著者インタビュー『国体論~菊と星条旗』白井聡さんに聞く

戦後「国体」への真正面からの問い 天皇<<米国、の重層構造 統治権力の実相
 いま何もかもが漂いかけている。国民の時々の水準に合わせた為政者しか出し得ない時代。あたかも「愚かな国民には愚かな宰相が似合っている」とでも言われている様な日本……。
白井聡さん 学働館アソシエ講師でもある政治学者、白井聡さんの新刊『国体論・菊と星条旗』(集英社新書)は、このあまりに卑屈な対米従属の原因の分析を通じ、さらに曖昧なまま顧みなかった戦後国体の二重性に着目。それを歴史的権威の象徴=菊(天皇制)と権力暴力装置としての新しき主人・米国(米軍)=星条旗の重層構造にあると喝破した。著書の白井さん(右写真)に今の思いを聞いた。【文責・編集部M】

――すでに多くの読者を獲得し、大きな反響がご自身にも届いているとか。どんな反応や感想が寄せられていますか。

白井 今なぜこうなっているのか。こんなに不条理なのかと言う、その必然性が判るという。我々の捉われている不条理の源泉が、あぁそうかそこにと言う…。

――流れ所が…。

白井 だからこう(悲惨)なんだよなって。僕としては、今の社会の矛盾の根源と言うか核心と言うか、わが国固有の歴史循環論をつかんだという自分なりの自負があるので、そういった反応も出てきているのかなというのが自信になります。

――今回の本でどの層に特に読んで貰いたいかとの思いは?…どの層にインパクトを与えたいとかは…。

白井 ある意味この本は右でも左でもなくという話で、言ってみればそれが平成流なのかもしれないのですが、「僕は右でも左もありません」と、のっぺらぼうに言う層が増えて、非常に不愉快なんですけど。この本は誰よりも右だし、誰よりも左だと。(笑)

――右の右はで…ぐるっと回って左で?。

白井 …と言う意図で書いてありまして、そうすると誰も文句は言わないと言う事であり、一方でこの脱イデオロギー的な世の風潮が、いかにそう言ってる連中こそが悪しき国体の中身になっていると。
 そんな右でも左でもなくと言って賢こぶっている<馬鹿な傍観者>たちというのが、結局亡国を招いていいるのだと言うことを突きつけたと。

――先の大戦で国民死者310万と言う被害一辺倒の感覚で言うものの、一方アジアへの加害、2800万もの虐殺という過去にはひどく誰もが感度が鈍い…。

白井 結局この国の、戦後の最初のボタンの掛け違いは何かとの考察で、戦争責任と言っても幾層ものレベルでの責任論というのがあるはずなのに。
 …根源的な正義不正義の論は置いても、あんな幼稚かつ無謀なことをやって、それはもう国家指導を誤っているわけで、そのことは「一丁目一番地の」責任論としてあるはずなのに、それを問わないまま、で、全ておざなり置き去りで戦後が始まっちゃって。

 ――(他国はさておき)路地裏で被害を受けたと言うそんな印象論だけで曖昧に…。

白井 結局被害300万に対して、3000万もの他国民を犠牲にしてしまったと言う責任論も、結局「一丁目一番地の」責任を問えないような人たちには、そんな上部の責任を問えるわけがない。

――最後ですが、青年達には特にどのようにご自分の著書を読み通して欲しいですか?

白井 高プロ法案が強行採決の流れにあるが、過労死された遺族が傍聴の席で、電通の女性で高橋まつりさんの母上が、あれを見て何と言ったか。
 「もう、若い人たちはこの国から逃げ出して下さい」と。本当にこんな状態なんです。(→記事
 皆の絶望の根源が何なのかをとことん追求して行って欲しいんです。

