よむ『敗北を抱きしめて(増補版)』(J・W・ダワー:岩波新書)
わが国戦後国体の基層を思い知る

敗北を抱きしめて 我々は、自らの戦後史を本当に知っているか?。
 ジョンWダワーの「敗北を抱きしめて」は、上下巻1000頁を越える大作だ。
 その増補版は、孤高の歴史学者にしてマサチューセッツ工科大学名誉教授であるダワーが、2003年イラク戦争前後の暴力に満ちた米国を告発する意味をも込め、いわば世界の読者への覚醒を促す復刻版として上梓されたものだ。

 第2次大戦後の日本と日本人を克明な資料と洞察力で描き切った、数ある戦後史の中でも特上級の底本と評価も揺るぎない名著中の名著。その新たな蘇りとしての増補版の存在と刊行の意義を是非とも多くの人に知らせねばならない。

敗北を抱きしめて さて増補版では、当事の時代精神を解いた自らの言説を補強する写真図表をダワー自らが選定し盛り込んでおり、英語原書の2.5倍ものビジュアル量とされ、それこそ混乱の戦後を再認する歴史書としてと同時に、すぐれたノンフィクションルポとしても読み取れる厚みを有する。そこから読みとれる日本人とは、Japan ではなくして雑多なる一人ひとりの Japanese なのだ。

 上巻は帝国日本の降伏という衝撃に、官僚からインテリ、さらに市井の庶民まで一種のアパシー(ショック性無感情状態)に陥った様子が見事に活写されている。
 新聞や猥雑な雑誌まで駆使し、カストリ文化や焼け跡闇市の息吹き、天皇陛下とマッカーサーとの会見など、戦争中からコペルニクス的転換をした(転換してしまった)日本人の恐るべき変わり身の早さと逞しさ、さらには当時のエリートと支配層の無責任ぶりと何ら屈折のない変節ぶりがいやと言うほど描き出される。
 今の時代の我々は、我々自身の写し絵としてその刻々とした日本人たるモノに着目せねばならない。まさに一筋縄では行かないJapaneseとしての国民性の再認としてだ。

敗北を抱きしめて(下巻) 下巻は戦後日本を形成した重要な政策について米国側の資料も駆使し、その裏面史と背景の実情を描く。
 天皇の地位に関するGHQの政策誘導と揺らぎ、混乱の中の人間宣言、天皇の全国巡行、憲法改正や東京裁判と大きな問題に正面から向き合う。さらにGHQによる思想統制、検閲やレッドパージなど、民主化の流れの停止と逆流。朝鮮戦争の始まりとともに、特需から新しい日本の産業構造が形成される経済ダイナミズムが明らかとなる。
 ダワーは、日本の天皇を取り巻く支配層、それを差配するGHQ、そしてこれら二つを担ぐ民衆各層の各者三様の終戦直後の姿を描き切った。
 歴史に向き合う勇気、我々の戦後史を見直すことを急がねばならない。(M)

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