朝鮮半島と東アジア ― 現在そしてこれからをどうみるか

東アジア地図 急速な展開を見せる朝鮮半島の動きをどうみるか。3月31日、都内で「どうなる、東アジアの安全保障―北朝鮮問題や米中覇権争いをめぐって―」と題する国際シンポジウムが開かれた。市民の立場からの外交を提唱する市民シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」が主催したものだ。中国、韓国、米国、オーストラリア、日本の論者がそれぞれの分析を示し、議論をたたかわせた。
 NDシンポでの論議を軸に、現局面の意味をいくつかの側面から見ていく。視点と枠組みを変えることで、見えるものも違ってくる。ここでは、アジアの民衆の視点、という軸足を定め、より長い時間軸をとり、空間的広がりも見据えながら考えてみたい。(お)

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動き出した朝鮮半島の平和プロセス
朝鮮半島と東アジア – 現在そしてこれからをどう見るか ←今ここ
解説】日帝支配下での韓半島 近現代史概説年表

南北対話の意味
賈慶国氏(北京大学国際関係学院院長)

賈慶国氏

 NDシンポに中国から参加した賈慶国氏(北京大学国際関係学院院長)は、予定される習近平・金正恩の中朝首脳会談は「非核化・安定・平和」の三つを軸に進められるという。この三つは対話でしか達成できない。つまり、「戦争はしない」ということが前提になる。

 韓国・韓信大学教授で同大学の「平和と公共性センター」長の李起豪氏は、いま動いている事態の歴史的な意味を「第二次冷戦終結」と位置付けた。「それはアジアをめぐる大きな争いであり、どんなアジアを作るのか、誰のアジアのつくるのか」が問われている、というのだ。「それはこれまでの敵を友達に変えることでもある」と李教授は表現した。

「非核化」とは?
韓信大学教授・李起豪氏

李起豪氏

 李教授は言葉を継いで「だから、ここでいわれる非核化は北だけの非核化ではなく、朝鮮半島の非核化であり、東アジアの非核化なのだ」と述べた。この認識はシンポジウム全体を流れる共通認識でもあった。

 李教授の話を受け、岡田充氏(共同通信客員論説委員)が次のように補足した。
 「21世紀に入り、東アジアで深刻な戦争危機の事態が進んでいる。それをいかに食い止めるかが、いま朝鮮半島で展開されている事態の最大の優先課題だ」
 当然、非核化はその過程の包摂される課題となる。金正恩委員長は南北会談や米朝会談で「東アジア全体の非核化を提唱するはずだ。それは五つの核大国を前提とする核拡散防止条約(NPT)体制の妥当性、アメリカの核の傘にある日本の安全保障体制そのものを問うことにつながる」

グレゴリー・カラッキー氏(「憂慮する科学者同盟」上級アナリスト)

グレゴリー・カラッキー氏

 米国から出席したグレゴリー・カラッキー氏(「憂慮する科学者同盟」上級アナリスト)も、同じ立場から「核軍縮」に言及、そうした枠組みの中での打開に言及した。同氏は米中の核軍縮や宇宙における安全保障問題で、米中両国政府や市民運動と連携してきた科学者である。
 北朝鮮の非核化とは東アジアの非核化であり、それはそのまま、現在の核拡散防止条約(NPT)体制を問い直すことにつながる。1970年に発効した同条約は核保有を米国、ソ連(ロシア)、イギリス、フランス、中国の5カ国にしぼり、それ以外の国には核兵器を持たせないというもの。米国の「核の傘」を前提とする日本の核政策は当然このNPT体制のもとにある。

 NPT体制は、人類の願いである「核なき世界」の実現とも矛盾する。その矛盾を乗り越えようと、世界の市民の運動の積み上げの中で、昨年4月、107の国々が国連の場で「核兵器禁止文書」賛同した。しかし、唯一の被爆国である日本は賛同を拒否、核保有五大国に追随する道を選んだ。

 さらに今年2月、トランプ政権がオバマ前大統領が積み上げた核戦力削減への歩みを止める「核戦力体制の見直し」を発表、核使用の制限を緩和し、「使える核」に政策転換する方針を打ち出したことに対し、安倍政権は「歓迎する」ともろ手を挙げて賛同した。安倍首相はかねてから核武装論者であることはよく知られている。「朝鮮半島非核化」は世界的な核廃絶に連動し、米国の核の傘にすがる日本の自公政権の「核戦略」をも揺るがすものであることがわかる。そのことは、ひいては戦後日本の規定してきた日米安保・日米同盟の見直しを迫る。

