劉暁波さんを救え!人権派へ抑圧続ける中国政府/大野和興(ジャーナリスト)

劉暁波 2010年ノーベル平和賞を受賞したまま、獄中にいた中国の作家劉暁波(Liu Xiaobo)氏(61歳)は、肝臓癌末期と診断され獄外の病院に移送されたとの報が6月末世界を巡った。賞の受賞時、劉氏は「国家政権転覆扇動」の罪名で獄中にいた。現在劉氏に対しドイツと米国政府が出国治療を申し出ているが、中国政府は認めていない。この記事が出る頃もしかして劉氏は存命してないかもしれない。それ程容態は切迫している。その場合はどうか、劉氏への追悼文として、読んでいただきたい。(大野和興)

劉暁波さんとはどんな人?

中国の政治改革促す憲章起草の中心人物

世界は天安門事件の衝撃を今も鮮明に憶えている 2010年10月8日、獄中でノーベル平和賞を受賞した劉暁波さんは、刑務所で面会した妻の劉霞(Liu Xia)さんを通じて「平和、民主化、自由のために闘ってきた天安門事件の犠牲者すべてにこの賞をささげる」と語った。

 中国政府はこの受賞を批判し、受賞式に出席しないよう、各国に圧力をかけたが、多くの国の代表が参加。獄中にいる劉暁波さんのために、「空っぽの椅子」を用意した。

 劉暁波さんが「国家政権転覆扇動」罪という罪で懲役11年の判決を受けたのは、2008年12月。中国の政治改革を求める「08憲章」を起草したことが原因。同時に劉暁波さんの妻、劉霞さんも厳しい監視下に置かれた。

自由を求めた「08憲章」

中国にあるのか?常任理事国の自覚

 2008年12月に劉暁波さんが知人らとともに発表した「08憲章」。
 自由・人権・平等が人類共通の普遍的価値であり、共和・民主・憲政が現代政治の基本的制度枠組みであることを訴えたもので、中国が国連安全保障理事会の常任理事国として、また人権理事会のメンバーとして、人類の平和事業と人権の進歩に貢献することを求めた。

 中国政府は「08憲章」発表直後に劉暁波さんを拘禁し、その後半年間、警察は起訴もせず、弁護士との接見も許さなかった。当局は半年にわたって劉暁波さんを拘禁し続けたあと、2009年6月23日に政府転覆扇動などの容疑で正式に逮捕。わずか2時間の審理の翌日、同年12月25日に判決を下した。2010年2月に控訴が棄却され、11年の拘禁刑と政治権利はく奪が確定した。

 これに対して、2012年12月に134人のノーベル賞受賞者が、劉暁波さんの自由を求める書簡に署名した。2013年には、南アフリカのデズモンド・ツツ大主教(1984年ノーベル平和賞受賞者)の呼びかけで、130カ国45万人以上が劉暁波・劉霞夫妻の即時釈放を求める請願書に署名した。

香港でキャンドル集会

劉夫妻軟禁に抗議
劉暁波さん釈放を求める香港デモ
 劉さんはこれまで何度か中国政府から出国しないかとの打診を受けていたとされている。しかし劉氏は中国を離れることを拒否してきた。だが、がんの悪化という現実を前に、劉さんの妻の劉霞さんは4月に手紙を当局に送り、劉氏が夫妻で出国することに同意したこと、ドイツ政府が受け入れの用意を示しているとの意向を伝えていた。

 しかし今回は前述のようにそれを認めなかった。中国政府は、劉さんが中国を離れた場合、ノーベル平和賞受賞者として中国批判を展開するのを警戒している。そして、中国政府は劉さんに対し、適切な処遇をあたえていることをアピールしている。その一つがユーチューブに投稿された動画。タイトルは「劉暁波の獄中動画」。劉さんが診断、治療を受けている様子などが映っており、体制側が流したものであることはまちがいない。新聞報道では劉さんのがんは原発性の肝臓がんで全身に転移しているとしている。

 こうした動きに対し、劉さんの釈放・出国を求める国際的な市民活動も始まっている。6月28日夜、香港では市民200人が中心地区のセントラル公園に集まり、劉さんの釈放を求めるキャンドル集会を開いた。

 また国際人権団体アムネスティは、以下のような要請文を中国の李克強首相に送るキャンペーンを展開している。

「中国当局は今すぐ、劉さんが適切な医療を受けられるように、措置を講じるべきです。また、劉さんをはじめとする、自らの人権を行使しただけで投獄されている人びとを全員、即時無条件で釈放すべきです。当局はまた、劉さんの妻・劉霞さんを自宅軟禁に置いてきました。この違法な措置をやめ、訪問客との面会や自由な移動を認め、劉暁波さんと一緒にいられるようにすべきです」

人権団体も動き出す

無法逮捕続ける中国当局

 アムネスティは、この要請文で「自らの人権を行使しただけで投獄されている人びとを全員、即時無条件で釈放すべきです」述べている、 その一人が人権派弁護士の江天勇(Jiang Tianyong) さんだ。江さんは2009年、人権活動で当局に目をつけられ、弁護士資格をはく奪された。それ以来、江さんは、嫌がらせや拘禁、暴行を何度も受けながらも、人びとの人権を擁護するために活動を続けてきた。江弁護士は、6か月間以上にわたり、指定された場所で居住監視下に置かれたあと、国家政権転覆の容疑で、正式に逮捕された。

 故郷の河南省信陽に住む父親が6月5日、長沙市公安局から5月31日付の通知書を受け取ったという。その通知書に正式に逮捕したことが記されていた。通知書を地元の郵便局で受け取って帰宅した直後、父親は警官に警察署へ連行され、「逮捕の詳細は誰にも話さないように」と警告された。江さんが国家政権転覆罪で有罪となった場合、最高で終身刑となる可能性がある、とアムネスティ国際ニュースは伝えている。江さんは、現在、湖南省長沙市第一拘置所に拘禁されている。

 3月24日には白酒(パイチュウ)を製造・宣伝したとして、4人が起訴された。罪名は「国家政権転覆扇動」。
 白酒は中国でよく飲まれる酒で、天安門事件を記念する酒といわれている。起訴状によると、4人は、天安門事件を記念した白酒を作ることを思いつき、9000元(15万円程度)で酒とボトルを成都市内のスーパーマーケットで仕入れた。そして、「銘記八酒六四」のラベルを何種類か作り、ボトルに貼り付けた。
 「酒」は中国語で「九」と同音で、「八酒六四」は「8964」、つまり事件があった1989年6月4日を表している。4人は昨年5月26日、ネットで記念酒を告知するメッセージを発信し、2本で89.64元(1500円程度)の値をつけて販売した。「89.64元」という値段はもちろん、事件のあった「1989年6月4日」にちなんだものだ。
 4人は、昨年5月末から6月にかけて拘束され、空のボトル900本が押収された。彼らは現在、四川省成都市拘置所に収容されている。

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