共謀罪廃止の日まで共謀罪に反対しよう/永嶋靖久(弁護士)

萎縮しないで声をあげ続けることが大切




 共謀罪が、7月11日から施行される。
 共謀罪は、リストに記載の約300の罪のどれかを2人以上で計画し、計画した誰か一人が準備をすれば処罰する。ただし、実行前に自首した者は刑が減免される。法文上、適用対象は組織的犯罪集団に限定されていない。準備をしたときだけ処罰されるが、何が準備にあたるか法文上限定はない。

 これまでは、悪いことをしたら犯罪になるけれど、悪いことをしなければ何を喋っても何を考えても自由で、何が悪いことかは法律でキチンと決めてある。少なくともそれが建前だった。共謀罪は、悪いことを相談したら、あるいは相談を見たり聞いたりしたら犯罪になる。助かりたければ誰よりも先に警察に駆け込まないといけない。そして、何が悪いことかよく分からない。実行なしの計画が犯罪になるから、盗聴などの監視が日常的に必要となるし、密告や裏切りが奨励されることになるだろう。

 共謀罪のリストの中には、会社法や金融商品取引法、法人税法、著作権法などが含まれている。企業の新規事業や投資・節税等はこうした法律に関係するけれど、何が法律違反かはそう簡単に分からない。社内で担当者が、あるいは弁護士や公認会計士、税理士らと繰り返し議論しても、なかなか結論が出ないのが普通だろう。社内で適法と判断しても役所が違うことを言うかもしれない。

 ところが、いったん社内の議論の過程で計画があれば、最終的にやめると決めても、共謀罪になるかもしれない。また、役所が「その節税計画は違法だ」と言えば、実際には何もしていなくても共謀罪になるかもしれない。「特許権を侵害する計画だ」「実用新案権を侵害する計画だ」と言われれば、共謀罪になるかもしれない。共謀罪が国会で審議されている間、企業や自営業者に法的アドバイスをする弁護士たちが、共謀罪はビジネスを萎縮させると声を上げていたのももっともだろう。

 誰がどう考えても、これはテロ対策と何の関係もない。安倍政府はなぜこんな治律を国会でまともな議論もさせないで、強引に作ったのか。
 政府は市民がどこでどんな話をしているか、とにかく監視をしたい。戦争に、基地に、原発に、差別に、政治の私物化に反対すること等々、政府の気に入らないことはなんでも、それが実行に移される前に取り締まってしまいたい。政府のすること、しようとすることを批判する人間は放っておけない。そのためには企業や市民の自由な活動が犠牲になっても仕方ない。それが共謀罪を作った本音だろう。

 「自由より安全が大事」「安全のためには自由の制限も仕方ない」と言う人もいるけれど、共謀罪のある社会が安全だろうか。自由な議論のないところで企業活動の発展はない。そんな社会が安全だろうか。政府を批判すると警察がやってくるかもしれないとビクビクしないといけない社会。市民の言動は徹底的に監視されるが、政府は何の監視もなしに好き放題をする社会。政府の好き放題を誰も止められない社会。そんな社会が安全だろうか。

 共謀罪が守る安全は権力者の安全で、共謀罪が制限する自由は市民の自由だ。
 法律は国会を通ってしまったけれど、実際に政府の狙い通りになるかどうかは、これからの市民の行動にかかっている。政府は国会で「一般人には関係ない」「正当な活動ま対象にならない」と言っていた。政府がもしウソをついていないと言うなら、誰もが今まで通り、一般人として正当な活動を、萎縮しないで続けることが大切だ。共謀罪を廃止する日まで、共謀罪反対と共謀罪の適用を許さない声を上げ続けることが何よりも大切だ。

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