テロ等準備罪=共謀罪の国会提出を阻止しよう!/永嶋靖久(弁護士)

国家に異を唱え、抵抗・反対する労働者・市民への治安弾圧法
テロ等準備罪=共謀罪の国会提出を阻止しよう!
治安維持法

東京オリンピック口実の「壮大なペテン」
 公明党が共謀罪の今国会提出を容認する方向で調整に入った、このため今国会で共謀罪が成立する可能性が高まった、とマスコミは報じている。
 曰く、「組織的犯罪集団と準備行為を構成要件に加えて,適用対象を限定した。罪数も減らす。これまでの共謀罪とは全く違うから一般人には関係ない。」「東京オリンピック・パラリンピックを控えて、テロ対策の条約批准のために共謀罪が必要だ。」これが政府与党の言い分だ。共謀罪をめぐる動きを日刊ゲンダイは「壮大なペテン」と呼んだ。まったくそのとおりだ。

名前を変えても本質は変わらない
「テロ等準備罪」の問題はどこに
  
 まず第1に、そもそも今国会で早期成立を目指すという法案の条文が、国会が始まった今も公表されない。法律を作ろうというのに、法文を明らかにしないままで、その要件や効果を議論できるはずがない。ところが、具体的な条文の公表がないまま、政府の言い分だけがマスコミに流されている。

 第2に、「組織的犯罪集団」という言葉を付け足したところでこれまでと変わりない。何か犯罪を共謀したとする時点で組織的犯罪集団が形成されたと言えばいいからだ。それだけでなく、組織的犯罪集団は将来できるもので構わないから、組織的犯罪集団が共謀の時点で形成されたという必要さえない。
 「テロ組織」や「暴力団」に加入していようといまいと、共謀罪は成立する。2人で合意しただけで共謀罪が成立しうるのは「テロ等準備罪」も「共謀罪」も全く同じだ。

 第3に、「準備行為」は何の限定にもならない(一部のマスコミは「準備行為」を構成要件と呼んでいるが、正確には処罰条件であって構成要件ではない)。誰がどんな準備行為をするか、事前の合意は不要だし、事後に認識する必要もない。また、誰か一人でも共謀に基づいて何か準備したと認められればそれでいい。何をもって準備というか、なんの限定もない。相談のメモ・会議の後の団結ガンバロー・・・何でも準備行為に当たるだろう。共謀の後、全員翻意しても、翻意の前に準備行為があったと言われれば共謀罪で処罰は免れない。

 第4に、条約批准と共謀罪は何の関係もない。共謀罪を成立させないと批准できないと政府が言うテロ対策の条約とは国連越境組織犯罪防止条約を指す(国際組織犯罪防止条約ともパレルモ条約ともTOC条約ともいう)。しかし、まずこの条約はマフィア対策でありテロ対策ではない。
 次にこの条約の立法ガイドによれば共謀罪を創らなければ批准できないとはされていない。さらに政府は600の犯罪について共謀罪を新設しないと条約に批准できないとこれまで言い続けてきた。それがここに来て、500でも批准可能、300でも批准可能などとバナナのたたき売りのように対象罪数を減らすと言い出した。条約批准など口実に過ぎない。
 そもそも、この条約に批准しないことで誰が困っているのだろう。その一方で1919年採択されたILO(国際労働機関)1号条約(工業的企業における労働時間を1日8時間かつ1週48時間に制限する条約)を、100年近く経った今も日本政府は批准しようとしない。

 第5に、いいか悪いかは別として、日本にはすでに十分すぎるほどに「テロ対策」の法律がある。
 秘密保護法は法律としてはじめてテロリズムをこう定義した。「政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊するための活動」。この定義に従えば、爆取を始め13の共謀罪,内乱・外患・私戦予備など8つの陰謀罪、殺人・放火・誘拐,化学兵器,サリン,航空機の強取など35の予備罪を持つ日本で、これ以上どんな立法が必要なのか。
 安倍首相は、共謀罪ができれば「ハイジャックの相談の後、誰か一人が航空券を買えば、それだけで全員を一網打尽できる。テロを未然防止できる。」と自画自賛した。しかし、今でもハイジャック目的で航空券を買えばハイジャック予備罪として処罰されるのだ。安倍首相はここでもをついている。
 公衆便所の落書きやキセル乗車や万引の相談を処罰しようとする共謀罪法案のどこがテロ対策だろう。まして、日本では犯罪が激減しているのだ。

国家の沖縄新基地、自衛隊派兵、原発、改憲諸策に
抵抗・反対する労働者・市民への治安弾圧法
 第6に、安倍首相は「共謀罪なしには東京オリンピック・パラリンピックを開けないと言っても過言ではない」と言う。しかし、彼は、オリンピック・パラリンピックの招致演説で「今も2020年も世界有数の安全な都市、東京」と大見得を切っていたのだ。政府与党は、嘘に嘘を重ねながら、共謀罪法案を成立させようとしている。なぜ、そこまでして安倍は共謀罪にこだわるのか。

 共謀罪は大改悪された盗聴法や新設された司法取引とあいまって、ただでさえ、えん罪を生む可能性を飛躍的に高める。共謀罪は治安維持法と違って、特定の思想を標的にしていないから、その気になれば、政府に異論をとなえる者、将来となえるかもしれない者を、広く一網打尽にできる。共謀罪が可能にするのはそういうことなのだ。

 安倍が共謀罪を必要としているのは、オリンピック・パラリンピックだからではなく、沖縄、自衛隊派兵、原発、改憲等々をめぐる情勢ゆえにだ。
 しかし、与党間の談合だけで共謀罪法案の成否が決まるなら、これまで3度にわたって共謀罪法案の廃案を勝ち取ることはできなかった。テロ等準備罪とは何か、それが人々の前に明らかになればまたもや廃案の憂き目に遭うしかない。そのことをよく知っているからこそ、政府は嘘に嘘を重ねているのだ。
 テロ等準備罪は共謀罪が名前を変えただけのものだ。そのことをさらに広く暴露し、人々の力で国会提出を阻止しよう。

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