講演】東アジアの平和を!韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権の誕生を受けて/李泳采(イ・ヨンチェ)(恵泉女子学院大学教授)
(第八期沖縄意見広告運動東西報告集会から)
韓国民衆がキャンドルデモで生み出した文在寅(ムン・ジェイン)政権とは何者なのか。いかなる歴史的使命を帯びて登場したのか。人々は彼に何を託したのか。揺れる東アジアの一角にあらわれた文政権を軸に、気鋭の東アジア研究者が韓国民衆の思いに寄り添いながら分析する。アメリカ、中国、ロシアといった大国のパワーゲームが覆い隠す民衆の思いと希望を摘出し、東アジア民衆連帯の道筋を具体的に提起。沖縄の運動の意味を東アジアの過去、現在、未来を視野に位置づけ直し、安倍政権の存続の犯罪的意味をこの国の民衆運動に突き付ける。
講演】東アジアの平和を!韓国・文在寅政権の誕生を受けて
いま韓国では何が起きているのか
朴槿恵(パックネ)大統領はなぜ弾劾されたんだろうか。彼女の友人の崔順実(チェ・スンシル)さんの存在が明らかにしたのは、政治・経済癒着ということでした。30年前の軍事政権時代には当たり前のように横行していたことですが、民主化された今、起きていることに人々はショックを受けたわけです。しかもメディアはほとんど報道していませんでした。
とりあえず大統領弾劾裁判の判決が出ました。国家機密漏洩、職権乱用、サムスン等の大手企業からの収賄などで弾劾が成立した。大統領は3回も謝罪しましたが、自分の責任は何もとらず最後に「私の進退を国会に預ける」と言いました。身を預けるということは憲法改正しなければいけない。つまり「辞めない」ことを意味します。
大統領が辞めないと言ったその時、ソウルで100万人、全国で200万人以上がデモに集まりました。午後7時、参加者が一斉にキャンドルの灯を消しました。人々は、大統領府に向かって一斉に「闇は光りを消すことはできない」と叫びました。何度もウエーブを繰り返しながら「朴槿恵退陣せよ」と叫ぶ人々の声が山を背景にした大統領府に木霊(こだま)になって響き、大統領に恐怖心を与えたと思います。このデモは毎週土曜日に行われ、全部で18回、1700万人が参加しました。このデモが政治を動かしました。
直接民主主義と間接民主主義の両輪が政治を動かす
なぜ弾劾されたのか。憲法裁判の論理は第一に、朴槿恵大統領は検察の特別調査に一度も応じることがなかった。つまり憲法を守ろうとする意志がない事です。
第二に、これから未来に向けて憲法を守ろうとする意志がない者は立憲主義に基づき権力の座から降ろすべきだというのが、憲法裁判の判決です。最高権力者は憲法の上に立ってはいけない。憲法を守らない人は降ろすべきである。これが憲法裁判が示した大きな成果です。