安倍「働き方改革」の本質を問う 狙いは労働の破壊と労働組合の解体/大野和興

労働者は物じゃない
 「改革」と「革命」が大好きな安倍首相が満を持してはなつ「働き方改革」法案が今通常国会に出てくる。2018年度予算案が成立した後、4月にも国会審議がはじまる見通しだ。
 安倍「働き方改革」とはいったいどういうものか。そこで貫かれているのは、労働という行為そのものの解体と、労働する主体である人間の破壊だとみることができる。(お)

すべて安倍官邸主導ではじまった
アンクル安倍ナチス編

 2016年9月、第3次安倍内閣のもとで、安倍首相を議長とする「働き方改革実現会議」なる機関がつくられた。あくまで安倍首相の私的諮問機関という位置づけだが、当時安倍首相が唱えていた「1億総活躍社会」実現の柱として、大きな意味をもっていた。翌2017年3月28日、実現会議は首相官邸で会議を開き、実行計画をまとめた。

 厚生労働省はこれを受け、2017年9月、労働政策審議会の答申をもとに「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」を発表した。安倍首相がこの「働き方改革」にいかに力を入れているかは、今年1月22日の衆院での施政方針演説でわかる。

 「働き方改革」は前説に続く各論の最初に置かれていた。それは「『働き方改革』を断行します。子育て、介護などさまざまな事情をかかえる皆さんが、意欲をもって働くことができる。誰もがその能力を発揮できる、柔軟な労働制度へと抜本的に改革します。戦後の労働基準法制定以来、70年ぶりの大改革であります」という、いかにも高揚した一節ではじまった。そして「働き方改革」は成長戦略そのものであることを強調して終わった。


過労死の合法化

 安倍政権が準備している「働き方推進法案」は (1) 雇用対策法改正 (2) 労働基準法 (3) 労働時間等設定改善法 (4) 労働安全衛生法 (5) パートタイム労働法 (6) 労働契約法 (7) 労働者派遣法 (8) じん肺法の八つの法律を一括改正するという形をとっている。それぞれの個別の審議を省略するという安倍政権のお得意の手法だ。

 その中身を具体的にみると、次のようになる。

■月100時間残業を容認する「残業上限規制」。これは月80時間という過労死ラインをはるかに上回るもので、過労死の合法化そのもの。

■裁量労働制を拡大、「特定高度専門業務・成果型労働制」(高度プロフェッシ ョナル制度)として、新たな労働時間の適用除外制度(脱時間給)を創設する。いわゆる「残業代ゼロ」。

■「多様な働き方」に応じた「多様な賃金」を「同一労働同一賃金」という言い方で拡大し、差別賃金を導入。

■「多様な就業形態」の普及。現行の正規・非正規をいうわけ方に加え、限定正社員、有期契約社員、請負、業務委託、テレワークといった「非雇用型」賃労働の拡大し、重層的差別雇用構造をつくり出す。

■全体を貫く、イデオロギーとしての「労働生産性の向上」論

“死ぬまで働け”
サービス残業のイラスト

 以上のような法制度創設は何を意味するのか。最大の特徴は、労働時間という概念を消し去っていることである。労働者は労働力を売って自己を再生産し、資本家は労働力を買うことで超過利潤を得て、資本の拡大再生産を図る。その労働力の売買基準、つまり労働力の値段は、何時間働いたか、という労働時間で決まる。

 ところが「働き方改革」法が成立すると、「過労死の合法化」によって死ぬまで働かされる。労働時間などないと同じことになる。さらに裁量労働制で、国が決めた労働分野については「残業代ゼロ」、つまり、労働時間という縛りがなくなる。さらに、「多様な働き方」「多様な就業形態」の導入で、請負、業務委託、テレワークといった労働契約によらない「非雇用型」労働が拡大する。これら非雇用型の労働は、これまで労働運動が闘いによって勝ち取ってきた労働者の諸権利の適用外の存在である。安倍「働き方改革」は、働く権利をはく奪された労働者を大量に生み出す。

 安倍首相が施政方針演説で高らかにうたいあげた「戦後70年ぶりの労働法制の改革」とは以上のようなものだ。その全体を貫いているのが、時間当たりの生産性を向上する「労働生産性の向上」という方針。労働生産性とは、労働の成果を労働量で割ったものをいうが、その労働量を図る労働時間が事実上の“制限なし”なのだから、いくら働いて算出をを上げても、労働の成果は見えないことになる。つまりは、働けば働くほど労働生産性は低下、永遠に遠ざかる成果をめざし、「死ぬまで肉体も精神も気を緩めることなく働け」ということを意味する。

闘う労働組合への総攻撃が始まる

 憲法で保障された労働者の働く権利をはぎ取る「働き方改革」に対抗する道は、労働者の団結しかない。逆に言うと、労働者の団結、具体的には労働組合をつぶさない限り、安倍「働き方改革」は成し遂げられないことになる。

 今国会で、「働き方改革」法案が成立した後始まるのは、労働運動と労働組合への攻撃であることはまちがいない。その労働組合も連合成立後闘争する力を失っている。あとは、闘う労働組合を個別につぶしていけばいい。別掲仲村報告が述べるように、いま関西生コンにかかっている攻撃は、その前哨戦とみることができる。


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