西ドイツのワイツゼッカー大統領演説に匹敵する歴史的演説
文在寅韓国大統領が日本の植民地支配に抵抗して起きた「三・一独立運動」記念式典で行った演説は、1985年5月8日、西ドイツのワイツゼッカー大統領(当時)が行った、第2次世界大戦の終戦40年を記念する演説「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目になる」と並び歴史に残るものだと感動を呼んでいる。
文政権は民衆のろうそくデモが作り上げた政権だといわれる。演説は政権の生まれた性格をしっかりと踏まえ、韓国社会だけでなく日本の市民にもしっかりとメッセージを伝えた。(大)
文大統領の演説は15分間。「3・1独立運動の意義」から始まり、「日本への言及」、「光復100年へのビジョン」の三つからなっている。
「独立運動の意義」で文大統領は民主共和国の出発点は3・1にあると位置づけた。日本の市民社会へのメッセージが、ここに込められていると感じられた。この部分の演説の一節を紹介する。
<国民の皆さん、私たちには3.1運動という巨大な根があります。解放と国民主権をもたらした民族の根です。私たちには独立運動と共に民主共和国を打ち立てた偉大な先祖がおり、絶対貧困を抜け出し経済発展と民主化を成し遂げた建国2世代と3世代がいます。またこの時代に共に歩いていく道を灯してくれたろうそくがいます>
演説は、このメッセージを受けて、後半の「日本への言及」に続く。
大統領は「独島」、「慰安婦」という日本と正面から対立している課題を取り上げた。
<独島は日本の韓半島侵奪の過程で最も先に強制占領された私たちの土地です。私たち固有の領土です。今、日本がその事実を否定することは帝国主義の侵略に対する反省を拒否するのと同じことです。
慰安婦問題の解決においても、加害者である日本政府が「終わった」と言ってはいけません。戦争の時期にあった反人倫的な人権犯罪行為は「終わった」という言葉で蓋をされるものではありません。
不幸な歴史であるほどその歴史を記憶し、その歴史から学ぶことだけが真の解決です。日本は人類普遍の良心で歴史の真実と正義を直視しなければなりません。私は日本が苦痛を加えた隣国たちと真に和解し、平和共存と繁栄の道を共に歩いていくことを願います。
私は日本に特別な待遇を要求しません。ただ最も近い隣国らしく真実の反省と和解の上で、共に未来に進むことを願うだけです>
演説の最後は「未来への言及」だった。
<私たちは今日、3.1運動を生々しい記憶として蘇らせることにより、鮮半島の平和が国民の力で成し遂げられるということを確認しています。
私たちは今後、光復100年に向かうあいだ朝鮮半島の平和共同体、経済共同体を完成させなければなりません。分断がこれ以上私たちの平和と繁栄に障害とならないようにしなければなりません。私は今日、国民の皆さんにこの目標を共に実現させていくことを提案します。
貧富、性別、学閥、地域の格差と差別から完全に解放された国を作りましょう。金九先生が夢見た、世界平和を主導する文化強国に向けて進んでいきましょう。
3.1運動という、この巨大な根は決して枯れることはありません。公正で正義がかなう国は、すでに国民の心の隅々で99年前から育っていたのです。この巨大な根が朝鮮半島で平和と繁栄の木を丈夫に育てていくはずです。>
演説がいう「光復100年」は2045年に当たる。
文大統領はこれからおよそ30年ほどかけながら、朝鮮半島の平和共同体、経済共同体をゆっくりと作り上げようと呼びかけたのである。
ここでは、北の人びとへのメッセージが含まれている。
「格差と差別から完全に解放された国」「世界平和を主導する文化強国」を一緒に作ろうと呼びかけたのだ。
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