映評『シン・ゴジラ』 ポスト3・11の黙示録

シン・ゴジラ タイトル ――突如、前触れなく東京湾でアクアトンネルが崩落した。
 ある何モノかのせいで…。
 時の首相補佐官や官房副長官ら官邸スタッフは事態の収拾に向かおうとするが、これはただの事故ではない…とてつもなく巨大で怪異な様相が渦巻いている。

 「超巨大怪獣、首都東京を襲う」―ある日、日本の中枢が巨大不明生物に襲われると言う有事の発生。中枢がいかに破壊され、混乱がとめどなく拡大するか。
 それを克明に映すシミュレーション映画とも言えるし(有事の官邸内パニックぶりを、猛烈なテンポでなぞる)まさに誰かの評にもあったが政治サスペンス劇なのだ。

 蟻の群れの様な役人群、命令の伝達に声を震わす政治家、いかにもの頑迷な官僚用語群が、点滅信号の様に画面を飛びかう。
 ネット時代の現代の、まさに突端にいる庵野作品ならではの絵柄なのだ。
 第1作から既に、60年を越えてなおも最大のモンスターとして君臨する映画・ゴジラ最新作が、昨年公開されたこの「シン・ゴジラ」だ。

     ◆

 さて日本人にとって、ゴジラなる存在は何の寓意か。
 1954年(昭和29年)11月、当時社会問題となっていたビキニ環礁核実験に着想を得て東宝が製作した怪獣映画だと言われる。 
 それは、水爆実験で蘇った怪獣が米国N・Y市を破壊するというハリーハウゼン特撮の怪獣映画『原子怪獣現わる』(Y・ルーリー監督:1953ワーナー映画)の単なる焼き直しに過ぎない筈のモノではあった。

 だが、当時の日本社会が覆われていた核と放射能への漠然とした恐怖。それが第五福竜丸事件を契機にリアルな影を見せた時から、この怪獣シリーズは、社会性すら帯びる様になっていく。
 ゴジラは放射能をまき散らし都市を寸断する。まるで天災のようだが、それが何を表しているか…3・11東北大震災以降は「原発」をも象徴する。

 今に広がる恐怖の一方で、この怪物に対処しようとする日本の右往左往ぶり…いわゆる「有事での国家安全保証」の在り方を考える、それは時代を撃ち抜くテーマ性を明らかにする。 
 映画の中で日本政府の為政者は、いかにも米国であろう国をさして「かの国の、横柄は想像以上だな」と嘆息する。
 かの軍事超大国は、不死身のゴジラを熱核兵器で東京ごと吹き飛ばそうと画策する。

 その狂気の熱核への傾斜を断ち切るためにも、ゴジラの生体活動を止めねばならない。その存在自体を氷の世界に「超低温停止」させるために…。
 第1作へのオマージュも込められたラストシーンは、切なく重い。(関西S)

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