シリア軍事介入ートランプ政権の戦略なき軍事行動が世界を不安定化する

トランプ大統領
 4月6日(日本時間7日)、トランプ政権は、4日にシリア北西部イドリブ県で起きたサリンとみられる化学兵器の攻撃(子供27人を含む72人が死亡)を理由に、シリアのアサド政権のホムスにあるシリア軍空軍基地関連施設を59発の巡航ミサイル「トマホーク」で攻撃した。

ロシアとアサド政権への「手のひら返し」
 シリア情勢を巡り、トランプ米大統領は選挙中から一貫して「ロシアと協力できればいいことだ」と繰り返してきた。また「IS(イスラム国)対策」としてロシアが支援するアサド政権への批判も封印し、逆に米欧が支援していた反体制派を「素性の分からない連中」と非難してきた。

 ’16年11月8日にトランプ大統領が当選すると、戦局有利と判断したロシアとアサド政権は反体制派の最大の拠点・アレッポを包囲・攻撃、12月15日に制圧していた。アレッポ東部では子供10万人を含む25万人が包囲下で生活、病院も攻撃を受け、食料は枯渇、1万6000人に上る住民が避難を余儀なくされ、死者と負傷者は1000人を超えた(シリア内戦では2011年3月18日~2016年9月12日の紛争での死者数は30万人―シリア人権監視団)。

 このような中で、今年3月16日、アレッポ県西方のシリア反体制派支配地域のジナ村でモスクが空爆され、少なくとも46人が死亡し、多数が負傷、過激派組織を狙った米軍が誤って空爆した疑いがあるとの事件も起きていた。
 そのような経緯の中、今回、トランプ政権は手のひらを返したように、突然、アサド政権への軍事攻撃に踏み切ったのである。

トランプ政権の安全保障政策の主導権を共和党主流派が掌握
 「既得権層」をデマゴギッシュに攻撃して大統領選に勝利してきたトランプ政権は、トランプ側近と与党・共和党主流派の対立を内包している。
 トランプ側近でロシアに親和的なフリン前大統領補佐官の辞任に続いて、4月、バノン主席戦略官も国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーを退いた。フリンの後任、共和党主流派のマクマスター国家安全保障担当大統領補佐官がNSC主要メンバーを再編。トランプ政権の安全保障政策は、当初の親ロシア的な政策から、共和党旧来の反ロシア的政策へと傾いていた。

相次ぐ看板政策の破綻を戦争的な緊張で塗り隠す
 新自由主義で富を築いたトランプが新自由主義で零落した白人労働者の利益を代弁するというデマゴギーでトランプは大統領の座に就いた。しかし、政権発足から2か月半、選挙公約の看板政策は次々破綻してきた。

 1月27日のシリアなど7か国からの難民を含む入国禁止を決めた大統領令は司法が差し止め、3月24日、医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト」(AHCA)は撤回に追い込まれた。さらに、「メキシコとの国境にメキシコの資金で壁を作る」計画はその展望すらみえていない。

 トランプ政権は、軍事行動で緊張と興奮を作り出し、このような看板政策の破綻を糊塗する行動に、今回踏み出したと言える。

東アジアの戦争の危機が現実化 安倍政権の戦争政治と対決しよう
 4月6日のシリア攻撃は、共和国(北朝鮮)の弾道ミサイル実験と米中会談のさ中に行われた。米中会談は成功が演出されたが、トランプ政権は共和国(北朝鮮)の核開発や弾道ミサイル実験に対しても今回と同じ軍事行動をとる可能性を突き付け、交渉の材料としたと言える。東アジアの戦争の危機は一挙に現実化した。
 世界を支配する力を失ったアメリカは、地域の権力対立に竿をさし、冒険的な軍事行動で世界を不安定化させていくであろう。

 安倍政権の集団的自衛権の容認―沖縄への基地建設―共謀罪新設の動きはアメリカの戦争政策へ追随していくものであったが、今や東アジアでの戦争が現実化したことでそれは一層危険なものとなった。中東の現実が示しているように、戦争が始まれば憎悪の連鎖が発生し、平和を再建していくことは極めて困難だ。様々な運動が連帯し、トランプ政権の軍事行動を支持する安倍政権にストップをかけよう。
(17年4月8日 佐藤 隆)

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