日本のわれわれは今何をなすべきか(上)/村山和弘
4・27南北首脳会談と「板門店宣言」を受けて

朝鮮戦争

400万人以上が犠牲になった朝鮮戦争

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4・27板門店宣言への道 – かくも長き戦争と分断の歴史
日本のわれわれは今何をなすべきか(上)/村山和弘

はじめに

 南北分断の戦時体制が、目の前でがらがらと音をたて、崩れ落ちている。世界も我々も感動を持ちながら、この歴史の大転換という現実を噛みしめている。
 問題は、民衆の闘う姿勢で無駄な苦痛を少なく出来るか否かだ。今問われているのは、我々が歴史変革の強い意志と決意を持って、日本で闘う事だ。

手をつないで38度線を越える南北首脳

手をつないで38度線を越える南北首脳

 板門店宣言に大打撃を受けているのは、日本の保守政権と財界である。だが、彼らはこの深刻さに既に気づいて身構えている。
 彼ら支配層は、現在の危機の深刻さを日本民衆に知られないように、平静を装っている。そして、日本民衆を支配・統制を強める方策を急ぐ。それ以外に延命は出来ない。結局は、彼らは自分で自分の埋葬を準備する悪あがきに終る。時間が早いかどうかだろう。
 日本支配層には、南北が手を握る姿は想像できない悪夢だった。戦後日本の成立・存立を根底から突き崩すのが、4・27板門店宣言なのだ。日本(政官財)にとって、南北分断は(戦前を引継ぐ)日本の戦後体制である。彼らは、4・27当日、呆然とした。彼らには板門店宣言に向き合う日本は想像出来ない。

 だが、一番の問題はわれわれ民衆自身である。アジア侵略戦争の惨禍を経験しても、日本は朝鮮戦争で延命したのだった。その歴史が蘇ってきたのだ。板門店宣言を前にして、日本民衆は1945年8月15日に回帰し、日本の戦後を問い直すべきである。

民衆の力で日本のアジア侵略・植民地支配・戦後責任を問う闘いへ

 1945年8月15日の日本敗戦により朝鮮は解放されるも、国連軍による南北(北地域はソ連、南地域は米に)分割統治とされた。朝鮮民族の自主的な解放(民族政府の成立)は、外部から阻止された。

 中国では1949年10月、人民解放軍の勝利で新中国が成立した。1952年、朝鮮戦争で北朝鮮が首都を失って危機になった。中国は義勇軍(当初)20万人、後方を含め100万を送った。中国は戦死者50万人、朝鮮の南北で400万の死者を出し、多くの離散家族が生みだされた。朝鮮戦争3年間で、朝鮮全土が焦土と化し、廃墟となった。

平昌オリンピック

平昌オリンピック南北統一選手団

 4月27日、板門店宣言を見つめる南北では、感激と共に幾重もの思いが重なっていただろう。膨大な血を流した南北がこの日、自分たち自身で固く手を握りあった。

 この朝鮮分断の打破と板門店宣言という戦後史における大事件において、最大の当事国は実は日本である。米国のトランプ大統領は(冷戦維持の軍産勢力と競り合いつつ)、米朝会談を水面下で進めていた。

 だが、戦後日本の成立と存立に関わる南北分断が打破される深刻さから、日本の政財界も冷静に民衆の力強さを直視できなかった。また反自民勢力も、韓国民衆の力強い闘いを直視できず、「話し合い」をと言って、その態度は自民とのニュアンスの違いに思われた。

 それは、戦後体制において保守・野党は同じ55年体制の土俵の枠内にいたからだ。すっぽり抜けた植民地支配と戦後の継続した植民地・排外主義について、革新勢力も無自覚のままだった。

 戦後憲法は、当時の国際的な力関係が反映されていたので、1945年から50年までは、天皇制廃止や政財官マスコミの戦争犯罪追及は労働者と民衆の闘いの時代だった。戦争責任を追及する闘いは、生産管理闘争で労働者側が読売新聞を発行し、GHQの弾圧を受けた。現在の日本は、1950年朝鮮戦争後の保守・革新という受け身に立たされた構図が、常識的な戦後だと思いこまされている。この常識の土台が、4・27によって崩れたのだ。

 4・27宣言は、やがて第二次世界大戦(帝国主義の世界分割戦争とソ連とはなど)を問う全面的な見直しと、現実的な政治の流動化という新たな歴史へと発展するだろう。

南北分断と朝鮮戦争で現在の日本が成立した

岸信介

岸信介

 1946年1月4日附連合国最高司令官覚書で「公職に適せざる者」を追放した。戦争犯罪人、陸海軍の職業軍人、超国家主義団体等の有力分子、大政翼賛会等の政治団体の有力指導者、海外の金融機関や開発組織の役員 、満州・台湾・朝鮮等の占領地の行政長官、軍国主義者・超国家主義者を「就職禁止、退官、退職等ニ関スル件」が公布。47年、公職の範囲は戦前・戦中の有力企業や軍需産業の幹部にも広がり、1948年5月までに20万人以上が追放された。

 衆議院議員の8割が追放され政財界の重鎮が引退し、日本は若返ったが、官僚、裁判官など保守人脈は温存され、特別高等警察は、公安警察として復帰した。これは大陸で人民中国が49年に成立し、アジアと日本の社会情勢から、米占領政策が転換されたのである。攻防戦と追放解除で戦前勢力が日本の中枢への逆コースが始まった。