<注:取材は5月29日のものです>

『国体論 菊と星条旗』 平成最後の”名著”を読む
維新後150年の時間軸で問い直す日本政体の変遷史

『国体論~菊と星条旗』表紙 副題に<天皇とアメリカ、誰も書かなかった日本の深層>と飾られる同書は政治思想史ジャンルでは、まさに平成最後の名著とまで激賞の評があるほどだ。各方面での圧倒的注目の中、発売後早くも第2刷増刷で10万部に達する勢いでリードする。
 わが国戦後の象徴天皇制の時代下、死語であった筈の「国体」との言葉がなぜ使われざるを得なかったか?、気鋭の論客の筆致は闊達だ。
 1945年8月大日本帝国は「国体護持」のみ(アジア平和も贖罪でもなく)を唯一の条件として敗戦を受け入れた。崩壊した筈の天皇制と言うピラミッドの頂きにアメリカ(及び米軍)を鎮座させたわが国戦後歴史の変遷と内実が明快な筆致で明かされる。氏の「永続敗戦論」に続く衝撃の著の登場である。

白井聡(しらいさとし)■1977年東京都生まれ。政治学者。早稲田大学政治経済学部政治科卒業、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位習得博士(社会学)。現在、京都精華大学人文学部専任講師。著書の「永続敗戦論」(太田出版)では、第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞、第4回いける本大賞などを連続受賞し、気鋭の政治論を各媒体で発言している。

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メディア掲載レビューほか(Amazon書店書籍紹介欄より)

アメリカが「天皇」になり替わってしまった今の日本

「国体」などという、死語同然になっていた言葉をタイトルに冠した新書が今、大きな注目を浴びている。政治学者・白井聡さんの新刊『国体論―菊と星条旗』だ。「国体」といえば、万世一系の皇統。しかし、敗戦を契機に日本の「国体」の中にアメリカが滑り込み、今やアメリカが「天皇」になり替わってしまっている。そんな衝撃的な仮説を、明治以降150年の歴史を検証しながら、『国体論』はじっくり展開していく。

「アメリカが『天皇』になった帰結だけを手短に示せば、安倍首相がトランプ大統領に懸命に媚びを売る一方で、天皇の退位の意向を蔑ろにする。あるいは右翼が、街頭デモで日の丸とともに星条旗を振り回す。ある種の人々にとっての精神的な権威が、“菊”ではなく“星条旗”となっていることが、誰の目にもとまるようになってきました」

前著『永続敗戦論』では、日本の「自発的」な対米従属を俎上に載せ、従属がもたらす社会の腐食作用を暴き出した。

「アメリカにNOを言えない国家は数多あるけれど、日本の従属ぶりは異常です。“思いやり予算”“トモダチ作戦”などの情緒的な用語に象徴されるような“日本を愛してくれるアメリカ”という幻想に溺れたまま、支配されていることを否認する。この“支配の否認”という日本独特の歪みが、どこから来ているかを考えたのが『国体論』です。結果、戦前の“国体”が日本人にもたらした心理構造にいきつきました。天皇と臣民の関係を親密な“家族”にたとえ、“家族の中に支配はない”とばかりに、支配の事実を否認させたのが戦前の“国体”。しかし、支配を否認している限り、人々は自由への希求を持ち得ず、知恵を働かすことができません。“国体”は、人々を愚鈍にするシステムなのです」

平成時代以降の日本の衰退は、こうした「国体」の欠陥に起因するという。『国体論』では、明治維新以降、「国体」について考え抜き闘ってきた人々の思想と行動が、通史として描かれているが、本書の冒頭と最後に登場するのが今上天皇だ。

「あの“お言葉”は、我々にこの国の在り方を真剣に考えてほしいという呼びかけだと、私は受け止めました。“失われた30年”によって国民の統合は壊され、いまや国家の統治も破綻しています。“国体”の欠陥を考え、知恵を取り戻すことが、長いトンネルを抜け出すために、必要なのです」

評者:「週刊文春」編集部

(週刊文春 2018年05月17日号掲載)

対米従属の精神構造

4月の日米首脳会談から帰った安倍首相は、表情がさえなかった。モリカケ&セクハラ問題もあるが、会談でなにひとつ成果がなかったからだろう。鉄鋼・アルミ製品の輸入制限は適用除外にならず、北朝鮮問題でも蚊帳の外。「ネクタイの柄をそろえ、いっしょにゴルフまでしたのに。こんなにアメリカ様のことを想っているのだから、悪いようにはされないだろうと信じていたのに……」という心の声が聞こえてくるよう。

