アジアの現実から朝鮮問題をとらえ直す/大野和興
-一体化するアジア経済

プーチン15年ぶり北朝鮮訪問 2000年7月、プーチンは15年ぶりに北朝鮮を訪問した。金正日政権の時代だ。この訪朝でプーチン大統領は露朝の 経済関係を拡大する意向を表明し、シベリア鉄道と北朝鮮・韓国とを繋ぐ新しい鉄道計画 を提案し、またシベリアと朝鮮半島を繋ぐ天然ガスパイプラインを建設する計画を表明した。その後、金正日もロシアをたびたび訪問し、両国の関係の深化に努めた。

 このときの関係は今も生きている。2017年10月1日の産経ニュース電子版に以下のような記事が掲載された。、
「プーチン大統領は9月上旬、極東ウラジオストクで開催された経済フォーラムで、北朝鮮の核問題解決に向けて同国を極東の『協力の枠組み』に引き入れるべきだと主張し、具体的に(1)露・朝鮮半島を結ぶ道路・鉄道網の整備(2)パイプライン敷設(3)北朝鮮の港湾活用-を提唱した」
 同記事は続けて、文韓国大統領の姿勢に触れ、経済フォーラムの直前、文大統領は露政府系紙に「韓国・北朝鮮双方が繁栄するような経済社会を構築したい」と述べ、計画実現に強い意欲を表明すると同時に、フォーラムにおいて「北朝鮮との関係が改善すれば同国経由でロシアからパイプラインを引くことも可能になる」などと踏み込んだ発言をした、と伝えている。

 プーチン大統領は北朝鮮制裁問題で一貫して対話路線を主張してきている。その背景には、きわめて現実的な経済権益確保という意図があることがわかる。この経済権益は朝鮮半島だけでなく、北方領土を含むロシアの極東開発という国家戦略に直結しているのである。

一帯一路と極東アジア
 中国と朝鮮は今、深刻な対立状態にあるといわれている。しかしここにも、もう一つの現実がある。中国の壮大な世界戦略ともいえる一帯一路とのつながりだ。

 一帯一路とは中国の習近平国家主席が2013年に提唱した中国と欧州を結ぶ巨大な広域経済圏構想のことを指す。陸路で中央アジアを経て欧州に続く「シルクロード経済ベルト」が「一帯」で、南シナ海からインド洋を通り欧州へ向かう「21世紀の海上シルクロード」を「一路」と呼ぶ。沿線の国は約70カ国に上るとされGDPでは世界全体の30%弱、人口では世界の60%強を占める。中国の資金で高速道路や鉄道などインフラを整備し、巨大な経済圏の構築を狙っている。
中国の一帯一路構想地図 今年5月14~15日に北京で一帯一路に関する国際会議「一帯一路サミット」が開かれ、29カ国の首脳が参加した。日本は加盟国ではないが、安倍政権は自民党の二階俊博幹事長を派遣した。この席に朝鮮も登場したのだ。朝鮮は金英才(キム・ヨンジェ)対外経済相を会議に出席させる一方でサミット初日の5月14日、ミサイルを打ち上げ、会議を「祝賀」するという挙に出た。どういう意図があったのかはよくわからないが、朝鮮が一帯一路に多大な関心をもっていることだけは読み取れる。朝鮮は保有する豊富な地下資源と優秀で安い労働力は、世界のセンターをめざす中国にとって、魅力的なはずである。

一体化するアジア経済
 進藤榮一筑波大学名誉教授(アジア共同体論)は、急速に発展するアジア経済は今や「一体化」の段階に入っているとみる(『東アジア連携の道をひらく』進藤榮一ほか共編)。米国市場を最終需要地とする対米依存型発展モデルを脱し、アジア諸国が共通の利益を求めて互いに分業・分担し合う相互補完のネットワーク型発展のモデルを追求しているというのだ。

 ここでは安全保障概念は同盟と軍事力を軸にした伝統的な軍事安全保障ではなく、「不戦」と気候変動や災害、エネルギー・食糧危機、環境汚染などのリスクに対応する人間安全保障に転換されなければならない。進藤は次のように書いている。
「『異形に他者』を包摂して緊張緩和と軍縮を進め、地球環境との共生を図ること」「軍事力と軍事同盟中心の伝統的安全保障から、環境、エネルギー、食料を軸とした非伝統的安全保障への転移」

 いま大事なのは朝鮮問題も「圧力か対話か」といった枠組みを抜け出て、こうした文脈の中でとらえ直すことが必要なのだということを、アジアの現実は教えている。(大野和興)


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