講演】東アジアの平和を!韓国・文在寅(ムン・ジェイン)政権の誕生を受けて/李泳采(イ・ヨンチェ)(恵泉女子学院大学教授)

 結局鳩山政権も、そのあとの菅政権も「北朝鮮制裁論」に加担しました。翌月(2010年6月)の韓国の選挙でもし与党が圧勝していたら、北朝鮮への先制攻撃になっていましたが、国民がそれを防ぎ、与党を惨敗させたので、戦争シナリオは止められました。
 このように朝鮮半島と沖縄問題はリンクされているということを私たちは忘れてはいけないし、お互いの交流を回復させるべきです。そうでないと、戦争が起きたら双方が何もできないまま戦争に進んで行かざるを得ない。そんなことがいつでも起こりうることを私たちは警戒しなければなりません。

日本の植民地支配がもたらした沖縄と済州島の運命
済州島4・3虐殺事件

虐殺された済州島の人々

 なぜ沖縄と朝鮮半島がリンクされているのか。これはアメリカの戦後体制の影響によるものです。1945年8月、日本の植民地支配が終わったあと、アメリカとソ連が朝鮮半島に入りました。日本は政権が認められ間接統治になりましたが、アメリカの直接統治になったのは2カ所だけ、朝鮮半島と沖縄です。

 沖縄と朝鮮半島はアメリカの東アジア戦略にこの時期から組み込まれ、これが完成したのは朝鮮戦争が勃発し、米韓相互防衛条約、日米安全保障条約が同時に成立した時です。その結果、日本は戦後賠償もなく経済協力によって復興を遂げました。このあと、非武装地帯、朝鮮半島、沖縄に海兵隊を駐留させることで、沖縄は東アジアの「キーストーン」に変わっていくことになります。

 ベトナム戦争時には、韓国は戦場に行く国、日本は後方基地となる国。まさに日本と朝鮮半島はセットであり、アメリカから見れば東南アジア、東アジア含めてひとつの地図として見るだけなのです。私たちは沖縄の問題、日本の問題、韓国の問題を区別してみますが、米軍は同時に戦わないといけないと考えています。鳩山政権が倒れる前に、盧武鉉政権が潰れました。もしも鳩山政権と盧武鉉政権が同時期に登場していたら、東アジア情勢は変わっていたと思います。

 今、韓国は文在寅大統領を中心にしてもう一度、新しい時代をつくろうとしています。ここで日本で安倍政権が持続してゆくと、私たちは二度と無いチャンスを逃すことになります。日本で安倍政権を交代させ、文在寅政権と日本の新政権がいっしょに、市民の圧力を背景にして米軍を追い出すことが、最後に東アジアの戦争を防ぐチャンスではないでしょうか。

 沖縄問題と朝鮮半島の問題をもっと遡ると、日本の植民地時代末期、沖縄は本土上陸を防ぐための戦場になりました。日本ではあまり知られていませんが、日本軍が海外で本土作戦に備えて基地化したのは済州島(チェジュド)です。韓国駐留の全日本軍が済州島に集結し、済州島と沖縄をもって本土を防衛するため、多くの人々が動員されました。
犠牲の死を問う
 済州島はなんとか上陸戦にはならなかったんですが、そのあとに米軍が入ってきます。米軍を見た済州島の住民は「これは帝国主義の延長だ」と思って抵抗したために4・3虐殺事件にいたりました。台湾でも1947年に2・28虐殺事件が起こりますが、共通点は日本の植民地政策が影響したということです。

 植民地時代から日本と沖縄、済州島はそういう形でリンクされ、戦後も2つの地域が軍事化されていく状況が続いています。私たちは辺境の地済州島と沖縄に基地を置き、海岸地域にエネルギー施設を置いて、東京とソウルの利益を守るために犠牲の構図を作ってきました。私はその辺の事情を『犠牲の死を問う』(梨の木舎 (2013/08)という本にしました。

歴代大統領の腐敗の連鎖の後に登場した新しい「革命の世代」
韓国キャンドル革命 韓国では、87年6月の民主化運動を「未完の革命」と位置付け、いま、民主化のための新しい革命の課題を打ち出しています。これらの闘いの下敷きとなっているのは労働運動・平和運動です。

 2008年、アメリカとの牛肉輸入問題で100万人キャンドルデモが起きたことがあります。この時には最初は市民たちが旗を立てていました。しかしこの市民たちの運動では「ぬるい」と思って労働団体、運動団体が運動の前面に立ってスローガンを訴えたところが、政府権力によって暴力的に潰されてしまい、「韓国民主主義は死んだ」と言われるような事態となりました。

 今回あらためて「パンドラの箱」が開かれ、キャンドルデモが起きました。労働運動・平和運動は前面に立って闘いたい気持はいっぱいありましたが2度と失敗したくない。そこで民主労組などの労働団体は百万人デモ成功のため背後に退き、ひとりも前面には出ませんでした。そこには、このチャンスを生かしたいという民衆側の、涙無しには語れない傷みがありました。

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