南と北
韓国キャンドル革命

韓国キャンドル革命

 話を南北朝鮮問題に戻す。「対話による平和路線」へと事態を大きく導いてきた韓国の文在寅大統領の思いがどこにあるのか。李教授は、文大統領の手法を「タイミングとスピード、トップダウン」と規定する。そして、韓国CIAをとても有効に使っていると評した。米国のトランプ大統領もCIAの重視し、その情報に頼っている。両国のCIAは当然つながりがあり、いつもやりとりしている。韓国民衆のキャンドル革命が産んだ理想主義者文大統領は、したたかな現実主義政治家でもあることがよくわかる。

 韓国大統領の任期は5年。文大統領にはまだ4年の余裕がある。彼は焦らず、じっくり腰を据えて取り組むはずだ、と李教授はいう。文大統領がめざす朝鮮半島の平和のプロセス構築は金正恩委員長のニーズとも一致する。
 南北はこれまで2回の首脳会談を行ってきた。2000年6月、2007年10月だ。そして今回で3回目となる。

 文大統領は2回目の廬武鉉大統領がやり残したことを引き継ぐことになる。廬武鉉が金正日総書記と会談したとき、文氏は彼の秘書室長だった。

開城(ケソン)工業団地・韓国の工場で働く朝鮮の労働者

開城(ケソン)工業団地
韓国の工場で働く北朝鮮の労働者

 この会談で8項目に上る合意が成立した。その中身は、軍事的敵対関係の終息と平和保障といった安全保障にかかわる分野と並び、「民族経済の均衡発展と共同繁栄のための経済協力事業」が具体的に盛り込まれた。それは工業団地形成、エネルギー、通行・運輸・通信・通関問題、造船協力、農業、環境保護、保健医療まで含む広範なものだった。これらはすべて未完のまま、残っている。

 これらは、開かれた貿易立国韓国にとっても、今後開放経済に向かうであろう北朝鮮にとっても、相互に利益になる。北朝鮮にとっては、経済協力はそのまま体制の保障につながり、さらに韓国を通してアジア市場にアクセスする道が開けるからだ。

中国、そして日本

 台湾へのトランプ政権の介入に加え、米政権との貿易戦争が始まろうとしている中国にとって、朝鮮半島の平和は、これまでに増して重要な課題となっている。中国からシンポに参加した朱建栄氏(東洋学園大学教授)は「中国は平和が続く限り経済は発展し、米国と肩を並べることができると考えている」という。

津上俊哉氏

津上俊哉氏

 また、同じく中国から参加した呉従勇氏(中国国際友人研究会副会長)は、「中米関係は首脳同士の交流で随時調整できるし、貿易摩擦も国どうしの話し合いで解決できるというのが、中国の基本的なスタンスだ」と述べた。
 こうした発言を受けて津上俊哉氏(元在中国日本大使館経済部参事官)は「中国は考え抜かれた理性の外交を展開している。とてもリーゾナブルな外交だ」と評した。

リチャード・マクレガー氏

リチャード・マクレガー氏

 こうした発言を聞いていて感じたのは、南北平和に向けて最大のリスクはどうやらトランプのアメリカにあること、そして日本の安倍政権はそのリスクを助長する存在でしかないということだった。
 岡田氏は安倍外交が一貫して追求してきた「中国包囲網づくり」はもういい加減にしたらどうかという意味のことを述べていた。また、オーストラリアから出席した中国政治システムの専門家リチャード・マクレガー氏はもっと辛辣かつ建設的な意見を日本のためにはいてくれた。
 「日本は家を出られない40歳の息子だが、やっと米国の家から出られる環境が生まれた。荷物をまとめる準備を始めたほうがいい」


