ロヒンギャ問題の背景をさぐる
-これは国家主導の人種差別政策・アパルトヘイトだ!

ミャンマー・仏教国の惨劇
これは国家主導の人種差別政策・アパルトヘイトだ!
 ミャンマー 仏教王国での惨劇
 ミャンマー(ビルマ)を追われるイスラム系少数民族ロヒンギャの人びとの状況は、世界最悪の難民問題といわれている。いったいなぜこんなことが起こったのか。国際人権団体アムネスティは、独自調査をもとに、問題の背後には長年にわたる構造的差別があったことを明らかにし、それは国家主導の人種差別政策であり、かつて南アフリカで実施された、人を人と見なさない「アパルトヘイト」に酷似する、と述べている。以下、アムネスティの調査から、その一部を紹介する(編集部)

天井のない監獄

ビルマ ラカイン州 ロヒンギャの人びとは、数十年にわたり国主導の差別を受けてきたが、仏教徒とイスラム教徒の間の衝突が多発した2012年以降、ロヒンギャの人びとへの迫害が、劇的に増えた。

 ラカイン州のロヒンギャの人びとは、そもそも外部の世界から遮断され、移動の自由を厳しく制限され、自分の村や地域から出られない状況だった。州の規定には、「外国人とベンガル族(ロヒンギャの人びとに対する軽蔑語)は、郡をまたいで移動するときには特別許可を必要とする」とある。ラカイン州北部では、別の村へ行く時でさえ許可が必要だ。また過去5年間、ロヒンギャ住民が大多数を占める地域では、説明もなく夜間外出禁止が発令されてきた。
 
 ラカイン州中部では、ロヒンギャの人びとは、自分たちの村や避難民キャンプから出ることができない。地域によっては、道路の使用も認められず、水路で移動するしかない。しかも行けるのはイスラム教徒の村だけだ。何とか許可を得ても、検問所にいる国境警備警察から賄賂の強要など嫌がらせを受ける。暴行や拘束もある。

 2012年に仏教徒とイスラム教徒が衝突したときも、数万人のロヒンギャの人びとがラカイン州の市街地から追い出された。現在、およそ4千人が町に残り、鉄条網で囲まれ、検問所があるスラム街のような地域で暮らしている。

医療からも教育からも締め出し

 移動の制限は、ロヒンギャの日常生活に壊滅的な打撃を与えている。州の医療施設は、どこでも総じて貧弱だが、ロヒンギャの人びとにとっては、さらに深刻な問題にぶつかる。

 州で最も設備が整った病院は、ロヒンギャの人びとには、非常に緊急性の高い場合を除き、利用を認められていない。緊急性が高い場合でも、その都度、州の認可が必要な上、警察官の同行を求められる。州北部以外では、ほんのわずかな医療施設しか利用できない。利用できたとしても問題が残る。ロヒンギャの患者は、「イスラム教徒病棟」に隔離されるからだ。この病棟は「刑務所内病院」と例えられることもある。

 聞き取りをしたうちの数人は、「隔離された患者は、家族に会ったり、町の店の食べ物が欲しければ、病院職員と警察に賄賂を払わなければならない」と話した。他の人たちは、「病院にはまったく行かなかった。医者や看護婦の手荒な扱いが怖いし、そもそも治療してもらえるとは思っていない」という。

地に堕ちた、アウンサンスーチー氏の威光

地に堕ちた、アウンサンスーチー氏の虚像

 2012年以降、当局は、ロヒンギャの人びとの教育を受ける機会を著しく制限してきた。州のほとんどの地域で、ロヒンギャの子どもたちも、以前は多人種の公立学校に通っていたが、今は完全に締め出されている。また教員は、しばしばイスラム地域の学校を拒否してきた。

 移動制限の強化で、ロヒンギャの多くが職を失い、収入減で食事代にも事欠くようなっている。農産物の販売を生業にしていた人は販売ルートや市場から締めだされ、農民は妨害により農地での作業ができなくなった。ロヒンギャの間では、栄養失調と貧困が日常化し、当局の制限で人道支援が届かないことも事を深刻にしている。

 また、イスラム教徒が多数を占める地域では、5人以上の集会が禁止され、モスクは封鎖されて朽ちるままに放置されていた。

否定される市民権

 ロヒンギャ差別を強力に支えているのが、差別的な法律や慣習だが、民族性を理由にロヒンギャの市民権を認めていない市民権法は特に問題だ。

 また、ロヒンギャの人にとって自分と家族のミャンマーでの居住を示す唯一の証明となるのが「世帯名簿」だが、2016年以降、新生児の世帯名簿への登録が、著しく煩雑になった。州北部では、年に一度の人口調査時に自宅にいなければ、その住民の記録は、役所の記録からすべて削除されるおそれすらある。