 岸信介A級戦犯、正力松太郎、東条内閣・読売新聞A級戦犯も51年解除された。1951年5月1日、占領政策の見直しで、日本政府に対し公職追放緩和・復帰を米は認め、25万人以上の追放解除が行われた。最後まで追放状態に置かれたのは、岸信介ら約5,500名程である。公職追放は約21万人。公職追放の影響は3親等に及ぶので自主退職した者もおり、全て含めると100万人以上。保守層の有力者の大半を追放した結果、学校やマスコミ、言論各界、労働組合なが活発になり、戦争責任の追及が始まっていた。

 だが、労働組合活動家や反戦運動家を職場・学園から排除するレッドパージが全国で旋風となり、体制的な労働運動へと進み、再軍備が始まった。

朝鮮戦争特需で日本経済は戦後復興へ

朴正煕の軍事クーデター

朴正煕の軍事クーデター

 膨大な朝鮮民衆の生き血を吸って、日本は(戦前水準に)回復したのである。戦後・平和の裏側には、侵略戦争・強制連行…国内植民地で「在日」を無権利とした追放・差別がある。
 その後、朝鮮戦争特需で財閥は息を吹き返す。追放された戦犯らが政財官マスコミ支配層に復帰し、この歴史事実も封印された。

 1960年、岸信介が首相となる。1965年、日本が植民地支配を居直って、クーデターで政権を取った朴正煕と日韓基本条約締結した。背後にはアメリカの思惑があった。この条約を「根拠」に、「強制連行(軍「慰安婦」・徴用工)は終った」と、現在まで日本は居直っている。
 こうして、現在の安倍晋三を始め、戦犯らとその係累連中が今もこの日本を支配している。

我々の立場を根底から問い直すとき

ソウル キャンドル革命 戦後の革新・護憲・平和を守る闘いも、朝鮮民族の分断を核心に据えて捉えなおし、内容を深化しなければならない。南北分断体制と日米同盟は「不変の前提」ではない。

 われわれ革新の側は、日米同盟の不平等を語り、そこからアジアの平和を語るのが習慣になっている。その大前提を、4・27は根底から打ち破ったのだ。南北分断(安倍保守政権も)体制は、すでに韓国ロウソク革命に代表される激動によって、労働者と市民の力で打ち破られてきた。その結果、文在寅大統領が登場し、安倍の盟友・朴槿恵前大統領は逮捕され有罪となった。

 世界中で日本だけが対北強硬政策を取っている。今や、安倍自公政権は幽霊状態になっている。安倍政権を支持する日本の保守層も、それを認識している。居直る自公政権には、アジア民衆の次なる闘いが待っている。
 現在、韓国では、強制連行(徴用工・女子勤労挺身隊)問題が訴訟の段階だが、民衆の怒りが少しでも解き放たれ爆発すれば、日本企業のアジア展開は危機になるだろう。

 ドイツは戦後、土下座して侵略を謝罪し、そこから東欧への経済進出を行った。これに比して、今まで居直ってきた日本企業の犯罪は罪深い。徴用工の像は、北朝鮮の首都ピョンヤンにも建てられる(米朝会談の前ということで自制中)。

 現在の安倍政権・後継の保守政権は、こうした現に進行している深刻さを自覚していない。当面は、北朝鮮に謝罪と賠償(無償・有償援助)を行って、拉致問題で乗り切る策謀をめぐらせている。南北米3者会議や中国を含む4者会議のうち米を除く全ての国が、日本が侵略し植民地にした国だ。日本はアジア民衆に包囲された。しかも、擦り寄るべきトランプ政権は日本を突き放している。むしろ、日本にだけ情報を秘匿して南北会談・米朝会談を準備してきた。

 今、問われているのは日本民衆の闘う質と姿勢である。日本の護憲・平和運動は奮闘してきたが、連帯の内容が欠けている。例えば、日韓「慰安婦」合意に反対する日本の運動は、沈黙か後追いのアリバイ運動であり、日本軍「慰安婦」被害者の気持ちに寄り添う程度だった。主体的な責任から闘う内容は弱かった。また、強制連行企業を弾劾して必死で闘う質を不十分にしか持てなかった。今、問われているのは、亡霊保守政権以上に我々日本民衆自身だと思う。

市街戦訓練 一言追記すれば、辺野古で米軍を引き止める新基地工事を行う一方、その陰で日本軍の南西諸島軍事要塞化を進め、既に中国を敵国とした実戦部隊の創設や訓練を行っている。しかも実際の軍事力として、実戦が準備されている。(詳しくは小西誠著『自衛隊の島嶼戦争』『オキナワ島嶼戦争』など参照)

 民衆の闘いは、敵の弱点に照準を定めないと敗北する。日本の改憲阻止・護憲運動は、大きな力を秘めている。最大の課題は、板門店宣言の感動を受け止め、闘う内容を深めることだ。そうすれば、日本民衆も南北・アジア民衆と共に手を取って勝利することは可能なのだ。闘いの照準を急ぎ定めれば勝利できる段階にあると思う。(⇒次号に続く)

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