白井聡の『国体論 菊と星条旗』は、この安倍首相のような対米従属的精神構造がいかにして形成されたのかを解き明かす本である。

国体。もちろん国民体育大会のことではない。国家体制、あるいは、天皇を頂点とした国家という理念である。そんなものは敗戦とともに消滅したのでは?なんて思ったら大間違い。いまもしっかり生きていて、日本人を縛っているのだと白井はいう。

かつて頂点にいたのは天皇だったが、戦後はそのポジションにアメリカが就いた、と白井はいう。明治維新から敗戦までの天皇と国民の関係。敗戦から現在までのアメリカと日本の関係。両者がそっくりであることを、歴史を追って論証していく過程がスリリングだ。

安保条約や地位協定などは政治的かつ戦略的に選択されたというよりも、国体というフィクションを維持するためにある。戦前の天皇と同じように、「慈悲深く保護してくださるアメリカ様」というイメージが日本人の心に染みついているのだ。誰かに庇護されなければ不安でたまらない。対米従属とは奴隷根性の別名である。

評者:永江朗

(週刊朝日 掲載)

【各界の識者が絶賛!】
■水野和夫氏(経済学者・法政大学教授)
『永続敗戦論』を凌駕する、緻密な分析、大胆な結論。平成最後の名著。

■内田樹氏(思想家・神戸女学院大学名誉教授)
菊と星条旗の嵌入という絶望から、希望を生みだす知性に感嘆。爽快な論考!

■島薗進氏(宗教学者・東京大学名誉教授)
鋭利な分析軸で切り拓かれた「国体論」の新地平! 対米従属からこそ見える近代日本の深層がここに。

■保阪正康氏(ノンフィクション作家)
「戦後の国体」という、斬新な視点に唸った。現代の危機の本質を明確にする、優れた一冊。

【おもな内容】
自発的な対米従属を、戦後七〇年あまり続ける、不思議の国・日本。
この呪縛の謎を解くカギは、「国体」にあった! 
「戦前の国体=天皇」から「戦後の国体=アメリカ」へ。
気鋭の政治学者が、この国の深層を切り裂き、未来への扉を開く!

●明治維新から敗戦。敗戦から現代へ。
「国体」を知ると、この150年の歴史が全く違って見えてくる!
・なぜ、冷戦の終焉後に、対米従属の度合いを日本は深めてしまったのか。
・アメリカが、現代日本の「国体」に。その「まさか」の歴史的経緯とは?
・万世一系の天皇とその赤子(国民)で構成された「永遠の家族」=「戦前の国体」。
・明治維新の時点から、「国体」が抱えていた矛盾とは何か。
・「天皇崇敬」と「アメリカ崇拝」の相似性。
・支配されている現実すら、人々が否認してしまう「国体」の本質とは?

●歴史は二度、繰り返す。
・「国体」が、日本人の主体性をいつも骨抜きにしてしまう理由。
・日本経済の長期停滞、日本外交の失敗の連続。戦前の失敗に通じる、本質的な原因とは?
・「戦後の国体」から目をそらすと生じる、二度目の日本の悲劇。

【目次】
 序――なぜいま、「国体」なのか
年 表 反復する「国体」の歴史
第1章 「お言葉」は何を語ったのか
第2章 国体は二度死ぬ
第3章 近代国家の建設と国体の誕生(戦前レジーム:形成期)
第4章 菊と星条旗の結合――「戦後の国体」の起源(戦後レジーム:形成期1)
第5章 国体護持の政治神学(戦後レジーム:形成期2)
第6章 「理想の時代」とその蹉跌(戦後レジーム:形成期3)
第7章 国体の不可視化から崩壊へ(戦前レジーム:相対的安定期~崩壊期)
第8章 「日本のアメリカ」――「戦後の国体」の終着点(戦後レジーム:相対的安定期~崩壊期)
終 章 国体の幻想とその力

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