 今回の掃討作戦の結果、他国に逃れた人びとの帰国が、事実上不可能になった。過去2年でバングラデシュに逃れたロヒンギャの人びとが70万人に達することを考えると、この問題は深刻だ。

解体すべき「アパルトヘイト」

 こうした状況を明らかにしたアムネスティは、ミャンマー政府によるロヒンギャの人たちの扱いは、アパルトヘイト条約および国際刑事裁判所設置規定が定めた「アパルトヘイト」に相当すると結論付けざるを得ない、と断定、以下のように主張している。

 「ミャンマーは、ラカイン州のアパルトヘイト政策を解体する法的義務があり、これに加担した者たちの責任を追及しなければならない。ラカイン州は、さながらロヒンギャへの国家的犯罪の舞台と化した。忌まわしい差別と隔離は、ロヒンギャの人びとの日常生活のあらゆる面に入り込んでいる。この状況にメスを入れるには、この制度や政策、法律を即刻、解体するしかない。さもなければ、掃討作戦が終わっても、事態は何も変わらないだろう」

【緊急】ロヒンギャへの虐殺を止めて!(アムネスティ・ネット署名)
ロヒンギャを標的にした残虐な軍事作戦をやめるよう、今すぐミャンマー国軍司令官に要請してください。
緊急署名】ロヒンギャへの虐殺をやめて