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行動予定

10月
31
13:30 “他者への想像力”を~日韓の歴史認... @ オンライン
“他者への想像力”を~日韓の歴史認... @ オンライン
10月 31 @ 13:30 – 16:00
“他者への想像力”を~日韓の歴史認識をめぐる問題にジャーナリストと共に目を向けて @ オンライン
【同時通訳付き Web開催】 SJFアドボカシーカフェ第67回 “他者への想像力”を ~日韓の歴史認識をめぐる問題にジャーナリストと共に目を向けて~  組織ジャーナリズム・メディアの報道に接する日々において、政権に対する「忖度」やフェイクニュースの横行など目を覆うばかりの状況に不信感や危機感が高まっています。  長年メディアの中で活動をしてきたベテラン(?)のおじさん・おばさんたちも危機感を共有してきました。そこから、ジャーナリストを目指す若い人たちに「権力を監視し、市民の側に立つ」という姿勢を育んでもらおうと、「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」の活動が3年前から始まりました。  なぜ「日韓」なのか。日韓の間には、従軍慰安婦や徴用工の人たちのこと、強制労働など、今も「歴史認識」をめぐる問題が横たわっています。その解決のためには、まずお互いが相手を学び、理解していくことが必要です。その行為は、ジャーナリストにとって大切な“他者への想像力”に思いを寄せることにもつながります。  ジャーナリストが日々伝える「今」の一つひとつは、「過去」つまり歴史を背負っています。そこに目を向けられるようなジャーナリストが日本で、韓国でニュースを発信していければ、今のメディアは少しずつ変わっていけるのではないか。そんな日韓学生フォーラムの試みをもとに、日韓の皆さんと歴史認識を共有する道を探っていければと思います。 ゲスト 〇植村隆さん:  1958年、高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒、82年、朝日新聞社入社。大阪社会部記者などを経て、テヘラン、ソウル特派員。北海道報道部次長や外報部次長などを経て、北京特派員、函館支局長など。2014年、早期退職。17年秋に「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」をジャーナリスト仲間たちと立ち上げる。また現在まで、16年より韓国カトリック大学客員教授、18年より週刊金曜日発行人兼社長、19年6月から「金曜ジャーナリズム塾」塾長も務める。 〇西嶋真司さん:  1957年生まれ、早稲田大学卒。81年に「RKB毎日放送」入社。記者として報道部に配属され、91~94年にJNNソウル特派員。2000年に制作部に異動し、ドキュメンタリー番組を制作。18年に退社し、映像制作会社「ドキュメント・アジア」を設立。ドキュメンタリー映画の代表作に『抗い 記録作家 林えいだい』。現在は元朝日新聞の植村隆記者のバッシング問題をテーマにした映画『標的』を制作中。 〇「ジャーナリストを目指す日韓学生フォーラム」に参加し、現在メディアで働く記者や学生も出演します。 詳細 ●日時: 2020年10月31日(土)  13:30~16:00 ※受付時間13:00~13:25 ●会場: オンライン開催 ★オンライン会議システム・Zoom(言語通訳機能付き)を使用します。スマホやPC等の端末から参加いただけます。参加方法の詳細は、お申込みくださった方に10月26日までにメールいたします。 ★グループ対話セッション(逐語通訳付き)や、ゲストとの対話も行う予定です。聞くだけの参加も可能ですが、この対話の場を一緒につくれるよう、お声を出していただけましたら幸いです。参加者さまのお顔は写らないよう初めはこちらで設定いたしますが、グループ対話中は、自主的にお顔を写していただけます。 ●参加費: 無料  ※通信料は参加者さまのご負担となります。 ●お申込みフォーム: https://socialjustice.jp/20201031.html ★先着50名様。完全事前登録制(上記フォームからのみの受け付けとなります)。 ★締め切りは【10月25日】、または【定員に達した時点】の早い方とさせてください。 ●イベントホームページ: http://socialjustice.jp/p/20201031/ ★同時通訳(日本語・韓国語)をいたします。 ★韓国語でのご案内ページ http://socialjustice.jp/p/ko20201031/ もございます。オンライン開催のため韓国など海外からの参加も容易です。もしお知り合いで韓国語でのご案内の方がよろしい方がいらっしゃいましたら、こちらのリンクを広めていただけましたら幸甚です。 ― 助成: オープン・ソサエティ財団/JANICグローバル共生ファンド ― ■主催・お問い合わせ先: 認定NPO法人まちぽっと ソーシャル・ジャスティス基金(SJF) メール: info@socialjustice.jp
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■ 日 時: 2020年10月31日(土)  18:30~20:30 (開場18:15) ■ 場 所: かながわ県民センター2Fホール  横浜市神奈川区鶴屋町2-24-2(横浜駅きた西口から徒歩5分)  http://www.pref.kanagawa.jp/docs/u3x/cnt/f5681/access.html ■ 資料代: 800円 ■ 定 員:事前申込み優先で130名  申込先: ytkouen@gmail.com  Fax: 045-881-2772 Tel: 070-6481-4362 ■ プログラム ※予告なく変更する場合があります ⭐18:30~19:00 闘うシンガー川口真由美さんの歌 ⭐19:00~20:00 小西誠さんの講演 ・要塞化される琉球弧~対中国の日米共同「島嶼戦争」~ミサイル戦争の実態 ・琉球弧全域のミサイル基地化・要塞化計画ー与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島・馬毛島への新配備 ・エアシーバトルとオフショア・コントロール、オフショア・バランシングと南西シフト ・国民保護法と住民避難~「非武装地域」宣言 再び沖縄を戦場にするな! ⭐20:00~20:30 質疑応答 賛同金募集中!  一口千円 口座名:横浜講演実行委員会2020  〒00290ー1ー98382 店名〇二九 0098382 主催  横浜講演実行委員会2020 ytkouen@gmail.com    

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