選挙分析】農村部の動きをどうみるか?
農村部でリベラル・革新が互角でたたかえる条件はそろっている

2017年衆議院選 新潟野党結集 2017年衆議院選挙で農村票はどう動いたのか。それだけを取り出した分析は、筆者が知る限り見当たらない。小選挙区制という枠組みのなかで都市部も農村部も野党は大負けししたのだから、都市標・農村票という分け方そのものがもはや意味を持たなくなったという見方も成り立つ。しかしそれでも、農村部の割合が高いところで、保守・革新がほぼ互角に競り合った北海道や新潟といったところもある。そうした地域を念頭に置きながら、農村選挙をどうみるかについて、過去を振り返りながら考えてみる。(大野和興)

北海道と新潟に見る政党別得票率

北海道 立憲民主党 とりあえず、北海道と新潟について、政党別得票率(「無所属」を含む)を整理しておく。
 まず北海道。ここは55年体制の時代、「社会党王国」といわれたこともある地域だ。今回の選挙では立憲民主党(以下「立憲))が頑張った。北海道の小選挙区では自民が44.19%を取ったのに対し立憲は31.13%を獲得した。以下、希望9.40%、共産5.93%、公明3.59%と続く。立憲・希望・共産を合わせると、自公とほぼ互角であることがわかる。

 これに対して新潟は民進から希望には行かず、無所属でたたかった人が善戦した。新潟小選挙区の自民の得票率は47.44%、公明はゼロ。これに対して希望を拒否して無所属で出た候補が40.47%をとっている。これに立憲の10.77%を合わせると、自公を超える。ここでは共産は野党統一ということで立候補者をおろした。こうして作られた「自公対リベラル・革新」という構図のもとで、得票率で勝ちを制したのは「リベラル・革新」だった。

戦後保守支配を支えた地方名望家

 北海道と新潟という事例でみる限り、現在の自民一強体制は闘い方と陣形の組み方次第でそれほど困難でなく覆せることが示されたのだ。ではどうすればよいのか。二つの側面から考える。

田中角栄 一つは、農村票とは一体何かという分析だ。農村票は保守の地盤であり、揺るぐことはない、というのが戦後の議会制民主主義のもとにおける選挙の常識であり事実であった。政治学者の石田雄(1923-)が「その秘密は、日本の保守政党は地方名望家の党だからだ」という意味のことを書いたのは1950年代だった。

 戦前の地主層につながる名望家は、一部没落地主もいたが、多くは農地改革など戦後民主化の中を生き抜き、地域社会を担った。市町村議員、首長、農協理事、農業委員、特定郵便局長、といった村の名誉職はそれら名望家の家をたらいまわしされた。地域の根っこのところですべてが一体化し、ねじれ合って日本の保守支配を支えてきたのである。

田中角栄による地域支配構造の再編成

小泉純一郎 田中角栄は土建業を村に起こし、東京(国家)の金を地域にばらまくことで、この名望家支配構造にくさびを打ち込み、上からの自民党支配体制を完成させた。しかし、この「名望家+土建支配」の構造は、80年代から始まる新自由主義グローバリゼーションのもとで次第に掘り崩される。

 グローバル化の波は地域社会を分断し、家族を解体させ、農村も共同性が消失した社会に変貌した。小泉純一郎は、郵政改革で特定郵便局長という農村の名望家支配の一角にくさびを打ち込んだ。安倍政権は農協解体という命題をひっさげ、小泉に続いた。農協解体を実際に担った切り込み隊長が息子の小泉進次郎であるのは、とてもおもしろい。

地域に核をもてなくなった自民党

 だが、自民党がかつての「名望家支配」、その改良・補強版としての「土建+名望家」に代わる支配の方式を手に入れたかとなると、首をかしげざるを得ない。グローバル化による規制緩和で、名望家はすでに絶滅種入りしており、地域社会に自民党を支える核はもはや存在しなくなった。

 かわって公募制などが採用されたが、そうして採用した新人議員は、その多くが品性・品格とも下劣で、おまけに勉強不足で役立たないときている。そこで三世、四世に頼らざるをえない。育ちはいいので品性・品格だけはなんとかということなのだが、修羅場にはめっぽう弱い。

 結論をいうと、農村には自民党を支える層も人材も見当たらないというのが現状だ。それなのになぜ自民党は勝つのか、という疑問がわいてくるが、答えは簡単で、対抗する野党の力量不足、という一言につきる。

弱者に光を当てた政策を

政権を奪回した前回総選挙での安倍の公約ポスター 野党がきちんと陣形を作り、主張をアピールできれば勝てる状況はすでに生まれている。それを明確に示したのが、今回の北海道と新潟であった。もうひとつの前例は2007年参院選だ。この選挙で自民党は、それまで独占していた1人区で次々と敗退、民主党に座席を譲った。次に来る政権交代への予兆を感じさせる選挙だった。