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行動予定

4月
21
18:30 ゆれる歴史認識 トロントから「南... @ エルおおさか
ゆれる歴史認識 トロントから「南... @ エルおおさか
4月 21 @ 18:30 – 20:30
ゆれる歴史認識 トロントから「南京」「慰安婦」問題を巡って @ エルおおさか | 大阪市 | 大阪府 | 日本
 皆さんは ALPHA(第二次世界大戦歴史事実を守る会)をご存知ですか?  この会は1997年から第二次世界大戦のアジアでの戦争の歴史を学生たちやカナダの市民に正しく伝えようとカナダトロントで結成されました。現在 ALPHA の団体は、カナダやアメリカなどの都市で歴史認 識活動を展開しています。  「悲惨な戦争の歴史事実を知ってこそ、平和を大切に思い築いていける」との考え方は、カナダの歴史教師や中国系、韓国系市民に共感を受け多くのメンバーが活動に参加しています。私達「南京の記憶をつなぐ」会の趣旨とも重なります。  アジアの戦争中に起きた南京大虐殺や「慰安婦問題」731、細菌戦など、これまで日本やアメリカによって隠蔽されてきた歴史事実を、市民や若者に伝えようと教育界に働きかけて副読本作成や学生シンポ、サマーキャンプ、スタディーツアーなどの 幅広いグローバルな歴史教育を企画し実践しています。  カナダやアメリカでもここ数年、「慰安婦」少女像の建設、また昨年「南京大虐殺記念日」の制定をめぐって、日本の歴史修正主義者たちが攻撃をしかけました。私達は、今回トロント ALPHA のフローラ氏、 トロントと日本で取材活動をしている田中裕介さんを大阪に招請しました。北米での歴史認識活動の意義やそれを巡る状況、圧力などホットな話題をお話ししていただきます。皆さんぜひご参加ください。 ■日時:2018年4月21日(土)  午後6時10分開場 6時半開演 ■場所:エルおおさか 7階 734 号室  京阪地下鉄天満橋西へ5分 ■講演:フローラ・チョング(トロント MPHIAL副議長)     田中裕介(トロント在住ジャーナリスト) ■協力費:800円 ■主催:「南京の記憶をつなぐ」準備会 フローラ・チョングの略歴と講演: 「なぜアジアでの戦争の歴史を明らかにするのか」 香港出身。1987年にカナダへ移住。英国で修士号(社会正義及び教育学)取得。2005年から正規採用のボランティアとして勤務。以来、アジア太平洋戦争の文脈における人間性の価値と社会正義を批判的に理解する能力を養うための教育と一般社会の啓蒙のため助力してきた。高校、大学、コミュニティを訪問し講演し、国際会議などにアルファ・エデュケーションを代表して出席し発表してきた 現在、アルファ理事会の副議長及び所長として勤務している。 田中裕介の略歴と講演: 「カナダから見える『南京』や『慰安婦』の歴史認識」  北海道出身。早稲田大学卒業。1986年にカナダへ移住。日系コミュニティ新聞の日本語編集者として20年以上勤務し、取材過程で多くの日系人会議、日系史発掘、エスニック問題、人権運動と取り組んできた。1994年以来、民話や創作を英語で語る「語りの会」を主宰し、自らカナダのみならず NY、韓国などでも活動してきた。また、日本の大学などでカナダに関する講演もしている。現在はフリーランスとして、日系メディアや「戦争責任研究」等の学術誌に執筆してきた。訳書に「ほろ苦い勝利」(現代書館)「暗闇に星が輝く時」(朔北社)等。 アルファ教育財団とは  非営利慈善団体。アジア・太平洋戦争史の中でしばしば看過されてきた史実の啓蒙と批的理解を高め、正義と平和、和解の価値を探ることを使命とし4つの方向性を伴う教育と代表発言活動を行っている。 1. 教育者、学生と共に活動する・学校でのワークショップ、会議開催・教材制作、教育者のために研修旅行、会議を開催 2. 青年層の強化・学生主体で大学でのアルファ支部・夏季集中研修、インターンシップ 3. 研究支援 ・記録・資料館のデジタル化事業・大学研究インターンシップ・学生への支援 4. コミュニティの連携 ・映像制作:「アイリス・チャン・レイプ・オブ・南京」、「アポロジー」等・出版:松岡環著「南京引き裂かれた記憶」
4月
23
18:00 第14回怒りのデモ 森友問題の核心... @ 大阪城公園「世界連邦平和像」前
第14回怒りのデモ 森友問題の核心... @ 大阪城公園「世界連邦平和像」前
4月 23 @ 18:00 – 20:00
第14回怒りのデモ 森友問題の核心は安倍昭恵と晋三だ! @ 大阪城公園「世界連邦平和像」前 | 大阪市 | 大阪府 | 日本
■日時:2018年4月23日(月)18時集会、19時デモ出発 ■場所:大阪城公園「世界連邦平和像」前  大阪市中央区大阪城1-1 (大阪城公園 大手前広場)  大阪城の西側。大阪府庁のほぼ正面の道路を渡った広場にあります。 ■主催:「森友問題」疑獄を許すな!実行委員会  連絡FAX06-6304-8431
4月
26
18:00 沖縄意見広告運動全国キャラバン ... @ 連合会館
沖縄意見広告運動全国キャラバン ... @ 連合会館
4月 26 @ 18:00 – 20:00
沖縄意見広告運動全国キャラバン 歓迎と激励の集い @ 連合会館 | 千代田区 | 東京都 | 日本
■ 沖縄から出発した全国キャラバン隊が東京に来ます 4.26「歓迎と激励の集い」に参加ください  1月17日に沖縄辺野古現地を出発点とした沖縄意見広告運動の全国キャラバン隊が、沖縄コースを経て、2月には四国コースを、さらに九州コースなどを回り、4月には23日名古屋、24日静岡、25日千葉を経て26日東京に入ります。  そこで、全国キャラバン隊の皆様を迎え、各地での行動報告を聞き、その労をねぎらい、激励する集いを持ちます。是非、ご参加ください。 ● 日時:2018年4月26日午後6時~ ● 会場:「連合会館」2階201号室  東京都千代田区神田駿河台3丁目2−11   東京・JR御茶ノ水駅より徒歩3分 ● 主催:第9期沖縄意見広告運動  http://www.okinawaiken.org/ 沖縄意見広告運動とは? 沖縄の痛みを、全ての人びとの痛みとして、みんなで受けとめよう! 「普天間即時閉鎖、辺野古(海・陸)やめろ、海兵隊いらない」 このような想いのもと、沖縄意見広告運動は2010年3月に発起されました。国内外の新聞各社への意見広告掲載を中心に様々な活動を行なっています。 意見広告には、公表可能な賛同者の方々のお名前を掲載しています。 【第8期 国内向け意見広告】 掲載日:2017年6月3日 掲載紙:琉球新報、沖縄タイムス、朝日新聞 各朝刊 賛同者総数:12,548件 公表可:10,481件 匿名希望:2,067件 賛同団体:437件 ■ 第9期広告の掲載日は6月3日(日)予定 1万5000件の賛同目標実現にお力を!  賛同者のみなさま。いつもご賛同、ご支援をありがとうございます。  第9期沖縄意見広告の掲載日は6月3日(日)を予定し、沖縄2紙と全国紙との交渉に入りました。9期の目標は、第8期の1万件越えの成果を受け、さらに15000件の賛同を目標に、運動拡大に取り組んでいます。  どうぞ、友人、知人へ賛同の輪を広げて下さい。  振込表付きの第9期新チラシが必要な方は事務局まで連絡ください。  すぐに、お送りします。 沖縄意見広告運動事務局 ● 電話 03ー6382ー6537 ● FAX 03ー6382ー6538 ● mail info@okinawaiken.org (「コモンズ」117号の目次にもどる)

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