世界のプロテストソング系譜(1)ウディ・ガスリー

この機械は、ファシストを殺す ― 1本のギターに魂を込めて
社会の巨悪と闘う抵抗の歌がある

ウッディ・ガスリー この機械はファシストを殺す
世界のプロテストソングアーティストの系譜(1)ウディ・ガスリー

 2016年シンガーソング界から初のノーベル文学賞に輝いたボブ・ディラン。だがその彼の曲に折り込まれた痛烈な権力風刺と社会への眼差しの深さは、一人の偉大な抵抗ソングの先人なしには成立しなかった。彼がその師と仰ぐウディ・ガスリーこそ、米国20世紀初頭の社会悪を糾弾し、大衆的怒りを平易な曲によって広めた歴史的音楽家の一人だ。

W・ガスリーは<米国の全て>を歌った

 ウディ・ガスリーは生涯の社会主義者かつ労働組合活動家であり、労働階級向け新聞に常設コラムを持つ優れた執筆家でもあった。
 1912年オクラホマ州オケマーに生まれ、14歳の時母親が貧困の中で死去。一家は離散し17歳の彼は全米中を日雇い労務者として放浪。19歳テキサスで彼は最初の妻Mジェニングスと出会い3人の子を持つ。しかし彼は、西南部に移住するオクラホマ州人のオーキー(季節労働者)達に従い、テキサスに家族を残し旅立つ。

 この時期に見た米国を覆う貧困(スタインベックの『怒りの葡萄』に見られる)、労働者階級が直面する状況に歌の想の多くを得た。
 1930年代中頃に、商業ベースのカントリーと伝統的なフォークミュージックの放送演者としてロサンゼルス中心に名声を得て、ここで今に残るプロテストソングを書き、演奏し始めた。
 1937年まで、反体制ソングなどでラジオの人気歌手となり、1940年にかけてニューヨークに移り、左翼とフォークミュージック界に受け入れられた。
 この頃、自叙伝「Bound for Glory」(邦題「ギターをとって弦をはれ」)を書き始め、1943年に完成し出版された。
 1940年、彼の最も有名な歌「This land is your land」(邦題「我が祖国」)を書いた。これは彼の放浪中の経験、また時の体制に媚びる宗教歌に対する反発などに触発されたもので、ガスリーは最後の歌詞で階級の不平等を敢然と主張し、反資本主義観を全面に出した。<下記別項>

 ガスリーは、親しいオルマナック・シンガーズらと反戦の歌を書き歌ったが、彼らは後に共産主義的な周辺人物とともに反ファシスト運動に参加。ノーパサラン(奴ら=ファシストどもを通すな)の抵抗歌は世界に広まった。この時彼はギターに有名な文句「この機械はファシストを殺す」と書いた。(写真上)
 同時に、時事関連の歌も書いた。1948年のカリフォルニアからメキシコに追放されるメキシコ人農場労働者がいた。彼らを運ぶ飛行機の墜落事故の悲劇から歌詞を作りこの歌はそれ以来P・シーガー、ディラン、ザ・バードなど有名奏者によってカバーされた。移民の出稼ぎ労働者の闘争に共鳴し「実りの牧場」も書かれた。

B・ディラン音楽の師として

ボブ・ディラン

ボブ・ディランが師と仰ぐ

 1940年代後半にはガスリーの健康は悪化しはじめた。ニューヨークに戻った彼はアルコール使用障害と統合失調症を含む種々の病気と誤診の繰り返しでの入退院を繰り返し、1967年10月同市の精神病院で亡くなった。
 ディランは、ウディ・ガスリーの最後の年に彼を訪問して彼を「私の最後の英雄」だと描写した。ディランは彼をリスペクトした「ウディ・ガスリーについての最後の考え」を書き、最初のアルバム(1962)に「ウディに捧げる歌」を入れた。

Bound for Glory (1976)

アカデミー賞2部門獲得、ガスリーの伝記映画。Hアシュビー監督による1976年米国映画。ガスリーに音楽を与え奪った、荒廃した米国と言う風土を描いた秀作だ。邦題:ウディ・ガスリー/わが心のふるさと


This land is your land
 <我が祖国>by Woodie Guthrie


This land is your land, this land is my land
From California to the New York Island,
From the Redwood Forest, to the Gulf stream
waters, This land was made for you and me.
#この国は君のもの、僕のもの カリフォルニアから
 ニューヨーク、赤いセコイアの森にメキシコ湾流の海
 まで 君のもの、僕のもの     
       ~略~
Was a high wall there that tried to stop me
A sign was painted said: Private Property,
But on the back side it didn’t say nothing
This land was made for you and me.
#高い壁に阻まれ先には行けぬ…「私有地」って
 看板だけど 裏には何んも書かれてなんか無い
 この国って、君のもの、僕のもの

In the squares of the city, In the shadow of
a steeple;By the relief office, I’d seen my people.
As they stood there hungry, I stood there asking,
Is this land made for you and me?
#街角の広場 教会の片隅 救貧施設で多くの人を
 見た 腹をすかせ立つだけの人を 答えてくれ!
 この国って、君のもの、僕のもの?  【訳・関西M】


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