すでに共謀罪ははじまっている-「予防拘禁」「市民監視」

辺野古ゲート前で県民を弾圧する公安 審議が進めば進むほど、いい加減さが明かになる共謀罪。安倍政権はチャンスをとらえ、強行採決を狙っている。普通の市民も、普通のグループ・団体も取り締まり当局がそうだと見込みさえすれば、具体的な実行行動はなくても犯罪者・団体とみて捜査、拘束できる共謀罪。すでにそれを先取りするような事件も起こっている。(おおの)

■□ 山城博治逮捕は「共謀罪先取りであり予防拘禁」だ

 沖縄・高江のヘリパット建設反対運動の現場で逮捕され、五か月もの長期間、再逮捕を繰り返されて拘束された基地反対闘争のリーダー山城博治さん(沖縄平和センター議長)の例は、その典型といえる。

 山城さんは2016年10月17日、沖縄県の米軍北部訓練場において、有刺鉄線を1本切ったとして器物損壊容疑で逮捕された。同20日に勾留が決定、その後当局は、軽微な犯罪での逮捕・勾留・起訴を繰り返した。その間、山城さんは、家族とも面会できない状態が続いた。裁判所が長期にわたって家族も含めた接見禁止処分を認めていたからだ。

 また、靴下等の生活必需品の差し入れも2カ月以上禁じられ、さらに那覇地検は、国民の最低限度の権利である弁護士との接見にさえもさまざまな注文をつけ続けた。山城氏にあてられた励ましの手紙約400通も全く本人のもとに届かないようにされていた。国際人権団体アムネスティは国際的にもまれにみる国家による人権侵害として、日本政府に抗議、その状況を世界に発信した。

FREE 山城
 山城さんが保釈されたのは年を越した2017年3月18日。五か月後ということになる。同じように現場で逮捕され、長期拘留された市民は複数いる。

 この山城さんの微罪・長期拘留に共謀罪の先取りをみる人は多い。報道記者でテレビキャスターの金平茂紀さんは、沖縄タイムスの執筆しているコラムでこれは治安維持法下で行われた「予防拘禁だ」と書いている。

「山城氏はなぜやられたのか。彼は非転向を貫く米軍基地建設反対運動の象徴的存在であって、まさにそのことが彼が長期勾留を課された理由なのである。それを裏付ける種々の事象がある。
 僕らの国の司法にはかつて『予防拘禁』という仕組みが合法的制度として存在していた。戦前、あらゆる社会運動を弾圧する機能を果たした法律に治安維持法があった。この法律に違反したとして摘発された受刑者のうち、非転向、あるいは転向が不十分だとみなされた者は、『再犯のおそれあり』として出獄を取り消し勾留し続けることができる制度が「予防拘禁」だった。
 僕は山城氏の尋常ではない長期勾留や接見禁止措置を考えた時に、この治安維持法下の「予防拘禁」のことをすぐに想起した。今、政権は『平成の治安維持法』と言われている共謀罪法案(彼らによる呼称はテロ等組織犯罪準備罪法案だが)を国会に上程し成立を急いでいる。この動きと山城氏逮捕・長期勾留の動きは連動したものと思わざるを得ないのだ」

 金平さんは、この指摘に続いて以下のように述べる。

「実は山城氏逮捕の捜査を顧みる時に見過ごせない司法警察・検察の動きがある。山城氏の逮捕・再逮捕と相前後して東京、神奈川など全国十数カ所で家宅捜索が行われ、主にパソコン、USBメモリーやハードディスクなどの記録媒体、携帯電話などを集中的に押収していった。パソコンの押収点数は計8台、記録媒体が15台、携帯電話も7台が押収された。
 捜査当局はこれらの押収物から、メールやラインなど会員制交流サイト(SNS)での通信記録を細かく掌握しチャートを作成していった。なぜそんなことをするのか。彼らは、米軍基地建設反対運動を、山城氏を「首謀者」とする壮大な犯罪組織に見立てようとしているのである。「一味」が事前に「共謀」してあのような大反対行動を企てているのだと。
 「山城氏の公判に証拠申請されている膨大なビデオ映像の記録(ブルーレイディスク数十枚)はどのようにして撮影されたかを想起してみるといい。彼の行動の一挙手一投足をバーの先に取りつけた小型ビデオカメラ20台以上で、警察、防衛局等の『撮影班』がよってたかって撮影したものがそれである」

