「ソウル宣言」の精神をわが国に(その2)モンドラゴン・中心的家電

生産協組の破綻に学ぶ-新しい社会的形成のための協同組合とは?

丸山茂樹さん・関西講演から前号よりの続き

モンドラゴン協同組合企業


 中南米、アジアでいま拡がっているのは農民でも労働者でも消費者でも商人でも、みんな、一部の人間が絶対的な利益を得るやり方ではなくて、協同組合的なやり方をやっていかなければならない。しかしそうは言っても力が無いし、やっと出来ても経営が不安定な中企業、小企業、零細企業の人間が共生協同と言われただけでうまく行くはずがない。

 そのためにはやはり、ローカルガバメントというのですが、地域政府、地方政府、地方自治体と、その共生協同の勢力が連帯して仕組みを作っていく必要がある。もう国家は圧倒的な権力と武力と財政力を持っています。大企業は言うまでもなく、単に資金を持っているだけではなくて技術も持っており、そして権力とも近しい関係にある。それに対抗していくためには地域政府、ローカルガバメントと協同組合がもっともっと密な関係をしていく必要がある。そしてそれに本当に利害のためではなくて正義のために協力する知識人とか専門家とか芸術家とかというものが力を合わせなければならないという話なんですね。

 そんなこと言われたって「分かりきったことだ」と仰っしゃるかも知れませんが、実は昨年の11月にソウルで非常に重要な会合が開かれました。「グローバル社会的経済フォーラム」というフォーラムでありまして、ソウル市長のパク・ウォンスンさんという私も親しい市長さんがイニシアチヴをとって、世界中の協同組合の活動家と協同組合を熱心にサポートしている自治体の州知事とか市長さんとか副市長さんが500人程集まって、私も参加したんですけれども、そこで非常に大切な『ソウル宣言』というものを採択しました。
 今日皆さまにお配りした資料の中に、「韓国、ヨーロッパにおける社会的協同組合等の関連法律の動向」という文章と、「新たな協同の発見・ソウル宣言」というのが3ページほどございまして、後ほどこの話を致しますけれども、冒頭に話が出たのはイタリアの思想家であり革命家であったアントニオ・グラムシという人の言葉が盛んに引用されました。

モンドラゴン協同組合グループとは
アントニオ・グラムシん

アントニオ・グラムシ


 それはどういうことかと言いますと、現在は大変危機的状況だと言われている。富める者は富み、苦しい者は益々苦しくなる危機的状況だと良く言われる。でも危機というのは一体なんなのか。危機、危機と言うけれども、危機の内容を確かめる必要がある。

 それは、今までこれでいけば大丈夫だと思っていた古いものがもうそれではうまくいかない。古いものは死んだ。しかし新しいものもまだ生まれてきていない、一体これはどういうことなんだ。危機というのはまさにここにあるのだ。古いものは死んだのに新しいものが生まれてこないこれこそ危機なんだ、と。
 そして私たちの仕事は新しいものを一日も早く生みだすことなんだと。それが危機を突破することなんだと。危機だ危機だと騒いだり批判したり告発するだけではなくて、新しいものを生みだすことこそ大事なんだ。

 新しいものとはなんぞや。これが後ほどお話しをするソウル宣言とそれから社会的協同組合等ということと関係いたしますが、その前に私の今日のテーマであります世界の協同組合は一体どうなっているのかということで、最初はあまり面白くない、我々の気持ちを暗くしてさせてしまうような話をせざるを得ません。
スペインを代表する高級家電メーカーだったファゴール それはどういう話かと言いますと、世界で最も成功して最も模範的だと言われていた、スペインのモンドラゴン協同組合企業グループの中心組織の中でも中心と言われていたファゴールという家電製品ですね、いわゆる白モノと言われている冷蔵庫とか洗濯機とか、その他家電を造っているファゴールが去年の2月頃から経営危機が叫ばれまして10月に倒産しました。これはもうヨーロッパやスペインでは毎日のように報道されていまして、「これこそ未来の社会の理想的なあり方ではないか」と言われていたモンドラゴンの中心企業であるファゴール家電労働者協同組合が「なぜ倒産したのか」ということで話が持ちきりでございます。毎日のように新聞や雑誌が取りあげ、テレビでも色んな研究者が話をしております。

 詳しい話は避けますけれども、ともかくスペインのモンドラゴン協同組合グループというのは、製造業、皆さんが関係されております建設業や生コンや、その他の様々な協同組合だけでなく、ファゴールのような家電製品から機械、電子部品、自動車部品、そういうものまで一切を作っている生産協同組合。それからこれはヨーロッパで第5位の大きな協同組合。それから消費者生活協同組合。これもスペインだけではなくてフランスにもアフリカにも展開しております。それから金融共済保険の協同組合。それから研究所、専門学校、モンドラゴン大学という技術大学も持っている、言わば生産協同組合、消費協同組合、金融協同組合、研究専門学校、大学を引っくるめたモンドラゴン協同組合グループという、スペインで圧倒的な力を持っていた協同組合、他の地域では失業が多かったり非正規労働者が非常に多かったりするのですが、モンドラゴングループの中ではそれは非常に少ない。

 その協同組合の中核グループがなぜ倒産したのか。全部じゃあありません。200ぐらいある内の2つが倒産したということですから、全部が消えたわけではないんですけれども、今いろいろな研究や議論がされています。(次号につづく
(関西・S)

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