に属する人物像ではある。
 「類は友をよぶ」ということわざがあるが、世界の首脳のなかでいち早くトランプと面会した安倍首相が、面会直後の記者会見で「信頼できる人物と確認できた」と話したのは、自分はトランプと同類の人間だと認めたようなものだろう。トランプ・安倍会談に意味があったとすれば、安倍が自ら自分もレイシストであることを世界に知らしめたことにあるのが、とても面白い。

 今回の米大統領選はもう一人の人物を生みだした。ヒラリー・クリントンと最後まで民主党大統領候補の座を争ったバーニー・サンダースである。社会主義者を自任する人物が大統領になっていたかもしれないと考えると、トランプ大統領出現と合わせて、現代アメリカを象徴する出来事ではあった。日ごろのニュースに接していて感じるのは、いま米国でトランプに真っ向勝負を挑んでいるのはサンダースにつきるということだ。

 ではサンダースとは何者か。雑誌『世界』2016年12月号の特集「混迷するアメリカ―大統領選の深層」所収のサンダースへのインタビュー「サンダースが展望するアメリカの未来」がおもしろい。内容は多方面にわたるが、三つに絞って紹介する。

 一つ目は、サンダースのトランプ観「トランプは私の生涯で、主要政党から浮上した最悪の候補者」と最大級の表現で批判している。

「こいつはこの国にとって大きな災難であり、国際面ではわが国の恥です」


 二つ目は、彼の主張が実に具体的だということ。サンダースは「アメリカ国民が集まり、次のように声を上げることに手を貸すことが私の役割です」と前置きした上で、次のようにいう。

「そうだとも、私たちは公立大学の授業料を無料にし、大規模な雇用プログラムを作り出し、インフラを再構築し、女性に対する賃金平等を確立し、最低賃金を時給15ドルに上げるのだ。地域センターへの財政支援を二倍にし(中略)、気候変動に対し積極的な取り組みを行う。私たちは、金持ちの巨大企業に公正な税金を払うよう要求する」


 誰にもわかる具体的要求をひっさげ、彼は劣勢を跳ね返した。

 三つ目はサンダースの思想的バックボーンについて。サンダースが最も尊敬する人物は米国における社会主義の組織者ユージン・デブスであることはよく知られている。デブスについては、この『世界』の特集の古矢旬北海商科大学教授の紹介が役に立つ。1800年代末から1900年代にかけてのヨーロッパからの移入社会主義だった時代に、デブスは「アメリカ土着の労働者運動を興し、農民運動とも革新主義的な都市政治とも、第一次世界大戦の反戦運動とも連携」をとった。
 以下は、このインタビューにおけるサンダースの締めくくりの言葉である。

「ユージン・デブスに起こったことを調べてください。彼は生涯をかけて社会主義運動を構築するために努力し、それが壊れるのを見ました。それでも10年後に、デブスが話していた事柄の半分をフランクリン・ルーズベルトが拾い上げました。世の中はそうやって動いています。諦めるなどという贅沢はありません、いいですか?

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大野 和興

大野 和興ジャーナリスト

投稿者プロフィール

1940年生まれ、ジャーナリスト(農業・食料問題)。本紙編集委員、『日刊ベリタ』編集長、アジア農民交流センター世話人、脱WTO/FTA草の根キャンペーン事務局長、日本国際ボランティアセンター理事、国際有機農業映画祭実行委代表などを務める。『日本の農業を考える』(岩波ジュニア新書)、『食大乱の時代』(七つ森書館)、『百姓が時代を創る』(七つ森書館)、『農と食の政治経済学』(緑風出版)など著書多数。

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