 金平さんは最後に、「沖縄ではプレ『共謀罪』捜査が先取りされている」と結論付けている。

■□ 岐阜・大垣市で警察による「市民監視」

 2017年2月4日の東京新聞と中日新聞に、次のような記事が掲載された。

「岐阜県大垣市での風力発電事業計画をめぐり、岐阜県警が反対派住民を監視、収集した情報を事業会社に提供した問題で、住民らは昨年十二月、表現の自由を公権力に干渉されたとして、県に損害賠償を求める訴訟を起こした。警察の市民運動などへの監視や情報収集はかねて繰り返されているが、政府が今国会に提出予定の共謀罪法案が成立すれば、同罪を盾に監視が一段と強まることは確実だ」

 事件の経過はこうだ。
 岐阜県大垣市上石津町と不破郡関ケ原町に連なる山の尾根に、中部電力子会社である(株)シーテックが大型風力発電施設の建設を計画した。風力発電施設(風車)による健康被害、環境被害などを懸念した地元自治会や市民グループが勉強会を開いていた。地元大垣警察が、それら市民の個人情報を、事業者シーテックに提供し、「反対運動をさせないための意見交換」を行っていた。朝日新聞名古屋板が2014年7月24日付けで「岐阜県警が個人情報漏洩」とトップ記事で報道して、事件が明るみに出た。

 大垣署とシーテック社は2013年から14年にかけ、4回にわたって情報交換会を重ねている。住民は2014年11月10日、県公安委員会に「苦情申立て」を行い、同日岐阜地検に警察を「地方公務員法に基づく守秘義務違反」で告発した。岐阜県警は2014年11月19日、これは「通常の警察業務」であると回答。告発を受けた岐阜地検は翌年の2015年12月14日、「不起訴」とした。こうした経過を受けて4人の市民が2016年12月に国家賠償請求訴訟を起こし、第1回口頭弁論が2017年3月8日に岐阜地裁で開かれた。

 住民側は警察とシーテック社の意見交換会の議事録を入手している。回覧印も押された生々しいものである。そのなかから大滝警察の発言をいくつか拾いだしてみた。

  • 「同勉強会の主催者であるM輪…夫氏やM島氏が風力発電に拘らず、自然に手を入れる行為自体に反対する人物であることを御存じか」
  • 「大垣市内に自然破壊につながることは敏感に反対する『K藤…子氏』という人物がいるが、御存じか。本人は、60歳を過ぎているが東京大学を中退しており、頭もいいし、喋りも上手であるから、このような人物と繋がると、やっかいになると思われる。 このような人物と岐阜コラボ法律事務所との連携により、大々的な市民運動へと展開すると御社の事業も進まないことになりかねない。大垣警察署としても回避したい行為であり、今後情報をやり取りすることにより、平穏な大垣市を維持したいので協力をお願いする」
  • 「M島住職が、平成26年度「岐阜コラボ法律事務所友の会」の役員になった。また、M輪…夫と交代で友の会役員を行っているようである」
  • 「M輪…夫は、岐阜コラボ法律事務所の事務局長である「F田…子」と強くつながっており、そこから全国に広がってゆくことを懸念している。現在F田…子は気を病んでおり入院中であるので、速、次の行動に移りにくいと考えられる」
  • 「今後、過激なメンバーが岐阜に応援に入ることが考えられる。身に危険を感じた場合はすぐに110番して下さい」

 これをみると、警察が監視して得た情報をすべて事業者に流していることがわかる。共謀罪が成立すると、政府や地方公共団体、企業のすることに異議を唱えたり反対するものは、常時当局の監視・捜査対象になると懸念されているが、この岐阜・大垣で起こっていることは、それが懸念などではなく、すでに実際に起こっていることがわかる。(大野和興)

◆大垣の事件については、「大垣警察市民監視違憲訴訟の勝利をめざす『もの言う』自由を守る会」ホームページに詳しい。
https://monoiujiyu-ogaki.jimdo.com/

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