 背景にあったのは農村の困窮だった。このころ生産者米価は毎年数パーセントから10パーセントといった割合で下がり続けていた。自民党政府が、グローバル化に勝ち抜く“強い農業”をつくるため、米価抑圧政策をとったことがその背景にある。

 この状況にいちばん参ったのは、政府のいうとおりに借金をして規模拡大してきた大規模層であった。米価低落で借金が払えなくなってしまったからだ。このとき小沢一郎が率いる民主党は、政府の規模拡大路線に対抗し、社会的弱者である小規模農家が生き残るための政策として「戸別所得補償制度」を対置した。民主党の1人区での勝利は、政策によってもたらされたということができる。

 自民党の政権復帰で同党はこの戸別所得補償制度を解体し、コメ生産量を消費量に合わせて減らし、米価を維持するコメ減反政策も来年度から廃止となる。米価は大幅下落の時代に入った。2007年の経験からいえば、政権の行方は農村票が握っているとさえいえる。

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行動予定

4月
23
18:00 第14回怒りのデモ 森友問題の核心... @ 大阪城公園「世界連邦平和像」前
第14回怒りのデモ 森友問題の核心... @ 大阪城公園「世界連邦平和像」前
4月 23 @ 18:00 – 20:00
第14回怒りのデモ 森友問題の核心は安倍昭恵と晋三だ! @ 大阪城公園「世界連邦平和像」前 | 大阪市 | 大阪府 | 日本
■日時:2018年4月23日(月)18時集会、19時デモ出発 ■場所:大阪城公園「世界連邦平和像」前  大阪市中央区大阪城1-1 (大阪城公園 大手前広場)  大阪城の西側。大阪府庁のほぼ正面の道路を渡った広場にあります。 ■主催:「森友問題」疑獄を許すな!実行委員会  連絡FAX06-6304-8431
4月
26
18:00 沖縄意見広告運動全国キャラバン ... @ 連合会館
沖縄意見広告運動全国キャラバン ... @ 連合会館
4月 26 @ 18:00 – 20:00
沖縄意見広告運動全国キャラバン 歓迎と激励の集い @ 連合会館 | 千代田区 | 東京都 | 日本
■ 沖縄から出発した全国キャラバン隊が東京に来ます 4.26「歓迎と激励の集い」に参加ください  1月17日に沖縄辺野古現地を出発点とした沖縄意見広告運動の全国キャラバン隊が、沖縄コースを経て、2月には四国コースを、さらに九州コースなどを回り、4月には23日名古屋、24日静岡、25日千葉を経て26日東京に入ります。  そこで、全国キャラバン隊の皆様を迎え、各地での行動報告を聞き、その労をねぎらい、激励する集いを持ちます。是非、ご参加ください。 ● 日時:2018年4月26日午後6時~ ● 会場:「連合会館」2階201号室  東京都千代田区神田駿河台3丁目2−11   東京・JR御茶ノ水駅より徒歩3分 ● 主催:第9期沖縄意見広告運動  http://www.okinawaiken.org/ 沖縄意見広告運動とは? 沖縄の痛みを、全ての人びとの痛みとして、みんなで受けとめよう! 「普天間即時閉鎖、辺野古(海・陸)やめろ、海兵隊いらない」 このような想いのもと、沖縄意見広告運動は2010年3月に発起されました。国内外の新聞各社への意見広告掲載を中心に様々な活動を行なっています。 意見広告には、公表可能な賛同者の方々のお名前を掲載しています。 【第8期 国内向け意見広告】 掲載日:2017年6月3日 掲載紙:琉球新報、沖縄タイムス、朝日新聞 各朝刊 賛同者総数:12,548件 公表可:10,481件 匿名希望:2,067件 賛同団体:437件 ■ 第9期広告の掲載日は6月3日(日)予定 1万5000件の賛同目標実現にお力を!  賛同者のみなさま。いつもご賛同、ご支援をありがとうございます。  第9期沖縄意見広告の掲載日は6月3日(日)を予定し、沖縄2紙と全国紙との交渉に入りました。9期の目標は、第8期の1万件越えの成果を受け、さらに15000件の賛同を目標に、運動拡大に取り組んでいます。  どうぞ、友人、知人へ賛同の輪を広げて下さい。  振込表付きの第9期新チラシが必要な方は事務局まで連絡ください。  すぐに、お送りします。 沖縄意見広告運動事務局 ● 電話 03ー6382ー6537 ● FAX 03ー6382ー6538 ● mail info@okinawaiken.org (「コモンズ」117号の目次にもどる)

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